地域の伝統を子らに継ぐ

　○…４年ぶりに行われる御霊神社例大祭。昨年は神事と神輿渡御を実施したが、担がずにトラックに載せ地域を回った。「来年は必ずやるから、今回はその準備」と皆のはやる気持ちを落ち着かせた。「お神輿の飾りつけにもいろいろ決まりごとがある。そういうことも疎かにせず次世代に引き継がないと伝統は残せない」ときっぱり。

　○…中田で生まれ育つ。「小さいころは田んぼと畑ばっかりでね。遊ぶと言っても小川でドジョウを捕まえたりね。テレビなんてまだ少なかった時代だから」と懐かしむ。「昔は生活の中に神社やお寺の行事が溶け込んでいたよ」と、例大祭や花祭り、年末年始のお囃子など、楽しかった思い出をあげる。

　○…大学卒業後、家業の自動車整備工場を父と一緒に営む。そのころ、地元の先輩から囃子を一緒にやらないかと誘われ、中田囃子保存会に。「会の昔の帳面を見ると祖父や曽祖父の名があってね。ちょっとうれしくなったよ」と笑う。今でも週に１、２回の稽古に参加し、太鼓や踊りを担当する。現在は小学１年生から90歳代まで50人ほどが所属。踊りや曲は今でも口伝えで教える。それは「伝統を残す」ための方法だという。

　○…「子どもたちに『中田の出身なんだ』と胸を張って言ってもらいたいんだ」。例大祭で引く山車を新調したことも子どもたちに誇りに思ってもらおうという一つ。先輩から受け継いできたことを次世代に届けたい。「中田地区はギスギスしてなくて、昔ながらのお隣さんとの付き合いがあるような街」と感じる。「そろそろ俺も次を見つけないとね」と笑い、健康法は「病院通いだよ」と親しみのある笑顔で答える。街の雰囲気と伝統を次世代に残したいと強く願う。