豊田ミニバスケットボールクラブ男子チームを全国大会でブロック3位に導いた 加藤 光一さん 市内在住 61歳
伸ばすのは背でなく個性
○…チーム平均身長は140cm台。小柄な体格をカバーしようと、猛練習で得た豊富な運動量を武器に挑んだ全国大会。だが、準決勝で持ち味のスタミナが切れて終盤に追いつかれ、再々延長戦の末敗れた。大会直前は行事が重なり、「敗因は練習不足。私のスケジュール調整がまずかった」。試合後は、「声をかけたら自分も泣いてしまいそうで」と、涙に暮れる選手達をただ見守るばかりだった。
○…教師になりすぐ、若いがゆえに同僚からコーチに誘われた。プレー経験はないが、「スポーツは大好き。充実した時間を過ごせる」。指導教本を読み漁り、経験者に話を聞くなど知識習得に励んだ。だがある時、マニュアル一辺倒の指導に疑問をもつ。「選手の体格や性格は年により様々。個性を伸ばす指導を考えたら、教本は意味がなくなった」。教師としての姿勢同様、積極的な交流で子ども達を理解することに力を入れた。
○…1月の県大会決勝は約35年の指導歴で特に印象深い一戦。残り4秒で追いつかれ、観客席から歓喜と悲鳴が沸き起こるなか、コートの端から端へ矢のようなパスが飛ぶ。すぐ自陣へ走った選手がこれを受け、試合終了のブザーと同時に放ったシュートがネットに吸い込まれた。「気持ちの切り替え、視野を広く」を言い続け、「遠投」も練習の定番だった。「修学旅行の引率時以外は毎日」という酒好きで、この試合中継のビデオを肴にした晩酌は「人生で最高に旨い酒だった」。
○…「達成感や充実感は勝ってこそ生まれる」。勝敗にこだわり、負ければ容赦なく名指しで叱ることもあるが、それも信頼関係に絶対の自信があるから。「3カ月一緒にいたら我が子同様」と、本当は子ども達のかわいさにメロメロだ。定年退職し、新任教諭を指導する立場となった今も続ける監督業。周囲から引き留めの声が多く、「自分なりに終わりを決めているけれど、計画どおりいくかな」。珍しく”弱気な表情”を見せた。