旧東海道の歴史や浮世絵文化の拠点として区民や愛好家らに親しまれてきた「川崎・砂子の里資料館」が、今月の企画展(17日まで)を最後に休館することになった。館長の斎藤文夫さんは「これ以上運営することは体力的に限界」と述べる。今後は各地で出張展示など形を変えながら、ファンの要望や文化の普及に努めていきたいとしている。一方、地域からは休館を惜しむ声が聞かれる。
江戸風白壁となまこ壁、瓦屋根づくりの同資料館は、 元参議院議員の斎藤さんが 「埋もれてしまった東海道川崎宿の歴史にスポットを当てよう」と、徳川家康が東海道に宿駅を制定してから400年の節目にあたる2001年(平成13年) に自宅を改造して開設した。毎月テーマを変えながら主に、斎藤さんが所有する浮世絵を無料で公開し、現在は公益社団法人として運営している。
斎藤さんは屈指の浮世絵コレクターとして知られ、父親の代から所有するものを含めると、その数は約4000枚にのぼる。地元にゆかりのある作品では、初代歌川広重『東海道五拾三次之内 川崎 六郷渡舟』、三代目歌川豊国『大師河原詣』などを所有。また、葛飾北斎『琉球八景』をはじめとした名品や三代目歌川豊国『役者見立 東海道五十三駅』全図揃いで所有し、その道では「斎藤コレクション」として知られている。
同資料館には毎月平均で700人、多い時になると1000人が訪れ、外国人観光客の姿も見られるという。川崎南部の観光スポットとして定着し、その後の東海道かわさき宿交流館建設の起爆剤ともなった。
2020年には東京五輪・パラリンピックが開かれ、羽田空港に隣接する川崎に多くの人が訪問することが期待されている。日本の誇る浮世絵を常設する同資料館にも注目が寄せられ、斎藤さんも資料館を継続していきたい気持ちはあった。一方で斎藤さん自身88歳、妻の文子さんも85歳と高齢。作品目録のレポート作成や展示設営をこれまで同様、自前で行うには体力的に限界を感じていた。 また、年間1000万円ほどかかる運営費も夫妻の寄付金で賄っていたこともあり、今秋からの自宅改築を機に休館することを決めた。
今後は常設展示に関心を示す企業などと協議するとし、現在京急電鉄に寄託する方向で話し合いを進めているという。また、東海道かわさき宿交流館での定期的な展示を計画するほか、来年には東京都狛江市や平塚市、大磯町での所蔵品の出張展示を実施。3年後の横浜開港160年の際には横浜で『横浜絵』の大展覧会を企画しているという。斎藤さんは「現在の場所では休館となるが、これまでと違う形で浮世絵文化の普及に貢献していきたい」としている。
最後の企画展は「これぞ 日本の宝・珠玉の浮世絵名品展〜師宣・政信・春信から北斎、広重まで〜」と題し、17日(土)まで公開。開館時間は午前10時から午後5時。日曜日定休。問い合わせは、同資料館(044・222・0310)。
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