三井杉田台自治会 実践形式で防災訓練 顔の見える関係構築重視

　１９２３年９月１日発生した関東大震災や、59年に当時戦後最大の被害をもたらした「伊勢湾台風」の上陸が９月だったことなどを踏まえ、翌60年に創設された９月１日の防災の日。区内でも様々な防災訓練が行われるが、その中でも三井杉田台自治会の実践的な訓練が注目されている。

　区内では防災の日を中心とした８月31日から９月７日までの期間だけで、自治会や地域連合など13会場での訓練が予定されている。

　９月７日に実施される洋光台連合自治町内会の訓練には約６００人、８月31日の磯子地区連合町内会と９月１日の岡村西部連合自治会の訓練には、各３５０人前後の住民が参加予定だ。

家族カードを活用

　各地域で様々な防災訓練が行われるが、その中でも三井杉田台自治会の取り組みが注目されている。

　同自治会には約４５０世帯、１３００人が加入している。防災面で最も重視しているのは、顔の見える関係づくり。30年ほど前から毎年、「防災家族カード」を集め、それを災害時の基本情報として活用している。

　加入世帯は、家族全員の性別や年齢、血液型、緊急連絡先のほか、寝たきりの人や車椅子利用者、乳幼児がいるといった状況も、このカードに記入して提出する。自治会では１枚の地図にこれらの要援護者情報をまとめ、役員が所有。災害時の支援に活用する。

カルタで近隣交流

　訓練時には、事前に防災豆知識の書かれた防災カルタを各世帯に５枚ずつ配布。開始冒頭30分間は住民がカルタを手に隣近所を訪問し、名刺のようにそれぞれの手札を交換する。

　自治会防災顧問の片山晋さんはこの訓練について「防災知識啓発のほか、交換時に隣近所の人との会話することで互いに顔の見える関係づくりができる。交換の際には、家族の人数や怪我人がいないかなどを聞くことになっていて、安否確認訓練にもなる」と話す。

　聞いた人は自宅分を含めた６世帯分の安否情報を１枚のカードに記入し、自身の地域の役員に提出。役員はトランシーバで本部へ報告することで、全世帯の安否を把握することができる。

全住民が担当者

　この訓練には顔の見える関係づくりのほか、災害時のリスク管理の面も含まれている。

　片山さんは「通常は役員などが担当地域を回って、各世帯の状況を確認することが多い。しかし災害時に役員が外出などで不在だった場合、その地域の情報が空白になってしまう。住民全員がそれぞれ安否確認を行う体制を作ることで、最短かつ確実に情報を収集できる」と説明する。

　そのほかにも、安否確認が済んだ家の玄関には確認済みを知らせる完了板を掛けることや、自宅で火災がなければ所有する消化器を玄関前に置くといったルールを決め、実施している。地域内で火災が発生した場合、探し回ることなく消火器を見つけることができ、素早い消火活動が可能となる。スローガンである「地域内から犠牲者を出さない、地域全体の全焼はさせない」に取り組む。

内容事前に知らせず

　訓練時には、事前に内容を知らせない不意打ち訓練も実施される。

　本部から突然「Ａブロックで火災発生。Ｂさん、Ｃさんは消火器を持って現場へ。Ｄさんは車椅子のＥさんを本部まで連れてくる」といった指示が出され、それぞれの指定された住民が対応に当たる。

　内容は毎回異なっており、より実践的な訓練となっている。