横須賀・三浦版【11月14日(金)号】
右から川名さん、三浦さん、加藤さん

福祉に傾ける情熱評価 「県介護賞」横須賀から3人

 神奈川県内の社会福祉事業を行う施設などで介護事業に携わり、特筆すべき功労のあった人を称える「第32回神奈川県介護賞」の受賞者が11月6日に発表された。4人が受賞し、このうち3人が横須賀市内の施設から選出された。

 県内の介護従事者の励みとすることを目的に創設された表彰制度。40歳以上で20年以上の業務従事期間、顕著な活動内容などの要件を満たした人が対象となる。1993年に創設されて32回目となった今回、横須賀市から川名英幸さん(50・社会福祉法人公友会)、三浦麻矢さん(52・社会福祉法人心の会)、加藤あゆ美さん(45・社会福祉法人心の会)が受賞した。

利用者を第一に

 川名さんがヘルパーの資格を取得し、異業種から介護職に転身したのは23年前。特別養護老人ホーム「横須賀グリーンヒル」における利用者の排泄や入浴介助などの仕事は、それまで携わってきた車の設計とは大きく異なるが、「人と関わって働きたかったから」とやりがいを感じた。

 介助の作業をしやすいように利用者が気を使って腰を浮かしてくれた時など、必ず「ありがとう」と感謝を伝える川名さん。「それは私の方よ」と驚かれながらも、そんな振る舞いにより利用者と良好な関係を築いてきた。管理職として現場を離れた今も、「利用者も職員にとっても、相談しやすい環境づくりの基本は挨拶と笑顔」と、その姿勢は崩さない。

 大学院で知的障がい者の自立について研究した経験を活かし、21年前から就労継続支援事業所「あすなろ学苑」に勤務する三浦さん。仕事や職場を提供することを通じ、「苑生」と呼ぶ知的障がい者のサポートを続けている。

 プロのパティシエから受けた技術指導をもとに苑生が製造を手掛けるパンや焼き菓子は、食品に関するさまざまなコンクールで12回の受賞歴がある本格派。「今回の受賞は苑生と職員すべての頑張りによるもの」という三浦さんは、「障がい者もプロと遜色ないほどおいしいものが作れることを発信していきたい」と話した。

 自宅で祖母を介護する母の姿を日常的に見てきたことで、高校卒業後に「何となく」進学した福祉系の専門学校。それから25年、加藤さんは介護の道一筋に歩んできた。

 現在勤務する特別養護老人ホーム「さくらの里山科」では、ショートステイ部門で施設の利用を検討する人にサービス内容などを説明する相談係長を担う。

 ともすれば、「施設に預けられてしまう」と疎外感や孤独感を抱く利用者たち。専門学校時代、在宅ヘルパーの実習で訪問した高齢者宅で聞いた「やっぱり自分の家がいい」という言葉をずっと胸に秘め、自宅のようにリラックスできる環境づくりに努めている。
校舎となる妙忍寺と川口理事長

横須賀市秋谷 "自分軸"養う学び舎 オルタナティブ校開校へ

 子どもたちの探究心に基づき、学びを深める学校「オルタナティブスクール」が来春、横須賀市秋谷の妙忍寺(秋谷4313)に開校する。教員経験のある川口翔平さん(秋谷在住)が理事長を務めるNPO法人「Re-Education」が運営。小学1年生から6年生を対象とし、初年度は10人程度の児童を受け入れて始動する計画だ。

 オルタナティブスクールは、文部科学省が定める学習指導要領に基づく学校とは異なる、独自のカリキュラムや教育理念に基づいて運営される教育機関を指す。児童生徒一人ひとりの興味関心に基づく自由な学びや、個性や自律性を重視しており、不登校児などの「居場所」としての意味合いが強いフリースクールとは方向性が異なる。

疑問が学びの原点

 同校の名は「The WILL」。川口理事長は数年前から、偏差値や受験といったある種の「社会の軸」に沿う現代の学校教育のかたちに違和感を覚えていた。それよりも「何をしたいのか。どうなりたいのか。どうありたいのか」といった「自分軸」を持つことが子どもの幸せにつながると考えるようになり、1年程前から開校を構想していた。そうしたところ、前任校の横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校で出会った野下卓泰さん(芦名在住)、新倉哲さんも趣旨に賛同。同法人を立ち上げ、開校に向け動き出した。

 同校が目指すのは、子どもたちの興味関心に合わせ、とことん探究させる学校だ。時間割には国語や算数、理科、社会といった日本の小学校における主要な学習教科はない。その代わりに、話し合いや質問を通じて自己理解を深める「共感コミュニケーション」や、子どもがやりたいことを形にする「プロジェクト」の時間が設けられている。プロジェクトを通して生まれた疑問を、座学につなげる、暮らしと学びが一体となった教育を実践する。

 「現在の学校教育は学びに対して、先生が答えを持っている。そうではなく、答えのない問いをとことんやらせてあげる。そしてそれに大人が伴走する。そんな学校をつくりたい」。川口理事長は理念を掲げる。

 教員は川口理事長、野下さん、新倉さんの3人。このほか、学校の趣旨に賛同した、近隣に住まう農家や企業家、飲食店主などの有志メンバーも先生役に。子どもたちは、授業で生まれた疑問や課題を気軽に相談できる。

 将来的には、受入人数を30人ほどに増やす予定で、その後は中等部の設置も視野に入れているという。学校で使用する椅子や机などは、入校する子どもたちに自作してもらう。

 同法人は現在、開校に向けてクラウドファンディングで資金を募っている。詳細は「秋谷 The WILL」で検索する。

初めて手掛けた絵本「クーモとクラド」を出版した Anyna(エニーナ)さん(本名:森 佳代) 横須賀市追浜東町在住 41歳

「やさしい世界」絵本で描く

 ○…「やさしいテイスト」と評されるその絵本には、本人が大好きだという「空」や「飛行機」が穏やかに描かれている。イラストレーターで絵本作家。ユニークな経歴は、かつて大空を舞台に活躍した客室乗務員(CA)であること。8年間の勤務と子育て期間を経て、自分の「好き」をぜんぶ仕事にしていく挑戦の真っ只中にいる。

 ○…幼い頃から絵を描くことが得意だったが、職業にするという発想はなく、夢を追うための道順すら知らなかった。そうした中、小学生時代にそろばんの使節団で初めて乗った飛行機の翼と胴体の形に目を奪われ、機内で搭乗客をもてなすCAの接客に心を動かされた。夢を叶えて約8年間、国内線から国際線まで飛び回る充実した日々を過ごした。

 ○…忘れかけていたもうひとつの夢が頭をもたげるようになったのは、子育て真っ最中のこと。

「子どもと絵しりとりをしたり、コミュニケーションツールとして絵を描いているうちに、創作意欲が湧いてきた」。SNSに作品を投稿すると次々とイラスト制作の依頼が舞い込むようになり、「求めてくれる人がいる」ことに自分自身の価値を再認識することができた。

 ○…発表した絵本を含め、空と雲と飛行機の絵を手掛けることが多い。「元CAの飛行機作家」の肩書が強みになると感じている。自分が届けたいメッセージをストーリーとして編むことができるのも絵本づくりの魅力。今作の主人公たちは、自分の進みたい道を選択し、異なる経験をしていくが、合流した場所では互いの光を認め合い、さらにその輝きを増幅させていく。「道はひとつじゃない──」。そんな誰かの心をふわりと軽くする「やさしい世界」を描き続けていく。
山の神の荒ぶる踊りが見どころの『湯立て』の一幕

息をのむ荘厳な舞 海南神社で面神楽奉納

 三浦市三崎の海南神社で11月11日・12日、「面神楽」が奉納された。

 1971年に三浦市の重要無形民俗文化財に指定されている面神楽は同社に伝わる神事で、日本の神話を演じる「仮面黙劇」が特徴だ。同社の御祭神である藤原資盈(すけみつ)、盈渡姫(みつわたひめ)が平安時代初期の864年11月初めの未の日に三崎の浜へ漂着した縁起により、「出居戸(でっと)の神楽」と呼ばれる湯立神楽が行われる。その翌日の申・酉の日の夜には、面を付けて舞う面神楽が境内の神楽殿で、海南神社面神楽保存神楽師会によって奉納されている。

 五穀豊穣・国家安泰を祈願する『国固め』、かまどの神が、邪神とされる山の神を退治する『湯立て』など2日間で9演目を披露。太鼓や篠笛、鈴などの音に合わせて舞う演者の一挙一動に、訪れた観衆は、息をのみ魅了されていた。
栗原壱成さん

横須賀出身の栗原さん バイオリニストとして将来嘱望 期待の新鋭、初の地元凱旋

 横須賀市出身のバイオリニスト、栗原壱成さん(29)が12月7日(日)、ヨコスカ・ベイサイド・ポケットで初の地元凱旋となるリサイタルを、ピアニストの南ことこさんとの共演で開催する。

 昨年、若手音楽家の登竜門として権威のある日本音楽コンクールで優勝し、将来が期待される栗原さん。クラシック音楽好きの両親に連れられてコンサートへ頻繁に足を運んでいたことで興味をもち、3歳で初めてバイオリンの弓を握った。

 子どもには親しみにくいクラシック音楽だが、当時から好きだったテレビ番組は「N響アワー」。画面にくぎ付けとなってプロの指使いを学ぶなど、幼少期からバイオリンに強い関心を抱いていた。稽古にも進んで取り組み、小学2年生からさまざまなコンクールで優勝を果たした。

挫折を機に基礎練習

「これが同じ楽器の音なのか」。中学2年生の時、父の運転する車のカーステレオから流れていた「バイオリニストの王」と言われるヤッシャ・ハイフェッツの音色に衝撃を受けた。

「それまでは、なんとなく続けている感じで、コンクールで受賞してもどこか他人事だった」というが、この出来事を機に「完全にハマった」。世界の名演奏家たちの動画に没頭するようになり、次第に友人と遊ぶことよりもバイオリンを優先する生活に変わった。本格的に演奏家を志すようになり、音楽を専門に学ぶ高校として国内最難関とされる東京藝術大学附属高校に進学。プロを目指し、慣れ親しんだ横須賀を離れた。

「高校時代は、ずっと挫折ばかり」。全国から集った高い能力をもつ級友に囲まれて校内試験も最下位と振るわず、次第に失われていった自信。技術的な限界を感じるなか、自身を見つめて気が付いたのは「土台となる力」が不足していることだった。

 そこで、弦を指で押さえずに弾く「開放弦」に取り組むなど、多くの時間を基礎練習に費やした。その甲斐もあって実力が開花。進学先の東京藝術大学を主席で卒業した。その後は数々の国際コンクールで優勝を果たしたほか、国内外の多数のオーケストラと共演するなど、世界を股にかけて活躍している。

表現力の源泉は横須賀

 武山小学校に通っていた頃は「アウトドア派な子ども」で、放課後になれば毎日暗くなるまで友人と裏山を駆け回り、虫捕りや魚釣りを楽しんだ。高校や大学の級友からは「毎日稽古漬けで遊ぶ時間なんてなかった」という話を聞かされる中、「我が家では稽古は夜。遊ぶ時間を確保してくれた両親に感謝している」

 そんな伸び伸びとした環境で育まれた感受性こそ、プロの演奏家としての表現力の源泉。自然をテーマにした曲を演奏する時には、強い日差しや潮の香り、春に芽吹く草花など横須賀で過ごした少年時代の記憶が脳裏に浮かぶという。

「ワイン」になった曲

 横須賀で初となるリサイタルについて、「すごく不思議な感覚」という栗原さん。「まだワインになっていないぶどうジュースのままの曲は弾きたくない」と自身の考えを述べ、これまでに幾度となく演奏してきた「自分の言葉として伝えられる曲」を披露する。

 午後2時開演。チケットは2千円で全席指定。問い合わせは横須賀芸術劇場【電話】046・823・9999。
表彰状を手にする同社の加藤重雄専務

三浦地域資源ユーズ 3Rのけん引役 環境省の「循環表彰」受賞

 Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3Rを推進する環境省の「令和7年度 循環型社会形成推進功労者環境大臣表彰」に、三浦市南下浦町毘沙門の三浦地域資源ユーズ(株)が選ばれた。

 同社は2006年に三浦市と三浦商工会議所の呼びかけで設立された第三セクター。10年から三浦市内で発生したし尿や浄化槽汚泥、下水汚泥のほか、市内の農作物の残渣などを受け入れて、処理過程でバイオガスの生成とバイオマス肥料を生産している。バイオガスは燃やして発電することで施設稼働のエネルギーに利用。バイオマス肥料は地元の農家などに無償または安価で提供し、農地に還元している。このほか小学校の社会科見学や社会人の視察も積極的に受け入れてきた実績も含めて今回の表彰となった。

基地の街を歩き続けて 新倉裕史さん講演

 基地のある街で平和運動を続ける新倉裕史さん(非核市民宣言運動・ヨコスカ)をゲストスピーカーに迎える「第22回 いきいき市民塾」が12月6日(土)、汐入駅前の横須賀市立市民活動サポートセンターで開かれる。

 テーマは「基地の街を歩き続けて」。市民活動を始めたきっかけや今後の取り組みなどが聞ける。時間は午前10時30分から正午。定員30人で参加無料。希望者は同センター【電話】046・828・3130。12月5日(金)締め切り。
完成した冊子を手にして満面の笑みを浮かべる齋藤さん

郷土史家齋藤さん 「小栗は横須賀の大恩人」 製鉄所開設に尽力した人物に光

 幕末の動乱期、横須賀製鉄所の開設などに尽力した幕臣、小栗上野介忠順の生涯をまとめた冊子「明治を夢見た侍 小栗上野介〜横須賀は明治産業革命の地〜」を郷土史研究家で歴史サークル「湘南海援隊」を主宰する齋藤秀一さんが上梓する。

 西洋式陸軍の整備や日本初の株式会社である「兵庫商社」の設立など、先駆的な思想で日本の近代化をリードした小栗に尊崇の念を持つ齋藤さん。冊子に収録されているのは、2009年からタウンニュース横須賀版で連載していたコラム「明治を夢見た侍」の原稿を加筆修正したもの。27年放送のNHK大河ドラマ「逆賊の幕臣」で小栗が主人公として描かれる話題性を先取りして、1冊にまとめた。

 小栗の誕生から幼少期のエピソード、遣米使節として渡米し、国力の差をまざまざと見せつけられ幕府改革を推進するに至った経緯や、大政奉還後に明治新政府軍の手によって斬首される悲しい結末まで平易な文章で書き記している。横須賀との関連などにも触れており、市民レベルで小栗の認知度アップにつなげる考えだ。取材として、小栗の生誕地である群馬県高崎市倉渕地域を訪れたという齋藤さん。「大河ドラマの放送を機に、横須賀と倉渕地域に注目が集まることを期待したい」と話している。

 冊子はA5判モノクロ49ページで定価920円(税込)。「横須賀製鉄所起工式の日」である11月15日(土)から文教堂 横須賀MORE,S店、齋藤さんが経営する飲食店「やきとり竜馬におまかせ」(横須賀市日の出町2の3)で発売する。

出版記念イベント歴史トークなど

 11月30日(日)には、平成町のノジマ・モール3階展望室で出版記念イベントが開かれる。

 著者の齋藤さんと小栗の右腕として幕府の近代化を推し進めた栗本鋤雲(じょうん)の研究者である宇内裕之さんによる歴史トークがある。音楽ライブも楽しめる。午前11時開始。
若江漢字《時の光の下にII(死の島)》1989-2024年 ミクストメディア作家蔵 photo:Koda Mori

県立近代美術館 葉山 若江漢字とボイス 11月15日〜2月23日

 神奈川県立近代美術館 葉山(葉山町一色)で、展覧会「若江漢字とヨーゼフ・ボイス 撮影されたボイスの記録、そして共振」が11月15日(土)から開催される。会期は2026年2月23日(月)まで。

 同展は、横須賀市在住の美術家・若江漢字氏と、20世紀ドイツを代表する芸術家ヨーゼフ・ボイス(1921-86)の二人に焦点を当てる。

 若江氏は44年横須賀生まれ。60年代前半から作家活動を開始し、70年代以降の西ドイツ滞在を機にボイスの仕事に共鳴。以後、交流を重ねながら、94年に横須賀市平作に「カスヤの森現代美術館」を創設。ボイスをはじめとする現代美術の紹介と自らの創作活動を並行して行ってきた。

 ヨーゼフ・ボイスは、人間の創造行為を社会運動へと広げる「拡張された芸術概念」を提唱。ドイツの国際美術展「ドクメンタ」などで作品を発表する傍ら、教育や政治活動も実践した。

 会場では、若江氏がボイスのドクメンタでのアクションや来日の様子などを間近に撮影した貴重な記録写真を展示。多くが初公開となるこれらの写真は、若江氏の作家としての視点も伝える。あわせて二人の造形作品も展示し、両者の共通項と独自性を考察する内容となっている。

 会期中、若江氏によるギャラリートーク(11月15日・12月6日(土)・13日(土)・1月10日(土))やパフォーマンス(12月6日・1月10日)も予定されている。

 開館時間は午前9時30分〜午後5時。月曜休館(祝日除く)。問い合わせは同館【電話】046・875・2800。
生徒が育てた花きや野菜を販売

三浦初声高校収穫祭 生徒が育てた野菜や果樹

 三浦市初声町の三浦初声高校和田キャンパスで11月15日(土)、収穫祭が開催される。午前10時から午後0時30分。

 ダイコンやハクサイ、ミカン、シクラメンなど、授業の一環で育てた野菜や草花、果樹を生徒たちが販売。おやき、トマトソース、自校産小麦を使ったパンなど、実習で製造した物品も並ぶ。

 このほか、太鼓部発表やビンゴ大会などもある。校内に駐車不可。車で来場の際は近隣駐車場を利用のこと。
港の夜空を彩る(写真は過去)

三崎・城ヶ島花火大会 1300発が冬空染める 港町まつりも同日開催

 第7回「三崎・城ヶ島花火大会」が11月23日(日)に開かれる。三浦市三崎の魚市場先の堤防から打ち上がる約1300発が港町の夜空を焦がす。時間は午後6時から20分程度。地元有志らでつくる実行委員会(香山賢一郎委員長)の主催。荒天中止。

 2008年まで行われていた三崎地区での花火大会の終了後、11年に夏祭りとして復活。18年から現名称へ変わった。

 同日、複合施設のうらりでは、海の幸が味わえる「三崎港町まつり」も催される。午前10時から午後4時。同まつり実行委員会の主催。

 即売会や飲食コーナーが設けられるほか、三崎港直送の冷凍まぐろの特価販売などがある。そのほか、海の生物に触れて学ぶタッチングプールや水中観光船「にじいろさかな号」の特別運航、城ヶ島渡船「さんしろ」(三崎港〜城ヶ島間)の無料運航、漁業取締船「たちばな」の展示、スタンプラリーなど多様な企画を用意している。

 問合せは同まつり実行委員会(三浦商工会議所内)【電話】046・881・5111。
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93歳の樋口さん。起立したまま講演を行った

広場で食べたおにぎり 帰国を実感 満蒙開拓団員の樋口さん講演

 横須賀市富士見町在住の樋口達さん(93)が11月7日、満蒙開拓団員として体験した終戦前後の壮絶な日々を語った。元ゼロ戦パイロットの生涯を描いたドキュメンタリー映画『原田要 平和への祈り』横須賀上映会の関連企画。会場の市文化会館に集まった聴衆が熱心に耳を傾けた。

 長野県諏訪郡富士見村出身の樋口さんは1940年、8歳で家族と共に満州へ渡った。しかし45年、高等科2年生の夏に日本の「無条件降伏」を知らされる。「神国日本は必ず勝つ」と信じていただけに、現実を受け入れられなかったという。

 ソ連兵の侵入や略奪に怯える日々が始まった。女性たちは天井裏に隠れて難を逃れたが、樋口さんは「今でも本当に悲しい出来事」として、避難の「足手まといになる」という理由で、生まれてきたばかりの赤ちゃんが開拓団の団長らの手で殺されたという、痛ましい事実を明かした。食料が尽き、匪賊(ひぞく)の襲撃が続く中、団は全滅の危機に瀕した。樋口さんの兄を含む3人が命がけで八路軍(はちろぐん)(中国共産党軍)に助けを求め、日本人に友好的な中国人の仲介もあって団員は救出された。「この人物のおかげで富士見の開拓団は犠牲者が最小限で済んだ」と樋口さん。戦後に中国を訪れて墓参した際の写真を示しながら感謝を述べた。

 46年、引き揚げ命令が出た後も苦難は続いた。汽車でたどり着いた吉林(きつりん)という街では、鉄橋が爆破されて足止めとなり、飢えと雨の中で多くの幼い子どもたちが次々と命を落とした。

 同年10月、広島県の大竹港に上陸し、故郷の長野県富士見駅に到着。村の人々が出迎える中、広場で振る舞われたおにぎりを食べた。「腹いっぱい食べたあの美味しさは今も忘れることができない」としみじみ語った。

 「東京大空襲や広島、沖縄の戦禍は盛んに語られるが、満州での悲惨な体験が取り上げられることはほとんどない」と樋口さん。「私たちの団の犠牲が少なかったのは、団長が地元(中国人)の人たちと仲良くしていたから」と述べ、人種や国境を越えた対話の重要性と平和への強い思いを力いっぱい述べた。

「みうら市民まつり」 祭典の主役はあなた 11月16日、2会場で

 市民団体や事業者らによる催しで地域交流を図る「みうら市民まつり」が11月16日(日)、初声町の潮風アリーナと初声市民センターの2会場で開かれる。午前10時から午後3時。

 市民が一体感を持ち、いきいきと暮らし、郷土を愛する気持ちの共有をめざし、2005年から始まったイベント。豊かな共生社会、福祉・市民活動の推進、環境・エコロジー・ライフスタイル提案、市民交流・地域活性化の推進、地産地消・うまいもの屋台などをテーマに行われる。

 今年は135の団体が参加する。潮風アリーナの屋内ステージで10時から市制70周年を祝う記念式典が行われた後、フラダンスや民謡の舞台、屋外ステージでは、ロックやジャズなどの演奏があるほか、飲食ブースも多数設置。姉妹都市の長野県須坂市の特産品の販売もある。

 詳細は実行委員会(市市民協働課)【電話】046・882・1111。

追浜でベイ応援 秋季練習に合わせ連携企画

 横須賀市は、追浜地区で行われている横浜DeNAベイスターズの秋季トレーニングに合わせて、連携企画を実施している。追浜周辺の参加店舗で買い物をして応募すると、同球団選手の直筆サイングッズが抽選で当たる。期間は11月19日(水)まで。

 ベイスターズは、追浜地区にファーム拠点「横須賀スタジアム」や「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」(いずれも夏島町)を構えており、毎年秋季練習を実施している。今年は19日まで行う予定で、選手の練習風景を間近で見ることができる。今回のイベントは、この期間中に市内外から多くのファンに訪れてもらおうと、球団の協力を得て実施している。

 参加方法は、追浜地域にある約35の参加店舗で500円以上買い物して、応募用二次元コードを入手する。これをスマートフォンなどで読み取り、専用のフォームから必要事項を記入し応募する。参加店舗やイベント詳細は市HPなどで確認する。

 16日(日)には、横須賀スタジアム正面玄関前で球団選手のサイン会もある。午後2時30分頃から参加券が配布される。定員は30人程度で、これを超える場合は、先着抽選となる。

きっと空を見上げたくなる 元CAエニーナさんの絵本

 横須賀市追浜東町在住のイラストレーター、Anyna(エニーナ/森佳代)さん=人物風土記で紹介=が先ごろ、絵本作家としてのデビュー作『クーモとクラド』を出版した。

 元客室乗務員(CA)という異色の経歴の持ち主。育児中に趣味で三浦半島の風景を描いてSNSで発信していたところ、独特の優しいタッチが多方面から評価を得るように。友人などからイラストの依頼が舞い込み始めたのを機に、独学で学びながら仕事としてスタート。新しい挑戦として2023年に起業している。

 絵本のストーリーはこうだ。

 ふわふわの雲たちが、空を進んでいく。

 山へ? 海へ?

 それぞれの道先で、待っていたものは──。

 隠し絵や本文の頭文字を縦読みするとキーワードが浮かび上がる仕掛けなど遊び心に満ちている。本体1300円+税。エニーナさんのホームページ(https://anynaillustration.com/)から購入できる。
フィナーレを飾った盆踊り

環境考える祭典に1千人 横須賀初の「アースデイ」

 横須賀しょうぶ園で11月3日、「アースデイ横須賀2025 響環(きょうかん)」が開催された。地球環境をテーマに各地で開催されている国際的なイベントで、横須賀市では初。

 自然について考えるワークショップや海洋ごみから作るアクセサリー販売、草木染体験など、会場には46の多様なブースが出店。秋晴れのもと1千人を超える人が集まり、フィナーレとして行われた盆踊りは参加者が一体となって楽しんだ。

 横須賀高校科学部は、保護活動を行っている絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオを展示。初めて目にした子どもたちから生体に関する質問を受けた同部の辻田優花さん(2年)は、「個体数を増やすためには環境を守ることが大切。そのためにも、まずは存在を知ってもらう必要があるので、貴重な機会となった」と話していた。
最優秀賞の一つ『海底のロープ』

海の神秘、レンズ越しに「捉えた!」 「海洋教育写真コン」 三浦市の児童生徒の作品20点入賞

 「子どもたちから見た、三浦の海」をテーマに三浦市内在学の児童生徒から海の魅力を伝える1枚を募る「第14回 海洋教育写真コンテスト」の表彰式が11月6日、三浦市民ホールで開かれた。今年度は、923点の応募があり、最優秀賞2点、優秀賞16点、特別賞2点が入選した。(一社)みうら学・海洋教育研究所、三浦市教育委員会、東京大学三崎臨海実験所の共催。

 最優秀賞の一人に選ばれた川西陸月(りつき)さん(名向小6年)の作品名は『海底のロープ』。海藻の一種である「ナガミル」が海底で蛇のように絡み合っている瞬間を捉えた一枚だ。防水仕様を施したスマートフォンで自宅近くの海へ何度も足を運び、「ナガミルがロープのように集まっていてゾクッとした」と川西さん。「来年も最優秀賞を取りたい」と目標を話した。

 そのほか、夜光虫やガンガゼ、貝がらに入ったカニを収めた写真などユニークな作品が入賞している。これらの作品は11月16日(日)の「みうら市民まつり」、同月22日(土)・23日(日)に開かれる「三浦市創造展」などで掲示される予定だ。
サスケハナ号の模型(浦賀コミュニティセンター分館蔵)

三郎助を追う 〜もうひとりのラストサムライ〜 第20回 文・写真 藤野浩章

「よし。日本の最高の役人と会うためには、まずこの地の高官と会わねばならぬと言うべ。そして俺が...俺がこの地の副奉行だとな」(第一章)

     ◇

 三郎助と通詞(つうじ)の堀が乗った奉行所からの一番船は、高速で黒船に向かう。すでに無数の固船(かためぶね)が手順通りにびっしりと張り付き「どれもが驚くほど巨大で、周囲に群がった固船が巨鯨のまわりで遊泳するイルカのように見えた」と本書では表現している。

 それもそのはず、三郎助は将旗を掲げるサスケハナ号の大きさを瞬時に「優に四十間(けん)(72m)はある」と見積もったが、乗っている警備船は長さ四丈(じょう)(12m)。ここにいきなり乗り込んで行くのは、相当な勇気が必要だったろう。

 ところでこの警備船に使われている「押送(おしょくり)船」は八丁櫓(はっちょうろ)、つまり左右に4本ずつの櫓を備えたもので、当時鮮魚の輸送によく使われていた。

 この頃、江戸では人口が増え「鮮魚」の需要が急増していた。しかし冷蔵設備が無いため、いかに新鮮なうちに魚を日本橋へ送るかが勝負だったのだ。例えば三崎からは20本ほどのマグロを載せて昼前に出発し、浦賀での積荷検査も特別に免除され、屈強な男たちが絶え間なく漕いで翌早朝に江戸へ。その漕ぎっぷりは今の千円札の裏にも描かれているが、こうした営業努力が"三崎のマグロ"ブランドを育てて行くことになるのだ。

 そんな押送船は黒船が備えるカッター船より速かったという話があるが、ついに三郎助は黒船に乗り込んだ。そして一世一代の「方便」を繰り出す。命を賭けたと言ってもいいこの一言が、歴史を動かしていく。