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泉区 コラム

公開日:2022.12.01

もじゃくん先生の「こどもたちの可能性を、未来に」
vol.5 「自己肯定感」

 「自分は馬鹿だ」「自分は何でできないんだ」「自分なんて・・・」。自分のことを責め、自分で自分を傷つけている子どもたちがたくさんいます。人と比べて自分は勉強ができない、いつも誰かを傷つけている気がする、友達をなかなかつくれない、と自分の力や性格を否定するだけでなく

 「自分はダメな人間なんだ」と人間性までも否定してしまう子がいるのです。

 かけはしの"まなべる居場所"に来ている子の中に、ぽつんと一人で下を向き、うつむいてしまっている子がいました。何かあったのかなと思って声をかけると、その子は「みんなの輪の中に入りたいんだけど、どう声をかけていいかわからない」と涙ながらに答えてくれました。私たちはその子の思いに身を寄せます。これまでの学校生活や様々な人間関係の中で、傷ついてきて、それを乗り越えようとしているように感じました。その子にどんなに優しい言葉をかけても、どんなに励ましても、その子の心に届けることは難しいです。

 時に私たち大人は無力です。その無力さを乗り越えることができるとしたら、それは「ただその子のそばにずっと居ること」でした。私は教員人生の中でもたくさんの無力さを感じながら子どもたちと懸命に向き合ってきましたが、その子のそばに居ることだけはできる。そしてその「一緒にいた時間」のたしかさと揺るぎなさだけは、時間が経っても互いの心に残り続けていきました。

 ある日、その子が自分から「仲間に入れて」と声をかけました。そのたった一つの声には、どれだけの勇気が必要だったか。そしてすぐに「いいよ」の声が返ってきて、ほっと笑顔になりました。今では自分から友達に声をかけて、思いっきり遊んでいます。先日、その子が私たちに言ってくれた言葉があります。「最近、今の自分が好きなんだよね」--ともに幸せを感じて、涙が出そうになりました。その子は、これからも自分のことを好きになっていくと確信しています。

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