中原区版【9月19日(金)号】
左上から時計回りに木造・十二神将立像(丑神将)、木造釈迦如来像、木造・十二神将立像(巳神将)、本堂の隣に建つ宝仏殿

常楽寺 24年ぶりに文化財を公開 10月11・12日 本堂、宝仏殿で

 地域の貴重な文化財を多くの人に知ってもらいたい――。通常は非公開としている常楽寺(宮内4の12の14)の文化財が10月11日(土)・12日(日)に特別公開される。春日神社氏子会が主催し、常楽寺や宮内自治会、市教育委員会、文化財ボランティアが協力。一般に文化財が披露されるのは2001年以来、24年ぶりになる。

 今回特別公開されるのは、一本造・彫眼で、平安時代末期(12世紀ごろ)に制作された「木造・聖観世音菩薩立像」や、寄木造・玉眼で、室町時代(14世紀ごろ)に制作されたと考えられている「木造・釈迦如来坐像」などの文化財。高さ88・6〜99・5cmの「木造・十二神将立像」も、寄木造・玉眼で室町時代(15世紀ごろ)の制作で、十二体そろうのは珍しいという。この十二神将像の胎内には墨書きされた木製銘札が納入されていて、これによって願主や修理の経過など、宮内地区を中心とした庶民の信仰の歴史を知ることができる。

 常楽寺の本堂と並んで建つ宝仏殿には数多くの文化財が所蔵されており、その中の幾つかの仏像については教育委員会から川崎市重要歴史記念物に指定されている。

「地域の財産、知って」

 1968年に解体修理された際、壁や襖に漫画が描かれたことから「まんが寺」として地域の人たちに親しまれている常楽寺。文化財が一般に公開されるのは、24年前に教育委員会が指定文化財等現地特別公開を実施して以来となる。きっかけは春日神社氏子会副会長の島田政則さん(63)が発した「このままでは忘れられてしまうのではないか」という一言だ。島田さんは「昔から暮らす人でも子どものころに見た記憶があるという程度。新しく宮内に転居してきた人たちはほとんど知らない。地元に文化財があることを知ってほしい」と思いを込める。常楽寺の住職に相談すると、特別公開を快く了承してくれた。

 特別公開の実現に向けて話はとんとん拍子に進み、開催への実務的な部分は教育委員会に依頼。この貴重な機会に多くの人に見てもらいたいと考え、公開日は敷地が隣接する春日神社の秋季例大祭に合わせた。

 午前10時から午後3時(最終入場は2時45分まで)。申し込み不要で見学無料。本堂を見学する際には靴下を着用する必要がある。問い合わせは生涯学習部文化財課【電話】044・200・3305(平日午前8時30分から午後5時15分)。
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関東労災病院 手術室増へクラファン 地域医療支援へ呼び掛け

 関東労災病院(木月住吉町、根本繁院長)は手術室増設のため、クラウドファンディング(CF)を通じて資金を調達している。期間は11月7日(金)午後11時まで。手術希望の患者の受け入れが十分にできていない状況にあり、救急患者の受け入れが困難となるケースも発生しているという同院。東川晶郎副院長は「医療提供体制の強化、未来の地域医療を支えるためにもご協力をお願いします」と呼び掛けている。

 同院は、市内中部地区で高度急性期を担い、二次救急医療をはじめ、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、災害医療拠点病院として地域医療に取り組む。

 今回、CFによって計画しているのは、手術支援ロボットの導入にも対応した設計の手術室1室の増設。その増設費用、手数料として第1目標に掲げたのは1200万円。9月15日時点で達成したものの、ネクストゴールとして2500万円の達成を目指し、現在も支援を呼び掛けている。寄付者へのリターンには、寄付額に応じた感謝のメッセージや、病院のウェブサイトや、院内への氏名掲載が用意されている。

環境整備が急務

 同院は現在、年間7000件を超える手術を10室の手術室で実施しているものの、早期手術を希望する患者の受け入れが十分にできていない現状だという。特に、救急患者の受け入れが困難となるケースも発生しており、医療提供体制の維持が喫緊の課題に挙がっている。

 加えて、高齢化の進展により、がん、脳梗塞、骨折など、高齢者が罹(り)患(かん)しやすい疾患の手術ニーズが今後さらに増加することが見込まれており、現状の設備では対応が限界に達しているという。

 そうした背景から、手術室の増設が急務となっていた。一方で、昨今の建設資材や人件費の高騰が資金調達の大きな障害となり、自院の資金だけでは増設工事の実施が困難な状況に。そこで同院は、広く社会に支援を求めるため、CFの活用を決断。地域からの支援により、この難局を乗り越えることを目指しているという。

「質の高い医療を」

 今回のCFのプロジェクトリーダーを務める東川副院長は「診療報酬が据え置かれている中で、物価高騰の影響もあり、医療機器や設備投資が非常に厳しい状況にある」と同院が置かれている現状を切実に語る。そうした中で、地域中核病院として質の高い医療を提供し続けるために「地域の皆さまからの温かいご支援を募り、より良い医療を提供できる環境を整えたい。ぜひご支援ご協力をお願いします」と呼び掛けている。

 CFの詳細は「関東労災病院 レディーフォー」で検索。

エジプトに赴任し、日本式教育の普及に努める 中村 邦彦さん 麻生区在住 64歳

「寄り道もまた楽しい」

 ○…稗原小の校長を退任後、昨年9月から「エジプト日本式学校スーパーバイザー」として、第二の人生を歩んでいる。7月に一時帰国し、菅生中学校区地域教育会議で近況報告を行った。エジプトは、2017年から日本式教育を導入。来期は、15人の退職校長が、日本の学校運営と学級経営方法などを伝えていくという。「何があっても『アラーの思し召し』で済んでしまうアバウトな社会。純粋で自己主張が激しい人も多い」と現地の印象を語る。

 ○…「西生田小の仲間や恩師とは、今も旅行に行く関係。いいクラスだった」と振り返る。西生田中では陸上部に所属。駅伝チームは市大会で優勝したが、補欠だった自分には後ろめたさがあった。そんな雰囲気を察した顧問から「お前たちがいたから優勝できたんだぞ」と電話が掛かってきて心が震えた。教員を目指したきっかけは、恩師の存在が大きい。

 ○…「陸上を通じて出会った仲間たちは宝物」と共感してくれる存在の大切さを説く。浪人して青山学院大へ。「青学の陸上部出身っていうと驚かれるけど、当時は予選会敗退ばかりだった」。卒業後、アメリカ大陸を1周する旅に出掛け、人と人は言葉ではなく、心でつながっていることを再認識。実践の場として教員の道を選んだ。人間関係が構築できていれば、不登校も無くなると信じてやまない。

 ○…退職後、すぐに市子ども夢パークの副所長となる予定だったが、期せずして学級担任を経験。そして特別活動研究会の会長としての手腕を買われ、スーパーバイザーに声が掛かった。「寄り道も楽しいもの」と人生訓を語る。趣味はサーフィン。「この夏は7回行ったけど、しばらくはできないね」とエジプトに旅立った。

参加したメンバー一同と、ごみを拾いながら歩く様子

ごみ拾いで防災意識 富士通社員らが協力

 武蔵小杉駅前周辺に捨てられたごみを拾って、街をきれいにしようと、全富士通労働組合連合会(AFK)のメンバーが中心になって9月13日、駅周辺の広場や歩道を歩きながらボランティアの清掃活動を行った。

 参加したのは富士通社員やその家族ら61人。2日前の大雨被害でごみが散乱する中、4つのグループに分かれ、集合場所のホテル精養軒を出発して武蔵小杉駅前こすぎコアパークや隣接する市道、法政通りの歩道などに落ちているごみを1時間ほどかけて拾い集めた。親子3人で参加した女児(7)は「お菓子の袋や葉っぱをたくさん拾った。街がきれいになるのは楽しい」と笑顔で話した。

 同会のメンバーらが武蔵小杉駅周辺で清掃ボランティア活動を行うのは昨年に続いて2回目。実行委員長を務めた井土清貴さん(37)は「ごみを拾いながらどんなものが捨てられているのか知ってほしい。街にごみがあふれると犯罪も増える。自分たちの力で街をきれいにしよう」と参加者に呼び掛けた。清掃後はホテル精養軒に戻り、自然災害に備えるための防災セミナーも実施した。

温暖化について語る中村氏(上)と満員の会場

市民アカデミー 「異常気象」データで解説 中村氏が地球温暖化語る

 市民に学びの場を提供する、かわさき市民アカデミー(馬場康雄学長)が9月13日、SDGs講演会「『沸騰する』地球〜顕在化する地球温暖化と異常気象〜」を開催した。(公財)東京応化科学技術振興財団の助成事業。ここ数年続く夏の猛暑に対し、異常気象分析の第一人者が話すとあって会場となった川崎市生涯学習プラザ(今井南町)の大会議室には144人が詰めかけた。

 1部の講演には東京大学名誉教授で、気象庁異常気象分析検討会会長を務める中村尚氏が登壇。中村氏は最初に温暖化による気象関連災害で、人的・物的損失の甚大化を指摘した。「例えば2019年までの50年間の気象関連災害による世界の犠牲者は200万人を超え、経済損失額は約400兆円になる」と力説。今年の夏の記録破りの猛暑は、過去最早の梅雨明けで6月後半から猛暑日が観測された。7月は記録的な多照となり、8月5日に群馬県で41・8℃と国内記録を更新。40℃以上を観測した延べ地点数が30に及び、過去最多となった。

 猛暑をもたらした要因はチベット高気圧が強く張り出し、日本付近が高気圧に覆われ続けたためと説明した。

 2部では参加者のアンケートを踏まえながら、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部教授の蔵治光一郎氏と対談。「将来のために私たちに何ができるのか」について意見を交わした。

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上映を告知するチラシ

気候活動家たちの挑戦 9月27日 ゆめホールで

 気候活動家たちの挑戦に密着したドキュメンタリー映画『気候戦士』が9月27日(土)、かわさきゆめホール(下沼部1880)で上映される。

 気候変動を止めるために行動を起こした人たちに密着した作品。第一次トランプ政権のときに制作され、地球温暖化や二酸化炭素排出規制に背を向けたトランプ政権への批判が込められている。同ホールシネマ倶楽部の柳沢芳信さんは「この夏の異常な暑さが人間の活動によるものだと改めて振り返り、どうすれば止められるのかを考える機会にしたい」と話す。午前9時から4回上映。入場料一般1000円(当日1500円)、障害者・学生以下500円。申し込みは同ホール【電話】044・433・3003。

厳かな雰囲気の春日神社境内

春日神社 舞台や、みこし渡御も 10月11・12日 奉納演芸

 春日神社(宮内4の12の2)が10月11日(土)、12日(日)に奉納演芸を行う。11日は午後5時、12日は6時30分開演。

 11日は宮内中吹奏楽部や、宮内小和太鼓クラブによる『太鼓ばやし』『夏祭り』の演奏をはじめ、同小4年生有志によるダンスなどが楽しめる。そのほか、同小PTAコーラス部の『心の瞳』などの合唱、パーカッション、ハーモニカ、バンド演奏、ウクレレの弾き語りも。

 12日は宮内自治会らによる地域の昔話『雨乞いの竜』の紙芝居の上演を皮切りに、カラオケ、舞踊など26の演目が披露される。

神酒所を地域巡回

 秋季例大祭神輿渡御は、11日の万燈神輿が午後6時30分に宮内公民館前を出発。1丁目から4丁目までの神酒所を巡回し、9時に春日神社に宮入する。

 12日の本社神輿は午前10時に春日神社を宮出し。ジョリーパスタ裏、みやこ倉庫、第二公民館、市営団地前などを巡回し、午後5時30分に春日神社に宮入する。天候などにより順路や時間は変更になる場合あり。

エンジンカッターで切断訓練を実施

中原消防団 解体ビルで災害想定訓練 新入団員中心に20人参加

 中原消防団(鹿島連団長)は9月7日、解体工事が進む武蔵小杉駅近くの旧日本電気小杉ビルで新入団員や女性団員を中心とした災害想定訓練を実施した。

 同団では、2013年から区内の解体建物を利用した災害時の救出訓練を行っており、今回は2年ぶり。

 当日は、各分団から昨年入団した新入団員や女性団員ら20人が参加。敷地内の駐車場を使って、中原消防署の消防隊、救助隊の指導を受けながら、ホース延長と放水訓練を実施した。また団が使用するポンプ車に積載され、倒壊した建物等の資材などを切断するエンジンカッターを使った鉄パイプの切断訓練などを行った。

 今春に入団し、今回初めて同訓練に参加した住吉分団の黒木竜樹さん(27)は「今回、普段使うことのないガンタイプの機材を使った放水訓練などを経験できた。ほかの分団の団員と一緒に訓練する機会も少ないので、いざ連携を取るときに顔の見える関係が築けて良かった」と訓練を振り返った。鹿島団長は「実際の建物を使った普段なかなかできない貴重な訓練ができた。先日の大雨のこともあるので、いざというときに備えていきたい」と抱負を語った。

自宅のスタジオで練習する大西夫妻

演奏家の大西夫妻 障害受け入れ、情熱届け 10月24日 チャリティコンサート

 障害を抱えながら、演奏活動を続けている夫妻がいる。コントラバス奏者の夫・大西雄二さんと、ピアニストの妻・大西ますみさんだ。地元のエポックなかはら(JR武蔵中原駅直結)で10月24日(金)に開催されるチャリティコンサート(主催・日本オストミー協会川崎市支部/坂本純支部長)への出演が決まり、自宅のスタジオで練習を重ねている。

夫の言葉が光照らす

 チェンバロ奏者として活躍していたますみさんは、2015年に脳出血を発症。右上下肢機能障害と診断され、右手・右足が不自由の身となった。「ピアノが弾けなくなるかと思い、失意のどん底だった」と絶望の淵に立たされる中、雄二さんから左手のピアニスト専用の楽譜があることを聞いた。「第二次世界大戦の頃、左手の音楽の父と呼ばれた著名なピアニストがいて、世の中に左手専用の楽譜が幾つもあるよ」。ますみさんに再び笑顔と意欲が戻った。

日常生活、前向きに

 それから2年後、今度は雄二さんを病魔が襲う。排尿時の違和感が続き、医師に診断されたのは「膀胱がん」。摘出すれば人工膀胱(オストメイト)になることは分かったが、とまどいはなかったという。「医師を信用するだけ」。現在は腹部にストーマ(人工膀胱の排せつ口)を装着した日常生活を送っている。それでも、「もっと大きな障害と向き合っている人もいる」と捉え、気持ちは常に前向きだ。

 生活に不便な面はあるが、得る学びも多いという。その一つが、人とのつながりの輪。障害者が集う場でも、ますみさんは遠慮なく積極的にコミュニケーションをとる。「障害の子をもつ母親に話しかけると喜んで受け応えしてくれて、それがうれしくて。みな強くて逆に私がパワーをもらうことも多いんです」

 障害者となっても演奏家としての情熱が変わることはない。いまも全国各地に出向いては、会場を訪れた人に、感動と幸せを与え続けている。NHKの朝ドラでも話題となった『見上げてごらん夜の星を』をはじめ、幾つかのアンサンブルを今回も届ける予定だ。

昼夜2回、ミニ講座も

 坂本支部長は「オストメイトに関するミニ講座も開催します。ぜひ楽しみながら知識を深めて」と呼び掛けている。

 開演は、昼の部3時、夜の部7時(開場は各30分前)。入場無料。(問)同協会事務局【電話】080・8048・1932

戦中の記憶を静かに語ってくれた小林さん

戦後80年 戦禍の記憶【12】 中原区小杉御殿町在住 小林美年子さん(93) 『海ゆかば』歌い迎えた英霊 近衛兵の従兄も「負ける」

 今もなお聞きたくない歌がある。記憶の奥底にしまい込んだままの歌の名は『海ゆかば』。天皇への忠誠心と死を恐れない覚悟を表した歌詞……。太平洋戦争末期、かっぽう着姿の女性らに交じり、まだ10代前半だった少女がこの歌を歌いながら駅に到着した英霊たちを出迎えた。「母の代わりに行かされたんです。何とも言えない悲しさと、この場にいたくないという嫌な気持ちがあふれ、心の中で激しく葛藤していました」

 横浜市鶴見区で育った。戦争が激しくなると、敵機の襲来を知らせる空襲警報が響くようになり、夜は電気に風呂敷をかぶせて外に光が漏れないようにした。1945年3月10日の東京大空襲は、自宅から東の空が真っ赤に染まるのが見えた。「ここには住み続けられない」と、母や妹と親戚のいる愛甲郡愛川町田代に避難した。

 疎開先では離れにあるあばら屋から厚木の女学校に通い、自給自足の生活を送った。肥桶を担いで畑仕事に精を出し、まき割りやわら草履も自ら編んだ。田んぼで捕れるイナゴは貴重なたんぱく質とカルシウム源。夕暮れには川に行き、アユを釣った。サイズが合わなくなったセーターはほどくときに編み方をノートに書き、人に教わることなく編み返した。「こうしないと着るものがなかった」。女学校の体育の授業ではなぎなたを訓練し、バケツリレーも経験した。周囲はみんな、それが当然のこととして受け入れていた。

 その後、40歳に近い叔父にも召集令状が届いた。「叔父が『こんな歳の者が駆り出されるようでは日本は危ないな』と言ったことをはっきり覚えています」。また、近衛兵だった従兄も『この戦争は負ける』と口にしていた。「常識のある大人は知っていて、無謀な戦争とわかっていたのでしょう」

 終戦は疎開先で迎えた。玉音放送が流れた日のことは忘れない。その親戚宅では、酒やしょうゆの醸造所を営んでおり、海軍の将校らが燃料となるアルコールを求めて連日のように通ってきていた。「海軍の若い将校さんたちは涙を流していましたね」

 『海ゆかば』を聞くと、今でも当時の記憶がよみがえる。「戦争は絶対にいけない。若い人たちが国のために、大切な命を犠牲にすることはあってはならない」 

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今年で戦後80年。体験者が年々減少し、戦争の記憶が風化しつつある。当事者の記憶を後世に残すとともに平和の意義について考える。不定期で連載。

水が溢れる道路=中原区下新城付近

川崎市 記録的大雨、各所で被害 中原区で過去最大131ミリ

 9月11日、首都圏を襲った記録的な大雨。川崎市では局地的に1時間に100ミリを超える雨が降り、各所で道路冠水や浸水被害に見舞われた。

 気象庁は午後1時53分、川崎市に大雨(浸水害)、洪水警報を発表。雨足は徐々に強まり、宮前区では1時間に91・5ミリ、高津区では116・5ミリ、中原区では市内過去最大となる131・5ミリを観測した。数年に一度レベルの短時間の大雨を観測・解析した際に発表され、災害の危険度の高まりを伝える「記録的短時間大雨情報」が2時51分以降繰り返し出され、3時48分、市は危険な場所から全員の避難を促す警戒レベル4の土砂災害警戒情報を発表した。市危機管理本部では災害応急対策活動要因を増強する警戒体制1号動員(浸水被害)、2号動員(土砂災害)を発令、全区で災害対応シフトが取られた。

浸水、道路冠水も

 市の発表では、川崎区鋼管通や中原区小杉町、高津区末長のアンダーパスをはじめ市道8カ所で道路冠水による通行規制を実施。武蔵中原駅や高津区役所などでエレベーターが浸水により停止したほか、宮前区の民地ではフェンスの倒壊も発生した。このほか主に川崎区、中原区、高津区、宮前区で民間や関係部署から多数の通報が寄せられ、一時的な道路冠水や建物への浸水などが確認されている。

 元住吉駅近くのドラッグストアも浸水被害を受けた。翌日の昼過ぎまで営業を再開できず、店員らは水没した商品の運び出し作業などに追われた。下新城の不動産会社でも、沿線道路を車が通行した際に雨水の波が押し寄せ事務所内が浸水。社員の一人は、「50年近く営業しているが、これほど道が冠水したのは初めて」と振り返った。

 市では今回の大雨被害に関して、中原、高津、宮前の3区役所で連休中も罹災証明の臨時受け付けを実施。発災後から16日(午前9時時点)までに、中原区では50件の申請があった。市危機管理本部では「ゲリラ豪雨は、短時間で大量に雨が降り、川が急に増水するなど非常に危険。普段から自治体の呼びかけや気象情報に注意し、対応を確認するなど備えを進めてほしい」と話している。

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生徒たちに話す峰さん(左)、渥美さん

五輪ソフト金メダリスト 夢実現へ生徒に経験語る 平間中で約700人前に

 平間中学校区地域教育会議(大泉浩議長)、平間中学校PTA(鈴木武会長)の共催で9月10日、女子ソフトボール元日本代表で金メダリストの峰幸代さん、渥美万奈さんを招いた特別講演会を開催した。2人は「夢を叶えるために今からできること」をテーマに、同校の生徒らに向け、これまでの経験を語った。

 今回、夢をかなえ、苦難をどのように乗り越えてきたかを生徒に学んでもらおうと、スポーツ界で活躍した講師を招いて行われた同講演会。同校生徒のほか、保護者、同学校区の平間、古市場、下河原の3小学校の教員ら約700人が会場に集まった。

 神奈川県出身の峰さんは、幼少期、喘息で運動を禁止されていた中で、いくつかの夢の中から「一番時間がかかって、一番難しいことを選んだ」とソフトボール選手への道へ。静岡県出身の渥美さんは、ソフトボール一家で幼い頃から兄を超えること、ソフトボール選手になることを目標にしてきたという。2人は、夢が見つからない場合でも遊びや友人との交流から知識、情報を得ることの大切さを中学生に語り掛けた。また夢をかなえるために必要なことに「夢を信じる」「努力を楽しむ」「前向きな言葉を意識する」「ありがとうを伝え、ありがとうと言われる」ことを挙げ、「充実した中学生活を送ってほしい」と話した。

 講演を聞いた生徒会役員の桒原航助さん(3年)は「自分の楽しいことを見つけて目標にしていきたい」と感想を話した。鈴木PTA会長は「オリンピック選手の話を聞く機会は少ない。説得力が違う。子どもたちに火が付いたような感覚がある。企画して良かった」と振り返った。

母校の生田小学校で初めて講演を行う成田さん=2023年9月20日

パラ水泳金メダリスト 成田さん、安らかに 市内出身 文化大使10期

 パラリンピック競泳の金メダリストで、多摩区出身の成田真由美さんが、9月5日午前1時48分、同区内で亡くなった。享年55。市民文化大使を10期20年にわたり務めたほか、共生社会の推進などにも尽力した。日本パラ水泳連盟によると、病気で療養していた。

 成田さんは1970年に多摩区に生まれ、生田小学校を82年度に卒業した。南生田中学校へ在学しているときに脊髄炎を発症して下半身まひになり、車いす生活となった。23歳のころに始めた水泳で頭角をあらわし、96年のアトランタを皮切りに、シドニー、アテネ、北京、リオデジャネイロ、東京と、パラリンピック6大会に出場。自由形、背泳ぎ、バタフライなど幅広い種目で世界の頂点に立ち、日本代表として、金15個を含む20個のメダルを獲得した。

 95年に川崎市スポーツ賞、翌96年に第1号の市民栄誉賞を受賞。2005年からは市民文化大使を10期20年にわたって務めていた。15年から22年まで7年間、誰もが自分らしく暮らせる社会をつくる川崎市の運動「かわさきパラムーブメント推進フォーラム」の共同委員長を福田紀彦市長と共に務めた。福田市長は5日、「成田さんが語った『水泳が大嫌いだった』という過去から、『あきらめなければ前に進める。人間ってすごい』という在りし日の姿までの歩みは、まさに挑戦と成長の象徴であり、私を含め多くの市民に勇気と希望を与えてくれた」とコメントを発表した。

山田瑛理氏

市長選 山田瑛理氏が出馬へ 元市議、無所属で

 任期満了に伴い10月26日(日)に投開票される川崎市長選挙に、元川崎市議会議員の山田瑛理氏(42)が9月12日、立候補する意思を表明した。

 川崎区出身の山田氏はソニーの子会社に約12年半勤めた後、2019年の川崎市議選に自民党公認で川崎区から出馬し初当選。2期目の途中、9月11日に市議を辞職し、無所属で出馬することを決めた。山田氏は同党に離党届を提出している。

 12日に行われた会見で「参院選の結果に市民が今何とかしてほしい、今大変なことがあるということを感じた。幸せな未来をつくるには市長でないとできない」と市長選へ思いを語った。庶民感覚を生かし2児の母親目線で、教育格差の是正、年齢を問わない留学支援、中小企業支援などを訴え「今に応え、希望、夢があふれるまちにしていきたい」と語った。

 市長選には、これまでに新人の國谷涼太氏、現職の福田紀彦氏、新人の宮部龍彦氏、野末明美氏が出馬の意向を示している。(9月14日起稿)

マンホールトイレの構造(断面図)

災害時のトイレ対策方針 川崎市 在宅避難の備え求める 10月31日までパブコメ

 川崎市は「災害時のトイレ対策方針(案)」をこのほどまとめ、9月8日からパブリックコメント(市民意見募集)を開始した。過去の災害の教訓を踏まえ、下水道設備を利用したマンホールトイレの整備や在宅避難時の携帯トイレに関する啓発などを進めていく方針だ。

 内閣府は2024年1月の能登半島地震の被災地の状況などから、同年12月に「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」等を改定し、市町村に対し、在宅避難者等の支援方策を検討するよう求めている。これを受けて川崎市では今年4月、4つの方向性を盛り込んだ「新たな災害時のトイレ対策の考え方について」をまとめ、市議会総務委員会に提示。今回の方針案では「考え方」の内容を整理し、一部を拡充した。

 方針案では3つの方向性を掲げている。

 一つ目が「避難所におけるマンホールトイレを軸としたトイレ対策への転換」。これまでは避難所などに設置する仮設トイレを軸に対策を進めていたが、各地の災害では、避難所のトイレが詰まって使用禁止になったり、仮設トイレのし尿処理が追い付かずに不衛生な状態になるなど、課題が指摘されていた。そのため市では既設の下水道管を利用したマンホールトイレの設備を、31年度までに計174カ所の避難所(24カ所は整備済み)に整備する方針だ。

トイレも「自助」重要

 二つ目が「市民の具体的な行動につなげる自助・共助への働きかけ」で、4月の「考え方」より項目の昇順を上げて内容を拡充した。市ではマンションなど共同住宅の居住率が7割を超え、人口規模も大きいことから在宅避難が中心になる。しかし携帯トイレを3日分以上備蓄する世帯の割合は32・1%、災害時のトイレの使用方法を知る人は34・5%で、市民の備えが十分ではない。「自分の命は自分で守る」という「自助」の意識を高めるよう、市民への啓発を進めるという。

 そして三つ目が「共助・公助が連携したトイレ対策の地域展開」。市は「川崎市防災協力事業所登録制度」により、これまでに389の民間事業者から災害時のトイレ利用などの協力体制を構築してきた。市の担当者は「今度は地域のスーパーなどにも協力を得られるよう、声掛けしていく」としている。

 方針案は市のウェブサイトのほか、各区役所や図書館などで閲覧できる。意見提出は10月31日(金)まで、専用フォームや郵送のほか、市危機管理本部危機管理部などで受け付ける。問い合わせは市の危機管理部【電話】044・200・2842。

緑化かわさきフェア 川崎市 経済効果は89億円 公式記録まとまる

 川崎市制100周年を象徴する事業として開催した「第41回全国都市緑化かわさきフェア(かわさきフェア)」の全容をデータと写真で記録した公式記録を、川崎市がまとめた。計53日間の祭典がもたらした経済効果や波及効果なども分析、総括している。

 1983年から続く都市緑化フェアで初めて、かわさきフェアは2024年秋と25年春の2期制で開催された。市の公式記録によれば、来場者数は約162万人で、秋開催(24年10月19日〜11月17日)の30日間の来場者数は約94万人、春開催(25年3月22日〜4月13日)の23日間の来場者数は約68万人だった。

 主要会場の来場者数は、富士見公園(川崎区)は計71万5千人、等々力緑地(中原区)は約60万4千人、生田緑地(多摩区)は約30万4千人。年齢別では、秋開催は50代以上の世代が過半数を占めた一方で、春開催は10歳未満を含む40代以下の世代が52%だった。来場者の居住地は秋も春も川崎市内が6割以上で、神奈川県内(市を除く)は3割弱だった。

「地域経済が活性化」

 「かわさきフェア実行委員会」の経費(予算ベース)は約25億円。一方で、来場者への調査結果から算出した消費額などから推計した神奈川県内への経済波及効果は計135・2億円だった。このうち川崎市内への波及効果は88・7億円で、「直接効果」は69・4億円、直接効果を受け経済活動が活性化するなどの「間接効果」は19・3億円と推計。公式記録では、フェア開催が県内や市内に経済波及効果をもたらし、「地域経済の活性化に大きく貢献した」と総括している。

 市はかわさきフェアの開催にあたり、「みどりで、つなげる。みんなが、つながる。」をテーマに掲げ、多くの市民が自然と関わる機会を創出し、緑を通じたコミュニティーの活性化を目指した。市内170の市立小中学校・特別支援学校すべてで花苗づくりの取り組みを実施し、枯れた花摘みなどを支えた市民ボランティアは大学生や高校生を含む458人だった。会場やネットで実施した来場者アンケートでは、フェアを通じて「花やみどり、自然への関心が高まったか」との質問に「高まった」「やや高まった」と答えた人は、秋も春も9割近かった。

 市の担当者は「緑を通して様々な形で地域に関われることを、フェアで多くの方に感じていただけた。ボランティアの方々が新たな活動を始めるなど、継続的な動きも生まれている。何をレガシーとして残せるか、今後の取り組みも大切」と話している。

 公式記録は市の公式ウェブサイトのほか各区役所などで閲覧できる。

SNS発信の手法講座

 ITセミナー「効果的なSNS発信の手法」が10月11日(土)、中原市民館で行われる。午前9時から正午。主要なSNSの特徴を知り、インスタを使って投稿の仕方やツールの使い方を学ぶ。参加無料。受け付けは9月20日(土)から先着30人。(問)生涯学習支援担当【電話】044・744・3147

初の利用者懇談会 9月28日 市民館

 中原市民館(新丸子東)の第1回利用者懇談会が9月28日(日)で開催される。午前10時から正午。参加無料。

 今年4月から指定管理者制度により「なかはらフューチャーデザインパートナーズ」が管理運営を行う同館。今回、利用方法や指定管理者の提案内容・事業計画の説明に加え、参加者同士の交流や意見交換を行う。

 定員は先着20人(1団体2人まで)。24日(水)午後9時までに、窓口か電話で申込み。

 申込み、問い合わせは同館【電話】044・433・7773。

ポールウォーキングを行う参加者

GO!GO!!フロンターレ

秋冬開催の運動教室

 フロンタウンさぎぬまは、日々の健康を気遣う人向けに、運動教室を開催している。

 教室の前半では、屋外で専用ポールを使った正しい姿勢でのウォーキングや、軽い筋力トレーニングを行い、全身運動で運動効果を高める。転倒予防や足腰への負担軽減が見込まれる。

 後半は室内でマットに横になりながらストレッチ。ゆっくりと体をほぐして、心までリフレッシュする。いつまでも元気な脚腰で自立した生活を続けたい、健康寿命を延ばしていきたいという人におすすめだ。

 12月19日(金)までの毎週火曜日と金曜日の開催で、火曜日は午後1時〜2時と2時30分〜3時30分の各2回、名称は「ロコ体操教室」。金曜日は午後1時〜2時10分の1回で、名称は「ポールウォーキング&ストレッチ教室」(宮前区との連携事業)。

 両教室とも予約制先着20人。火曜日は前月の15日、金曜日は開催1週間前から受付(どちらも午前10時)。1回600円。申込みはフロンタウンさぎぬま【電話】044・854・0210、または同所カウンター。

画像はいずれも川崎フロンターレ