川崎区・幸区版【6月13日(金)号】
インタビューする橋口さん(左)と木村さん

視覚障害者 オーディオブックを体験 「豊かな生活の手段に」

 川崎市視覚障害者情報文化センター(川崎区堤根)が小学館とコラボし「オーディオブック・サロン」を5月31日、同所で開催した。視覚障害当事者に、オーディオブックという「聴く読書」の新たな選択肢を示した。

 視覚障害者や見えにくさを感じている人に、相談や訓練、点字・録音図書の貸し出しや、白杖等のグッズの斡旋・販売を行っている同センター。今回はそうした取り組みの1つとして、小学館アクセシブル・ブックス事業室の木村匡志課長を招き、同サロンを開いた。

プロ声優が録音

 当事者向けには、既にデイジー図書という、録音した音声を再生して聴く本がある。オーディオブックはプロの声優等が録音し、感情を込めて抑揚をつけることが多いのに対し、デイジー図書はボランティアが録音し、なるべく抑揚をつけないといった特徴の違いがある。またデイジー図書は、録音や校正等の作業を含めて、1冊の本を作成するのに1年ほどの時間を要するという。「当事者により豊かな読書体験をしてもらうための一つの手段として、オーディオブックを紹介したいと、木村さんから提案を頂いた」と同センターの橋口講平さんは開催の経緯を語る。

作品数は約20万

 当日は「読みたい本を選ぶ―オーディオブックで広がる読書の可能性」と題して、橋口さんが木村さんにインタビューを実施。木村さんはオーディオブックを「音楽がメインではない音声コンテンツの総称」と定義。小説のほか、講演や落語等も含まれるという。audiobook.jp(オトバンク)やAudible(Amazon)で聴くことができ、前者は1万5千、後者は20万もの作品がある。

 木村さんは、川崎ゆかりの作品として、藤子・F・不二雄の「小説 映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)」や、作者自身が骨形成不全症という障害のある、キム・ウォニョン「だれも私たちに『失格の烙印』を押すことはできない」といった作品を再生。40人ほどの参加者にオーディオブックを体験してもらうと同時に、当事者が聴く上での課題を指摘。図書館で借りる本と違って有料であることや、言葉での説明がない付属の図表等の提供方法などを挙げた。中でも、オーディオブックはインターネット上で作品の再生やダウンロードを行うため、当事者には操作が難しいという。「本来は健常者、障害者を問わず楽しめるはずだが、まだ浸透しているとは言えない。今後は課題解決のために、施設とも連携を深めていきたい」と展望を述べた。

 インタビューを聴講した当事者からは「これまで使ったことがないので、操作に不安はある。でも小説等に興味があるので、挑戦してみたい」といった声が聞かれた。

「全国大会でも1番になりたい」と話す小林さん

川崎工科高小林さん 溶接競技で初の全国へ 無線部は4年連続の出場

 川崎工科高校(中原区)機械研究部の小林佳之依(かのい)さん(2年)が4月26日に行われた「関東甲信越高校生溶接コンクール」で最優秀賞を受賞し、同校から初の全国大会出場を決めた。アマチュア無線部も5月17日の県大会で準優勝し、4年連続で全国の舞台へ駒を進めた。

 厚さ9mmの鉄板2枚を溶接し、つなぎ目の美しさと強度を競う同大会。関東甲信越ブロック20校21人の選手が出場する中、ただ一人一つの減点もない200点満点を獲得した。小林さんの持ち味は、溶接を行うときの独自のスタイル。バナーの強力な炎を利用するため一般的には一定の距離を維持するが、小林さんは約10cmまで顔を近づけて作業にあたる。ときにはゴーグルが熱で溶けることもあるが、「熱さも感じないほど集中する」と話し、これにより均一化されたきれいな外観が出来上がるという。

 競技においてはメンタル面も重要なポイントと捉え、仕上がりのむらをなくすために、現在は週5日間、1日約3時間を練習に費やしている。

 8月の全日本選抜溶接技術大会、11月の高校生ものづくりコンテスト全国大会に向け、小林さんは「もう一度、満点を出して優勝したい」と意気込む。機械エンジニアコースのクラス担任でもある顧問の多田佑弥教諭は「ここ一番の精神力の高さは誰にも負けないものを持っている。きっと全国でもやってくれるはず」と背中を押す。

3人で力合わせ

 アマチュア無線部は県内7校30人が出場した県大会で、部長の弓削優我(ゆげゆうが)さん(3年)が2位になり、7月に新潟県で開催される「全国高等学校ARDF競技大会」に芳賀樹さん(3年)、田沼陸さん(1年)と3人で力を合わせて学校対抗戦に臨む。

 ARDF競技は、地図と受信機を使って隠された発信機を探す時間を競い、「無線版の宝探し」と呼ばれている。制限時間内に、隠された5つの無線機をいかに早く見つけることができるかで順位が決まる。県大会2位の弓削さんは、優勝者とわずか1分の差だった。

 4年連続出場となる全国大会に向け、芳賀さんは「優勝する気持ちで挑戦したい」と熱く語り、田沼さんは「早く発信機を見つけられるように頑張る」と気持ちを奮い立たせる。弓削さんは「まだ全国大会で達成したことのない入賞(8位以内)を目指し、部の歴史を作りたい」と力を込めた。現在は夏の暑さに負けないための体力面の強化を課題にあげ、各自が筋トレにも力を入れる。

 顧問の槇岡瞭介教諭は「センスのある弓削をはじめ、メンバーがそろった。大会までに技術を磨き、全国でも活躍してほしい」と期待を寄せた。

ソムリエの競技会で優勝し、6月にフランスで開催されるイベントに参加する 三竹 桃果さん 多摩区出身 25歳

武器磨き、挑戦重ねる

 ○…ホテルで働く上での武器を身に付けようと、ソムリエの資格を取得。合格からわずか1年、国内の優秀な人材を見出す競技会で優勝をつかんだ。6月にフランスで行われる各国の優勝者が集うイベントへの参加権獲得に、「とても光栄。自分にとってプラスになる」と目を輝かせる。「もっと勉強しないとと、自分自身を追い込めていることもこの挑戦で得たことの一つ」と凛とした表情で語る。

 ○…ナシや野菜を育てる農家に生まれる。現在はホテル虎ノ門ヒルズで、専属ソムリエとして、多くの客をもてなす。接客業に就いたきっかけは、地元・多摩区内のカフェやレストランでのアルバイト経験。フレンドリーな雰囲気の中、人と会話する楽しさを学ぶ一方、より高いレベルでのサービス提供に努めたいという気持ちが芽生え、ホテル内レストランへの就職を叶えた。

 ○…大学ではアカペラサークルに所属し、仲間たちと音を紡いだ。そんな日常を襲ったのがコロナ。思うように練習ができず仲間も減っていく日々で、一筋の光となったのが人気アカペラ番組への出場だ。女声6人チームのベース担当として、大舞台に立った。「大学生の過ごし方は人それぞれ。皆同じ熱量だったからこそ、同じ時間を共有しあえた」と青春の日々を振り返る。

 ○…海外での勤務や国際的な資格の取得を視野に入れ、時間があれば日々勉強。膨大な知識を必要とするため、インプットを重ねる毎日だ。「農業のような勉強もする。子どもの頃の自分に言っても信じないと思う」といたずらっぽく笑う。今後は趣味のイラストとかけ合わせ、ワインの魅力を新たな形で発信する夢も描く。「妥協はしたくない。今に満足せず上を目指していく」

原口さん(左)と青木さん

ピアノの連弾を興じる 7月2日 カルッツかわさき

 川崎区役所が区内でも気軽に音楽を楽しんでもらうと開催している「かわさき区ビオラコンサート」が7月2日(水)、カルッツかわさきのアクトスタジオで行われる。

 今回は東京音楽大学出身の原口沙矢架さんと青木雄介さんのピアノディオ。ブラームスの「ハンガリー舞曲より」やピアソラの「鮫」などを演奏。

 入場無料、午後0時10分から0時50分(11時30分開場)、先着80人。詳細は同区役所【電話】044・201・3132。

救急救命を学ぶ 川崎南法人会が講習会

 公益財団法人川崎南法人会(鈴木愼二郎会長)が7月8日(火)に「救急救命講習会 救命の連鎖と市民の役割」をカルッツかわさきで開催。

 大切な家族や身近な人を救えるように、いざという時に備え、心肺蘇生法やAEDを用いた除細動などが学べる。

 当日は、防災指導公社の担当官から指導を受け、受講修了後には「普通救命講習修了証」が交付される。

 同法人会の担当者は「熱中症などで人が倒れやすい季節です。正しい知識と技術を身につけましょう」と参加を呼び掛けている。

 午後1時から4時まで。受講料は会員無料、非会員800円。詳細は同法人会【電話】044・276・8731。

トリを務める喜楽亭笑吉さん

夏を感じる落語会 6月29日、えりぬき寄席

 若手社会人落語会が中心となった「第6回えりぬき寄席」が6月29日(日)、東海道かわさき宿交流館(川崎区本町)で開かれる。

 出演者と演目は、有借亭圓さん「代脈」、浪漫亭恋$さん「初天神」、かたばみ亭安芸さん「三方一両損」、摂浩由さん「三味線弾き唄い」。トリを務める喜楽亭笑吉さんは、江戸情緒あふれる夏の古典落語「佃祭」を演じる。笑吉さんは「どうぞお楽しみにしてください」と来場を呼び掛けている。

 開場は午後1時(整理券配布は午後0時30分)、開演は1時30分で、定員は先着順100人。木戸銭無料。

 落語会の詳細、問い合わせは喜楽亭笑吉さん【携帯電話】090・4619・8675。

明長寺住職保管 戦犯受刑者遺書写し展示 市平和館で 6月14日から

 終戦後、日本のBC級戦犯裁判と刑執行が行われたシンガポール・チャンギ刑務所に教誨師として関わった川崎区大師本町の明長寺住職・関口亮共氏(故人)らが保管していた資料を展示する企画展が6月14日(土)から川崎市平和館(中原区)で開催される。

 「戦後80年 チャンギから考える 未来のための過去との付き合い方」と題し、関口氏と大田区照栄院住職・田中日淳氏が遺した受刑者の遺書の写しや遺族からの書簡を展示。現地の人々から見た日本軍占領時代のシンガポールについての概説も行われる。

 7月13日まで。開館時間は午前9時から5時。毎週月曜日と6月17日は休館。入場料は無料。問い合わせは市平和館【電話】044・433・0171。

本紙のインタビューにそれぞれ応える原議長(左)と堀添副議長

川崎市議会 新議長に原典之氏 副議長・堀添氏と「開かれた議会に」

 川崎市議会は「令和7年第2回定例議会」を6月2日に開き、新議長に自民党の原典之氏(中原区・4期)、副議長にみらい川崎の堀添健氏(高津区・5期)を選出した。慣例により、任期は2年。本紙は、原氏、堀添氏にそれぞれ今後の抱負や課題などを聞いた。

次の100年に向けて

 原氏は、議長就任にあたり「市制101年目、第45代の議長ということで、これまで44人しか経験したことがなく、その職責の重さを痛感している。与えられた職責を全うしていきたい」と決意を語る。

 昨年市制100周年を迎えた川崎市。議会としての100周年の振り返りと課題について「日々議会改革に取り組んでいる中、『開かれた議会』として録画や生中継など広く発信している。それを市民にどうキャッチしてもらうか。ラジオやSNSなどを含めて広報面で発信の仕方を変えていきたい」と話す。

 二元代表制を担う立場として力を入れたいことについて「議会の役目の一つに行政のチェックがある。行政の取り組みや職員の不祥事、情報漏洩などチェック機能の役割を果たしていきたい」と強調。今後の議会運営については「2016年に川崎市は『イクボス宣言』を行っている。議会、議長としてもワークライフバランスを大事にしていきたい。『ふれあいなくして街の発展なし』の思いを込め、次の川崎市の100年に向けて、市民に身近な議会、開かれた議会にしていきたい」と抱負を述べた。

積極的な議会活動を

 副議長に就任した堀添氏は「川崎市の意思決定機関である市議会の副議長に就任し、大変光栄であるとともに、改めて職責の重さを痛感し、身の引き締まる思い」と心境を語る。議会の課題について「人口も155万人を超え、都道府県と同等の規模になっており、各行政区も中核市並に成長してきた。行政区ごとに市民の生活環境や課題も異なってきている中、議会としても行政区を単位とした活動を強化していくことの必要性が高まっている」と話す。

 また、「公正・公平な議会運営に努めるとともに、多様な市民の声を踏まえ、熟議を通じて丁寧に合意形成をはかっていくことが重要」とし、「市民の負託に応えるとともに、開かれた場での議論によって議会の透明性を確保するために、議会として積極的に活動することが求められていると思うので、そのようなかじを取っていきたい」と今後の議会運営について意気込みを語った。

 なお、議長選では、有効投票数57のうち、自民の推薦を受けた原氏が49票を獲得し、共産推薦の宗田裕之氏は8票だった。副議長選では、有効投票数60票のうち、みらい推薦の堀添氏が52票を集め、共産推薦の市古次郎氏は8票だった。

イベントのチラシ

多文化コミュニティひろば 外国ルーツの子を考える 6月21日、川崎市役所南庁舎

 外国につながる子の課題について学習支援者や行政担当者と共に考える「多文化共生・教育フォーラム」が6月21日(土)に川崎市役所南庁舎で開催される。

 外国籍を親に持つ子どもの課題をめぐっては、在留資格によって不安な場面に直面するケースなどがある。

 フォーラムでは、川崎市国際交流協会学習支援アドバイザーの中村ノーマンさんと川崎市教育委員会の根田もゆるさんから、多文化共生の社会推進や教育委員会の取り組みを報告。フォーラム終了後には、参加者同士でグループディスカッションも行われる。

 参加対象は外国人児童の保護者、市内で学習支援する人、外国につながる子どもへ支援したい人。このフォーラムは、川崎区が主催する「多文化コミュニティひろば」の第2回目として開かれ、主催者は「外国につながる子どもの課題を共に考えましょう」と募集を呼び掛けている。

 入場無料、午後2時から4時30分まで(開場1時50分)、定員30人(要申込み)、詳細は二次元コードまたは多文化コミュニティひろば【電話】044・201・3267。

開催告知のチラシ

6月21日桜本で 東大名誉教授が講演 歴史の記憶テーマに

 市民有志らでつくる「多文化共生をめざす川崎歴史ミュージアム設立委員会」(宋富子代表)は6月21日(土)、在日大韓基督教会川崎教会(川崎区桜本)で講演会を開催する。午後3時から。参加無料。

 同委員会は、おおひん地区(川崎区)に多文化共生の歴史を伝えるミュージアムの建設を目指し、2023年の設立準備会を経て発足し活動する。

 開催当日は東京大学名誉教授の高橋哲哉氏が登壇。「歴史の記憶と歴史ミージアムの役割〜差別の克服をめざして〜」と題して講演する。高橋氏は哲学、現代思想が専門で歴史認識問題に詳しい。主な著書に『記憶のエチカ─戦争・哲学・アウシュヴィッツ』『戦後責任論』『歴史/修正主義』『コンパッション(共感共苦)は可能か?―歴史認識と教科書問題を考える』などがある。

 講演前の午後2時からは同委員会の総会を実施。趣旨の賛同者であれば誰でも参加して傍聴できる。問い合わせはメール(kawasakirekishimuseum@gmail.com)で受け付けている。

工場内で行われるワークショップ=昨年・提供

川崎総合科学高生 文化財の工場で演劇 6月21日 ワークショップも

 国登録有形文化財の北條鉄工(川崎区鋼管通)空間で川崎総合科学高校によるワークショップが

6月21日(土)に開かれる。

「川崎こどもステージ」と銘打ち、オリジナル劇やダンスパフォーマンス、合唱を披露。木琴作りも行われる。

 午後1時30分からワークショップ、2時30分からステージ開演となる。参加費無料の完全事前予約制。オンラインフォームから氏名、住所、連絡先を明記し、申し込む。

 問い合わせは実⾏委員会事務局【電話】044・344・3640(渡辺治建築都市設計事務所内)

メール:kawasaki.kodomostage@gmail.com

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鈴木副店長(左)と山田署長

幸警察署 店員が特殊詐欺阻止 独自施策で4回目

 幸警察署(幸区南幸町)は5月21日、特殊詐欺被害を阻止したとして、セブン─イレブン夢見ヶ崎店の鈴木英子副店長に感謝状を授与した。同店の被害阻止はこれで4回目。

 鈴木さんは4月24日、「友達にプレゼントする」と言って、8万円分のアップルカードを購入しに来店した70歳代の女性に対応。金額が高額のため不審に思い、用途を質問すると、女性は警報音が鳴ったパソコンの修理費として、同商品を購入するように指示されたと答えた。詐欺の可能性を疑い、警察に通報したという。

 鈴木さんは「店独自の施策として、一定年齢以上の高齢者が金券カードを購入する際には、全員に声掛けをしている」と話した。山田高志署長は「熱心な取り組みに頭が下がる思い」と感謝の意を示した。

6〜8月号の表紙

文化芸術情報を一冊に 県内イベントを紹介

 神奈川県は、県内の魅力的な文化芸術イベント情報をまとめた冊子、「イベントカレンダー」の6月〜8月号をこのほど発行した。

 文化芸術の魅力で人を引き付け、地域のにぎわいをつくり出すマグネット・カルチャー(マグカル)の取組みを推進している県が発行する冊子で、毎号、県内文化施設の公演や展示情報などがカレンダー形式で紹介されている。今号の特集は鬼太鼓座の和太鼓奏者、木下直人さんのインタビューや、藤沢市内でアートめぐりが楽しめる冊子「ふじさわパブリックアート散歩」を紹介。チケットが当たるプレゼントも実施している。

 冊子は県内各文化施設や一部の商業施設、自治体等で無料で受け取ることができる。

当時の思いを語る相原さん

戦後80年 戦禍の記憶【5】 麻生区白山在住 相原 多恵子さん(90) 自分だけ生き残る不安 縁故疎開も複雑な胸中

 「『ヒュルヒュルヒュル』という焼夷弾の音と『ゴー』という爆弾の音が聞き分けられるくらい、戦争が身近になっていた」 

 国民学校(小学)4年生だった1944年の7月、東京から学童疎開先の静岡県に向かうことになる。出発する日、長いこと食べていなかったおはぎなどが入った弁当を祖母に持たされた。「私は遠足に行くような気分。でも『この子と会えるのが最後になるかもしれない』と家族がお弁当に思いを込めてくれていたことには、その時は気が付かなかった」と振り返る。

 寺で寝泊まりし、村の学校へと通う日々が始まった。教員に帰る日を聞くと「戦争が終わったら」。「帰る日が決まっていれば、その日を待って我慢できる。でも帰れる日は分からなかった」。日が暮れてくると、毎日家族のことを思い出し、涙がこぼれた。「遠足気分で来たことを後悔した」

 学校の帰り道、米軍のB29爆撃機が東京方面へ飛んでいく姿を見た。「家族が爆撃でやられて、死んでしまうのでは。自分一人だけが生き残ったら、どうしよう」。そんな不安が頭から離れず、ひどいストレスにさらされた。

 年が明けた2月頃、思いがけない知らせが届く。家族で新潟県に縁故疎開をすることになったのだ。おばが静岡まで迎えに来てくれた時は、駆け寄って、握った手を離さなかった。「こんなにうれしかったことはない」。だが、同級生らの疎開生活は続く。「友達の前で喜ぶことはしなかった。子ども心に、自粛した」。別れのあいさつもなく、寺を去った。

 東京の自宅に一旦戻り、しばらくして、わずかな荷物を持ち、新潟県へ。「見知らぬ地に向かうものの、辛かった学童疎開とは違い、家族と一緒であることの幸せを感じた」。汽車の中で、そう思ったことを記憶している。

 新潟県の農村では、空襲警報は鳴らなかった。8月15日、大人たちと一緒にラジオから流れる天皇陛下の声を聞いた。「最後は竹やりで敵兵と戦う。そう先生から教えられていた。心配で暗い気持ちだったが、戦争が終わり、ほっとした」。灯りが漏れないように電球を覆っていた布。その日の晩から外し、部屋が明るくなった。

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今年で戦後80年。体験者が年々減少し、戦争の記憶が風化しつつある。当事者の記憶を後世に残すとともに平和の意義について考える。不定期で連載。

JAセレサと川崎信金 新人ら協力して田植え 国際協同組合年にあわせ

 国連の定める「国際協同組合年」を記念し、JAセレサ川崎と川崎信用金庫は6月9日、新人職員らによる合同田植えイベントを麻生区黒川地区で実施した。

 今年は国連がSDGsに貢献する協同組合の振興を目的に定めた「国際協同組合年」にあたる。これを機に、JAセレサ川崎と川崎信用金庫は連携強化を目的に、双方の幹部職員や新人職員ら計約100人が協力し、JA青壮年部柿生支部が委託管理する水田で、神奈川県推奨米「はるみ」の田植えを実施した。

 新人職員らは靴下を着用のうえ水田に入り、一列に並んで苗を1本1本、手植えしていった。水田に入るのが初めての職員が多く、泥の感触に歓声を上げたり、足をとられて転んだりしながら、JA側のサポートを得ながら丁寧に植えていった。

 市内在住で田植えは初体験という川崎信用金庫の女性新人職員(22)は、「田んぼが思ったより深くて、何度か転びそうになった。自分が植えたコメを食べてみたい」と満面の笑みだった。

 JAの梶稔組合長や川崎信用金庫の堤和也理事長も、列の真ん中で若者と共に田植えを楽しんだ。堤理事長とって小学校以来の田植え体験だったといい、「とっても楽しかった」とにっこり。「しかしコメ作りの大変さはこの後。若い職員がコメ作りの大変さを知る貴重な体験をさせてもらえた」と語り、梶組合長も、「米作りは大変手間がかかるもの。そのことを学んでいただけたと思う」と満足げだった。

左から落合さん、早田さん、濱田さん

大和市の早田茂さん 「国際化学五輪」に出場 KISTEC職員が支援

 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)の溝の口支所(高津区)にある光触媒ミュージアムに刺激を受けた高校生が、7月にドバイで開催される「国際化学オリンピック」に日本代表として出場する。高校生の背中を押して学びを支えたのは、KISTECの研究員たちだった。

 「国際化学オリンピック」に出場するのは、大和市在住で三田国際科学学園高等学校(東京都世田谷区)の高校3年生、早田茂さん(17)だ。全国の高校生が化学の実力を競う「化学グランプリ」で優秀な成績を収め、「オリンピック」の日本代表の一人として選抜された。

 早田さんが「オリンピック」に挑戦しようと決意したのは、2023年12月のことだった。ある日の放課後、「リンモリブデン酸アンモニウム」について調べるため、東急溝の口駅で途中下車し、かながわサイエンスパーク(KSP、高津区)内にある県立川崎図書館を訪れた。この時、KSP内の「光触媒ミュージアム」(藤嶋昭館長)にも立ち寄ったが休館日だった。「光触媒の『ミュージアム』に、何があるんだろう?」。化学の知識が豊富で探究心旺盛な早田さんは、日を改めることにした。

 早田さんはミュージアムを再訪すると展示を丹念に見ながら、空気清浄機や生活用品など、光触媒が幅広い用途に製品化されていることに驚き、そばにいたスタッフを質問攻めに。その様子を見たKISTEC研究員、濱田健吾さんが、早田さんに「挑戦してみては」と手渡したのが、「オリンピック」の選考を兼ねる「化学グランプリ」の要項だった。

 その帰り道には心を決めたという。「自分の実力を試したいと思った」

方向性を軌道修正

 早田さんは昨夏の「化学グランプリ」に挑戦。日ごろの学習の成果を存分に発揮し、「オリンピック」の代表選抜に進んだ。しかし選抜試験の過去の問題は非公開のため、勉強方法に迷ったという。そこで濱田さんにメールで相談を寄せ、濱田さんは上司の落合剛さんと情報を集め、「応用力が問われるはず。暗記ではなく応用を意識して」とアドバイスした。以後もたびたび二人から助言を得たといい、早田さんは「勉強の方向性を軌道修正してくれた」と感謝を述べる。

 今年3月、早田さんがKISTECを訪ねてきた。満面の笑みで「オリンピック」代表に決まったことを報告。二人も大いに喜び、祝福した。

 将来は、「光触媒」を発見したミュージアムの藤嶋館長のように、「自分の研究が新しい分野を生み出せるような研究者になりたい」という早田さん。まずは決戦の地・ドバイで、金メダル獲得を目指している。

川崎市役所

4月から警報発令中 水ぼうそうが市内で流行 市「手洗いなど徹底を」

 川崎市内で水痘(水ぼうそう)が流行している。患者の発生状況が警報基準値を超えたため、市は4月30日に水痘に関する「流行発生警報」を発令したが、以後も患者数は「警報レベル」で推移している。厚生労働省が2018年に水痘の警報基準を引き下げて以後、警報発令は初めて。

 市は週に一度、複数の小児科定点医療機関から感染症の発生状況の報告を受け、週ごとの患者数の平均値から流行状況を評価している。市内の水痘の患者数は今年3月から増え始め、4月下旬に急増。第17週(4月21日〜4月27日)にはこの平均値が「3・67人」となり、警報基準値の「2・0人」を超えたことから、「流行発生警報」を発令していた。

 5月半ばに「2・0人」を下回ったものの再び患者数が増え、直近の第22週(5月26日〜6月1日)も「2・08人」と、例年より高いレベルで推移している。

 水痘はウイルスによる感染症で、空気、飛まつ、接触などで感染する。定期予防接種の対象疾病でもあり、生後12カ月から36カ月までに2回の予防接種を受ける必要がある。市の担当者は「手洗いやうがいを徹底し、症状が出たら医療機関にかかってほしい」と注意を呼びかけている。

特典のオリジナルトートバッグ

GO!GO!!フロンターレ

中元に特別なギフトを

 サッカーJ1・川崎フロンターレは、オフィシャルパートナーのサントリーと、オリジナルの中元向けキャンペーンを実施している。

 「ザ・プレミアム・モルツ」と「ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉香るエール」のギフトセットが登場。限定30セットには、同クラブのロゴなどが入ったオリジナルトートバッグが付いてくる嬉しい特典も。

 また、商品はオリジナルの包装紙でラッピング。お酒好きのファンには、たまらない一品だ。自宅で試合観戦をする際のお供にしよう。

 ほかにも、夏のギフトにぴったりなビールやウイスキーを多数用意。今春に限定発売された「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム リミテッドエディション#18」など、特別な一杯が入ったセットも選択することができる。

 同クラブ担当者は「日頃の感謝を込めて、大切な人への贈り物にぜひご検討ください」と呼び掛けている。詳細・購入は同クラブウェブサイトから販売サイトにアクセス。送料無料。

画像はいずれも川崎フロンターレ

開催告知のポスター

川崎競輪場 魅力紹介コーナー 九ちゃん通信

6月15日ワグワンカワサキ

 ストリートカルチャーの祭典「ワグワンカワサキ」が6月15日(日)、川崎競輪場(川崎区富士見)で開催される。「音楽や若者文化、食、競輪を楽しんでもらえれば」と主催者は来場を呼び掛ける。

 今年で3回目となる同イベント。西ステージでは、音楽イベントを実施し、さまざまなアーティストが出演。DJ演奏やレゲエライブ、ダンスを繰り広げる。

 KKPにはスケボーコーナーを開設。無料でスケボー体験が楽しめる。西広場には飲食ブースやキッチンカーが並び、多種多様なグルメが味わえる。この日はまた、競輪初心者を対象にした車券購入のためのイロハを教えるコーナーも設置され、競輪の魅力を知る機会だ。

 入場無料。開催時間は午前11時から午後8時まで。詳細は「川崎競輪」(検索)もしくはX(エックス)で「#タグワグワンカワサキ」から確認できる。