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泉区 コラム

公開日:2023.03.23

もじゃくん先生の「こどもたちの可能性を、未来に」
vol.7 「葛藤」

 「かっとう」って何でしょうか。「このままでいい」「このままではだめだ」「学校に行きたい」「学校に行きたくない」「友達と関わりたくない」「友達と仲良くなりたい」――。そんな正反対のようでいて、実は正対して存在しているような互いに正直な思い。それが心の中で、ぶつかり合います。

 居場所に来ているある子は、とても意思の強い子で、自分の中でやりたいことはやる、やりたくないことはやらないとはっきりしています。友達同士でこの遊びにしよう、と話し合っても、自分はこれがやりたいんだと揺るぎません。その子は、それでも周りに同調することはありません。そんな時、多数の意見を大事にして、決まったことをやるボランティアさんもいれば、その子の思いもまたじっくりと聞いて寄り添うボランティアさんもいます。

 ある日、その子は学生ボランティアさんに過去の話をたくさん打ち明けてくれました。友達とのことで、自分がいけないってわかっているんだけどー。うまくできないー。友達の中に入りたいんだけどー。うまく入れないー。その子が話してくれた「かっとう」は、私たちの心に痛いほど伝わって、その子自身が戦っていることをあらためて思い知ると同時に、その「かっとう」をこれからもまるごと受け止めたいと思いました。

 その翌週のこと。その子は、カードゲームをしている人たちのところに興味をもちます。そして、ボランティアさんに「入れない」と話しました。入れてくれるよ、と励ますボランティアさんを「いい」と2回断って、ボランティアさんはその子の気持ちに寄り添います。すると、ボランティアさんを指でつんつんとして「やっぱり入りたい」と言いました。一緒に行こうよ、という励ましで勇気を出したその子は、自分の言葉で「やりたい。入れて」と伝えたのです。うれしそうな表情になって、友達と思い切り遊びました。「かっとう」って苦しいけれど、乗り越えたら気持ちがいいんだね。

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