川崎市視覚障害者情報文化センター(川崎区堤根)が小学館とコラボし「オーディオブック・サロン」を5月31日、同所で開催した。視覚障害当事者に、オーディオブックという「聴く読書」の新たな選択肢を示した。
視覚障害者や見えにくさを感じている人に、相談や訓練、点字・録音図書の貸し出しや、白杖等のグッズの斡旋・販売を行っている同センター。今回はそうした取り組みの1つとして、小学館アクセシブル・ブックス事業室の木村匡志課長を招き、同サロンを開いた。
プロ声優が録音
当事者向けには、既にデイジー図書という、録音した音声を再生して聴く本がある。オーディオブックはプロの声優等が録音し、感情を込めて抑揚をつけることが多いのに対し、デイジー図書はボランティアが録音し、なるべく抑揚をつけないといった特徴の違いがある。またデイジー図書は、録音や校正等の作業を含めて、1冊の本を作成するのに1年ほどの時間を要するという。「当事者により豊かな読書体験をしてもらうための一つの手段として、オーディオブックを紹介したいと、木村さんから提案を頂いた」と同センターの橋口講平さんは開催の経緯を語る。
作品数は約20万
当日は「読みたい本を選ぶ―オーディオブックで広がる読書の可能性」と題して、橋口さんが木村さんにインタビューを実施。木村さんはオーディオブックを「音楽がメインではない音声コンテンツの総称」と定義。小説のほか、講演や落語等も含まれるという。audiobook.jp(オトバンク)やAudible(Amazon)で聴くことができ、前者は1万5千、後者は20万もの作品がある。
木村さんは、川崎ゆかりの作品として、藤子・F・不二雄の「小説 映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)」や、作者自身が骨形成不全症という障害のある、キム・ウォニョン「だれも私たちに『失格の烙印』を押すことはできない」といった作品を再生。40人ほどの参加者にオーディオブックを体験してもらうと同時に、当事者が聴く上での課題を指摘。図書館で借りる本と違って有料であることや、言葉での説明がない付属の図表等の提供方法などを挙げた。中でも、オーディオブックはインターネット上で作品の再生やダウンロードを行うため、当事者には操作が難しいという。「本来は健常者、障害者を問わず楽しめるはずだが、まだ浸透しているとは言えない。今後は課題解決のために、施設とも連携を深めていきたい」と展望を述べた。
インタビューを聴講した当事者からは「これまで使ったことがないので、操作に不安はある。でも小説等に興味があるので、挑戦してみたい」といった声が聞かれた。
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