盲導犬を取り巻く環境(中) 人との共存楽しむ訓練
視覚障害者の目として行動する盲導犬に対して、「吠えなくなるような厳しい訓練をしているのでは」「動物虐待」などと批判的な声もある。しかし、(公財)日本盲導犬協会神奈川訓練センター=港北区=の高野秀一(しゅういち)センター長は「誤解されている部分が非常に多い」と訴える。
盲導犬を育成する同施設では、約60頭の訓練犬が暮らす。1頭ごとにデータを記録し、生後1歳からユーザーに渡すまでの約7カ月間、性格に応じた育成方針に従って訓練を行う。指示通りに動いたら「Good」と褒め教える基本訓練と、1日10〜30分の短時間でテーマを決めて実際に街中を歩く「タウンウォーク」の2種類がある。だが「訓練を積んでも盲導犬になれるのは適性がある3、4割」。試験をパスできなくても、街頭募金などのPR犬として活躍する犬もいるという。
訓練以外は犬舎の中で過ごす。24時間体制の管理下で、ストレスのない快適な生活が送れるよう配慮されている。高野センター長は「どちらの訓練も個性を把握し、褒めて伸ばすことを心掛けている。盲導犬の素質を持つ、人と一緒に仕事を楽しめる犬を世に送り出している」と話す。
しかし、10歳で引退を迎える盲導犬の育成には課題もある。運営資金は寄附がほとんどで、候補犬の数が希望するユーザーに追いつかないこともあるという。
盲導犬と暮らす市内在住のTさんは「家の中では普通の犬と何ら変わらない。胴輪(ハーネス)で切り替わる」と話す。同協会普及推進部の中村士(つかさ)さんは「ハーネスが仕事の合図」と話した上で「ユーザーが安全に歩くために、仕事に励む盲導犬を街で見かけてもむやみに声を掛けたりせず、温かく見守ってほしい」と理解を求める。
(つづく)
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