横須賀・三浦版【6月13日(金)号】

ふるさとワーホリ 仕事通じた暮らし体験 県外の若者対象に短期滞在

 神奈川県横須賀三浦地域県政総合センターは、18歳から30歳代の県外に暮らす若者を対象にした「三浦半島地域ふるさとワーキングホリデー」の事業をスタートさせる。地域に1カ月程度滞在してもらい、就労しながら住民らと交流を図っていく。関係人口を増やすための試み。観光とは異なる視点で三浦半島の魅力に触れることで、将来的な移住・定住につなげる。

県事業、関係人口を創出

 総務省が旗振り役を務めている「ふるさとワーキングホリデー」は、2017年からスタートした制度。都市部に暮らす若者が一定期間地方に滞在し、働きながら収入を得て休日を自由に過ごす。自治体によって運用の仕方やルールに違いはあるが、観光や旅行では味わえない地域での生活体験に主眼が置かれている。1年以上、最長3年を期限とする「地域おこし協力隊」よりもチャレンジしやすく、実践型のインターンシップとして大学生や専門学生なども参加できる。

 県では、三浦半島をフィールドにして初めて実施する。現在、実習生を募っており、8月から9月末までの期間で4人から8人程度を迎える。

 受け入れ先として、「三崎恵水産/FISHSTAND」(三浦市三崎町城ヶ島)、「マホロバ・マインズ三浦」(三浦市南下浦町上宮田)、「かねよ食堂」(横須賀市走水)の3事業者が協力。実習生は5週間の活動期間の内、最初の1週間は実際の業務に従事し、残りの4週間は各事業者が抱えている課題の解決に向けたアイデア提供や実際に企画を立てて実行に移す。

 マグロ問屋の三崎恵水産では、製造現場でまぐろの加工や流通の仕組みを学んだ後、直営のオンラインショップ、FISHSTANDの販促強化のためのマーケティングや広報で力を発揮してもらう。

 宿泊施設のマホロバ・マインズでは、フロントや売店などの業務を経験してから、新規客やリピート客を増やすための企画立案を行う。同施設はプールやスパ、天然温泉、カフェを備えているため、宿泊客はホテルの中だけで過ごしがち。そこで、行動範囲を広げて地域一帯を楽しんでもらえるようなプランを編み出してもらう。

 両社ともに若い発想を求めており、実習生を受け入れることで、新たな視点で事業を洗い直す考え。プログラム運営とコーディネートを全国で同様の事業実績のあるNPO法人「ETIC.」が担当する。来春には、新たな受け入れ先を開拓し、仕事を通じた地域での暮らしを体感してもらう。

立候補表明順に右から上地氏、小幡氏、為壮氏

横須賀市長選 現市政の評価 争点に 現職に2新人が挑む構図

 7月の任期満了に伴う横須賀市長選が6月15日(日)告示、22日(日)投開票の日程で行われる。現職で3選をめざす上地克明氏(71)、元市議会議員の小幡沙央里氏(39)、共産党三浦半島地区委員会常任委員の為壮稔氏(71)の3人が立候補の準備を進めている。6月1日時点の選挙人名簿登録者は32万5047人。前回(2021年)の投票率は33・41%だった。

 現市政への評価が主な争点。直面している人口減少への対策、地域経済の活性化、教育・福祉の政策などを巡って論戦が交わされる。

 1月に3選出馬を表明した上地氏は2期8年の実績を強調し、人口流出の歯止めを成果として誇る。2024年はファミリー層が転入超過となり、打ち出してきた施策の効果で横須賀の魅力が高まっているとしている。浦賀地区の再開発にも力を注ぐ。

 2月に市議を辞し、退路を断って挑戦する小幡氏。経済活性化の果実を福祉に充当していく現職の方針を否定し、政策の真ん中に福祉を据える考えを唱える。「子育てナンバー1のまち」も掲げ、安心して暮らせる環境をアピールして定住者を呼び込む戦略を描く。

 為壮氏は、約40年医療や福祉の現場に従事してきた経験から「ケアを大切にする市政」のスローガンを掲げる。ケア人材の処遇改善や物価高対策など、足元の市民生活の支援を訴える。米軍基地と自衛隊の一体化による基地機能強化に異を唱え、市が退会している県基地関係市連絡協議会の復帰を公約にしている。

市議補選は混戦必至

 空白になっている2議席を争う市議会議員の補欠選挙も市長選と同じ日程で行われる。構図はいまだ流動的だが、6月10日現在で4〜5人が立候補の準備を進めている。

海南神社青年会会長で八雲祭を取り仕切った 藤 太郎さん 三浦市三崎在住 48歳

「地域への恩返し」胸に

 ○…江戸時代に起源を持つとされる八雲祭。伝統ある祭礼を取り仕切る会長として「紡いできた歴史を次世代に渡す役割」と自負する。昨年に初企画された子ども神輿の渡御だが、今年、自身が会長になり、自前の神輿を新調した。「少子高齢化が進む中、将来を担う若い人たちに郷土愛を育んでもらい、地域に根付いた人を祭を通して育てたい」。当日は数十人の”三崎っ子”が勇壮に神輿を担いだ。

 ○…生まれも育ちも三浦市。戦前から続く三崎の葬儀社「藤屋」の3代目を務める。社員が大量に辞職し、経営苦に陥った十数年前にはイチから雇用・教育体制を整え、再建に奮闘。会社に対し、あらぬ話を吹聴されることもあったが、それでも地域の人は信頼し、支えてくれた。「温かさに涙が込み上げた」。これまでも続けてきた地域活動だったが、「地元への恩返し」に一層熱がこもった瞬間だった。

 ○…商工会議所青年部会長、PTA会長、青年会議所、ロータリークラブ、法人会などこれまで様々な形で地域と関わりを持ち続けてきた。全国的な課題として、少子高齢化や人口減少などで地域社会は衰退しつつある。そんな中大切にしてきたのは「一人ひとりの思いをくみ取ること」。八雲祭に向けてもボトムアップ型の組織体制を心掛けた。時代によって変容する人の考え方に柔軟に対応することが持続可能な地域コミュニティにつながると確信している。

 ○…祭の週は準備に追われ、毎日社務所に詰めっぱなしだった。それに合わせ多くの団体に所属していることもあり、家族との時間はなかなか取れない。それでも家に帰れば温かく出迎えてくれる。寄り添ってくれる家族や地域への恩返しを胸に歩みは止めない。

東京九州フェリー船内見学会 「海の日」に船旅気分

 横須賀と北九州を結ぶ東京九州フェリーの船内見学会が「海の日」の7月21日(月)、横須賀ターミナル(新港町11の4)で開かれる。

 福岡県北九州市の花であるひまわりから名付けられた「それいゆ」の最上級クラスの船室や露天風呂など船内をお披露目。九州の食材を使ったメニューを提供する船内レストランや売店も特別に営業する。

 参加無料で事前申込制。専用応募フォームから申し込む(「東京九州フェリー海の日 船内見学会」で検索)。定員1500人で申し込み多数の場合は抽選となる。

 時間は午前10時と午後0時の2部制(木)(※主催者側で乗船時刻を指定する)。小学生以下は大人の同伴必須。6月19日(木)締切り。

屋外用(左)と屋内用センサー

横須賀市 測定器で熱中症予防 全市立中高に導入

 横須賀市は5月末から、全市立中学・高校計24校に暑さ指数(WBGT)を測定し、スマートフォンなどの端末で数値を確認できるシステムを導入した。市と包括連携協定を結ぶ工業用プラスチック部品製造の(株)ニフコ(本社・横須賀市光の丘)が開発した製品で、センサーが読み取った指数を専用ポータルからリアルタイムで確認できる。市によると、同様の機器を活用した学校現場での熱中症予防の取り組みは全国初。

 市教育委員会は独自に策定したガイドラインに基づき、気温35度かつ湿度55%以上など、WBGTの基準で熱中症の危険があると判断される場合、部活動、体育の授業など学校での運動の中止を求めている。以前は教職員が気温などを手動で測定し、運動の実施可否を判断していたが、システムの導入後は負担軽減が図られる。導入費用は456万円で、環境省が所管する環境再生保全機構の支援金などが活用された。市教委によると、各学校の体育館とグラウンド等に順次設置しているところで、運用がスムーズに進めば小学校での導入も視野に入れる。

 上地克明市長は、6月10日の会見で「生徒だけでなく、教職員の安全にもつながる。健康増進に向けいち早く導入できた」と強調。同社の担当者は「熱中症のリスクが高まる環境の中、学校施設での導入が進めば、工場など様々な場所にも設置を呼びかけたい」と語った。

「闇バイト」監視の目 ポスターで注意喚起

 首都圏の民家で発生している強盗事件が「闇バイト」と深い関連性があるとして、横須賀暴力団排除対策推進協議会(石渡卓会長=写真右)と横須賀防犯協会(上田滋会長=写真左)、横須賀署(小林仁志署長)の3者が連携して、注意喚起を促すポスターを作成した。A1判100枚、A4判6000枚を用意し、町内の掲示板や、金融機関などに貼り出す。

 闇バイトは、10・20代の若者がスマートフォンで気軽に応募し、犯罪行為に加担してしまう社会問題。ポスターには、「ストップ闇バイト」の文字がスマホと一緒に描かれており、社会全体で監視の目を光らせる。

 今年に入り「オレオレ詐欺」なども増加傾向にある。5月末時点で22件(前年同期比13件増)、被害総額は5743万円(同3833万円増)。電話口で警察官を名乗り「口座が犯罪に使われている」と虚偽の情報を伝え、引き出しを指示するなどの例があるという。

駅前で街頭演説を行い、支持を訴える

高齢化対策訴え、市政刷新 為壮稔氏(71)

 昨年10月の衆院選に続き、市長選にも挑む。医療・介護の現場で40年以上勤務した経験から、高齢化を「市の待ったなしの課題」ととらえる。介護事業所に対し、介護報酬引き下げ分の補填やガソリン代の補助など支援を行う新潟県村上市の事例を挙げ「他自治体を参考にした、事業所を補助する独自の取り組みが必要」と強調。市政の場に土俵を移した今回は、現職との対立姿勢を鮮明にする。

 無所属で立候補する意向だが、自身は日本共産党三浦半島地区常任委員を務める。党が掲げる18歳未満の医療費無償化や消費税5%への減税などの公約に連帯する。公約にケア労働者の育成事業の補助や健康増進を掲げ、バスの再増便などで外出機会を増やし、閉じこもりを防ぐビジョンを掲げる。6月5日から駅頭での演説に力を入れており、「現職の施策は市民の声に背くもの。安心なまちづくりを望むなら、私に支援を」と声を張り上げた。

 広島県生まれ。釣り好きが高じて横須賀に移住した。被爆2世として、平和への思いは人一倍強いと自負する。昨年9月に市内で発生した米軍人による交通死亡事故について「市の対応が不十分だ。抗議の意思が伝わってこない。標識が分からない米兵に、安全運転ができるのか」と述べ、基地の存在自体を疑問視。県基地連絡協議会への即時復帰を強く求めている。

 昨年の衆院選で小泉進次郎氏に約10万票の大差をつけられた反省を踏まえ、「全ての世代に主張を伝える必要がある」と繰り返し強調。辻立ちの際に通りがかった若者に積極的に声をかけ、自身の政策について意見を交換する姿が目立つ。「市民とともに新しい市政をつくる」がスローガン。

14万株のハナショウブ しょうぶ園で今週末見頃ピーク

 横須賀市阿部倉の「横須賀しょうぶ園」では、初夏の風物詩である色鮮やかなハナショウブが来園者の目を楽しませている。同園担当者によると、きょう6月13日(金)から同月15日(日)ごろにかけて見頃のピークを迎えるという。

 約7千平方メートルの菖蒲田に「追風」や「玉堂」「神路の誉」「爪紅」など約400品種・14万株が優雅に咲き誇っている。同園では6月22日(日)まで「花しょうぶまつり」を開催しており、菅笠を被った姿の職員らが花殻を摘む様子なども見られる。

 入場料は6月まで大人320円、小中学生100円。詳細は同園HPもしくは【電話】046・853・3688。

神輿を担いだ子どもたち

八雲祭 大人顔負け「子ども神輿」

 三崎・海南神社で「お天王様」の名で親しまれる「八雲祭」が6月7日、三崎下町エリア一帯で執り行われた。同神社青年会(藤太郎会長=人物風土記で紹介)による力強い神輿のほか、今年からは、自前の子ども神輿を新調した。

 木遣りに対して、神輿を高く担ぐ「さし」、上下に振る「ねり」などを披露。威勢のよい掛け声と大人顔負けの動きで観衆らを感心させていた。

 八雲祭は、江戸時代に三崎でコレラが流行した際、疫病の化身である八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した速須佐之男大神(ハヤスサノオノオオカミ)を厄除神として祀ったことが起源とされる初夏の風物詩。神輿渡御が行われ、家内安全や商売繁盛などを祈願している。

小幡氏の地元、池上の住民へ支援を呼びかけ=今月8日

現役世代の福祉に主眼 小幡沙央里氏(39)

 今年の2月に市議を辞職し、「介護で仕事を辞めざるを得ない人、物価高にあえぐ人など、支援を必要とする声を市政に届ける必要がある」と市長選への挑戦を決意。その後40回ほど開いてきたタウンミーティングでの市民の声などを元に「現役世代への福祉」を主眼に置く。全天候型の遊び場の設置、障害の有無に関わらず学ぶフルインクルーシブ教育の実現、横須賀芸術劇場の売却・譲渡などを掲げる。

 池上で生まれ育った。大学在学中は横須賀を離れたが、卒業を機に帰郷。学習塾や不登校支援を行うNPO法人、児童養護施設でのボランティアなどで様々な年代の子どもと接してきた。その中で「社会全体で子どもを育てていく必要性」を痛感。合わせて人口減に焦りを感じ市議を志し、2015年に当選した。

 以後10年間の活動の中では、子どもの問題だけでなく、認知症高齢者の家族の負担、保育園に入れない、シングルマザーの生活困窮、障害者の居住問題など、あらゆる世代の市民が抱える多様な生活課題に直面。これらの個別の声を行政につなげてきた。自身が注力してきた施策の課題解決に向け、今まで以上にスピード感を持って進めていく必要性を説く。

 現市政の8年間で市の人口減少が加速し、特に出生数が激減している現状に強い危機感を示す。観光やイベントに注力してきた市政に対し「市民の日常的な生活基盤の強化を最優先する姿勢が必要」と強調する。

 「6年半前、結婚をせずに子どもを産みました」-。6月4日に行われた討論会では有権者に向け開口一番にそう話した。子育て世代当事者としても目指すのは、子どもの視点を軸にした持続可能なまちづくりだ。

500人を集めた市政報告で支援を呼び掛けた上地氏

「全方位戦略」市政に安定感 上地克明氏(71)

 3選への出馬表明は年頭の記者会見だった。「海洋都市構想」実現の本丸ともいえる浦賀地区の再開発がようやく進み出したことに触れ、「しっかり見届けるのが私の使命」と続投の決意をにじませた。

 市長選挙を控えている年の予算編成は、具体的な施策に踏み込まず、大枠だけを決める「骨格予算」とするのが通例だが、細部にまで想いを込めた本格編成で覚悟を示した。

 横須賀復活の3構想として8年前に掲げた「海洋都市」「音楽・スポーツ・エンターテイメント都市」「谷戸再生」に基づく施策を着実に実行してきた。アーバンスポーツを積極的に受け入れ、空洞化する谷戸に芸術家を呼び込む「アーティスト村」や廃墟となっている旧市営住宅群を「なりわい住宅」のコンセプトで再生させる。その先進性は、市民の理解を超える部分も少なくないが、多くのメディア露出によって、横須賀の注目度を大きく高めた。支援者らを集めた報告会では、最近の地価上昇とも絡めて「三浦半島全体に良い流れが来ている」と発言。経済の果実を福祉に振り向ける好循環の創出に手応えを感じている。

 昨年の元日に発生した能登の地震被害を受けて、半島の災害脆弱性に危機意識を強くした。以降、公・民を問わず様々なケースを想定した防災協定を結んで有事に備える。大規模災害時に自治体の垣根は関係ないとし、先ごろ三浦半島の4市1町とNTT東日本で「災害に強い地域づくり」推進していくことを確認。通信対策や防災DXを強化していくことを発表した。このほか三浦半島で備蓄の一元管理の検討を始めることにも言及、強いリーダーシップを発揮している。

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上地市長に目録を手渡す苅部社長(左)

コメに熱い視線

 全国的な「米不足」と「価格高騰」が日本中を騒がせている。横須賀市内での動きをまとめた。

500キロ市に寄贈

 米穀等卸売業者の「ヨコショク」(日の出町3の9)の苅部一夫社長は6月5日、上地市長を訪れ、市に米500kgを寄贈したことを報告した。

「地域貢献のため食糧を配ろうと決めたタイミングで、ちょうど米不足の状況になった。必要としている人に届いてほしい」と苅部社長が説明した。上地市長は「大変な状況の中、貴重な米をいただいた。子どもたちにたくさん食べてほしい」と感謝の言葉を述べた。

 寄贈した米は秋田県産の「あきたこまち」で、契約農家から仕入れたもの。市を通じて市内の子ども食堂連絡会や児童養護施設などに配られた。

一人あたり2キロ相当になるという。

200袋即完売

 小泉進次郎農林水産大臣の掛け声で、備蓄米の入札が随意契約となって放出された品が市内のスーパーでも並んだ。

 若松町にある「スズキヤ横須賀店」では6月6日、備蓄米の販売を開始。定価2000円で国産ブレンド米5kg入りを200袋用意した。

 買い占めを防ぐため一人一袋の購入に制限する措置が取られたが、開店後すぐに売り切れた。黒木葵店長は「『いつ備蓄米は出るのか』と問い合わせがかなりあった。ようやく仕入れられた」と安どの表情を浮かべた。

 一方で、備蓄米の販売はこの日限り。次回の入荷は未定とした。購入した70代の女性は「近所でなかなか買えないため、持って帰るのが大変。近くで売ってほしい」と話した。

小澤さんとの別れに姿を見せた小泉純一郎元総理。静かな口調で弔辞を読み上げた

小澤一彦さんお別れ会 「偉大な経済人、経営者」

 横須賀商工会議所の名誉会頭で2月13日に87歳で亡くなった小澤一彦さんのお別れ会が6月9日、平成町の横須賀商工会議所で開かれた。地元政財界の関係者約1千人が参列し、横須賀の経済界で大きな功績を遺した名経営者をしのんだ。会場には綺麗な花祭壇が飾られ、穏やかな表情の写真とともに旭日中綬章の賞状などが展示された。

 小澤さんは1937年生まれ。61年に実父が営んでいた(株)横須賀国際観光ホテルに入社し、70年に自身で日本水産観光(株)を設立して鎌倉市内にホテルを開業。84年には市内大津で郊外型複合レストラン「おいしい広場」を展開するなどして地元経済の振興に寄与した。ご当地グルメの「よこすか海軍カレー」の立ち上げにも尽力した。

 まちづくり運動や社会奉仕活動にも精力的に取り組み、77年に日本青年会議所会頭、2007年に国際ロータリー理事に就任。全国に広い人脈を築いた。

 弔辞を読み上げた平松廣司同商議所会頭は、「横須賀の偉大な経済人、経営者」と称えて別れを惜しんだ。生前に発していた「わが人生を語らない」という言葉も紹介。自分を良く見せようとしたり、他人を批判したり、事実を曲げて伝えたりすることを戒める、小澤さんの人柄を象徴するものだとした。

 国政進出の後押しを受けたという小泉純一郎元総理も思い出を語った。「最初の選挙で落選したが、『一回くらいでくじけるな』と励ましてくれた。信頼すべき兄貴のような存在だった」と感謝の言葉を届けた。

かながわ信金 職員50人 街頭献血に協力

 かながわ信用金庫(片岡祐二理事長)は6月9日、職員が日本赤十字社の街頭献血に協力するキャンペーンを実施した。横須賀中央駅前の献血バスで市内の店舗に勤務する約50人が駆け付けて応じた=写真。

 全国の信用金庫では、信用金庫法が公布・施行された6月15日を「信用金庫の日」に定め、社会貢献活動に取り組んでいる。

 同金庫では、献血のほかに消費しきれない食品を集めて必要としている人たちに届ける「フードドライブ」の協力を全51店舗で呼びかけている。同月16日(月)まで受付。

小栗上野介像(ヴェルニー公園)

OGURIをあるく 〜小栗上野介をめぐる旅〜第50回 第一部最終回文・写真 藤野浩章

 小栗上野介を追ってきた本連載も、今回で第一部が終わる。

 横須賀製鉄所が着工するところまで来たが、それは嵐の序章に過ぎなかった。小栗にはもちろん製鉄所にも、激しく動く歴史の中でこの後、過酷な運命が待ち受けている。第二部は来年中頃から、その過程を丁寧に追っていきたい。再来年には大河ドラマ「逆賊の幕臣」が始まるから、その流れも踏まえていろいろな角度から小栗を知るきっかけを掲載するつもりだ。

 幕末と言えばもう1人、横須賀の偉人がいる。中島三郎助(さぶろうすけ)だ。ペリー来航時の活躍に加え、勝海舟、桂小五郎など幕末の英雄たちと数多く交流した人物で、最期は北の大地に散ってしまった。7月からは、ゆかりの地を訪ねたレポートを入れながら彼の生涯に迫っていく。

 元になるのは、大島昌宏が1995年に出した『北の海鳴り』。現在絶版のこの作品を電子書籍ではあるが復刊させ、中島の功績をずっと伝える一助になればと思う。

 彼は小栗の6歳年上。活躍した時代が同じで、作中に小栗も登場する。下級役人から海軍創設の立役者になった中島の視点も加えれば、幕末がより立体的に見えてくるだろう。小栗大河の予習としても最適かと思う。

 さて、現在ヴェルニー公園にある小栗の胸像。これは実は最初ドブ板通りの裏山の中腹にある諏(す)訪(わ)公園に設置されていた。戦前の金属供出で撤去され、後に臨海公園(現ヴェルニー公園)で復活したのだ。

 丘から移り、目の前に自ら手がけたドックを見る小栗。何か言いたげな姿は、私たちにどんなアドバイスを与えようとしているのだろうか。