コラム「学校と社会をつなぎ直す」【12】 リモートで落ちる人の社会性 桐蔭学園理事長 溝上慎一
リモートが人々の仕事や生活を変えようとしている。しかしリモートが主になりすぎると人の社会性は落ちることを知っておかねばならない。
人は、同じ空間(場やコミュニティー)で行為(学習や生活行動)を共にする他者との関係性の中で社会性を発達させる。ある行為をすると他者から評価がフィードバックされ、それが人の社会性を育てるのである。適応的な社会性は自己肯定感はもちろんのこと、自己効力感をも育てる。人はある課題に取り組むとき、自分はそれをどの程度できてどの程度他者から評価されるかを暗黙のうちに知っており、課題に取り組もうとする瞬間にそれを予測する。これが自己効力感である。人のやる気を支える情報処理でもある。
このような社会的相互行為が本質的に求められないリモートは、職場ですでに構築された社会的関係をテレワークで補完する程度のことであるなら有意義だが、今から社会的関係を構築しようとする職場においては、結果としてテレワークの従事者を非正規に近い立場に追い込むことが十分に考えられる。他者との関係性の中で社会性を発達させながら学習し、大人へとなっていく子どもへの適用も副次的なものにしておいた方がいい。
しかし、ICT教育が世界で最下位と遅れている日本の学校教育を鑑みて、ICT教育を急ピッチで推進しなければならないという前回コラム【11】とは別の議論である。新年の動きを見守りたい。
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