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港南区・栄区 トップニュース社会

公開日:2011.09.15

農家数減少
課題は安定収入
行政は農地の魅力向上に意欲

 横浜市は8月、農林水産省が5年ごとに実施している調査「世界農林業センサス」の2010年版をもとに市内の農業の状況を発表。全市で農家数の減少が続くなか、港南区でも同様の傾向が見られることが明らかとなった。



 この調査結果によると、市内の農家数は平成12年の4693件に対して22年には4202件、同じく区内では106件に対して90件となっており、ともに約1割減少している。



 また、経営耕地面積で比較してみると、区内では5年前の調査時より農家件数は5件減少する一方、面積は3350aから3564aに増加していた。調査をまとめた同省によると、この傾向は全国的にみられるもので、要因には高齢化などで廃業した農家の土地を有効活用し、経営規模の拡大を目指す農家がいることなどが考えられるという。



 一方、経営耕地面積が30a以下あるいは年間の農産物販売金額が50万円以下の「自給的農家」は全体の約45%で、市平均とほぼ同水準だった。



不安定な収入



 JA横浜野庭農産物直売所の代表を務める一澤正之(ただゆき)さんは、野庭町で代々農業を営む専業農家。中学卒業後から55年間にわたって農業に携わり、トマトや白菜、梨、柿など年間を通じた季節ごとの野菜や果物に加え、米作りも手がけている。



 「昔は辺り一面、田や畑ばかりだった」という現在の港南区は、昭和40年代の宅地開発で農地が大幅に減少。一方、一澤さんの田畑がある地域は都市農業の確立などを目的に市が定める農業専用地区にあたるため、周辺の農家数に大きな変化はないという。だが、市の制度により農地は守られているとはいえ、その現状は厳しい。野菜や果物の販売価格は「昔からほぼ変わらない」のに対して肥料や種の必要経費は上がるばかりで、早朝から日没までほぼ無休の過酷な労働でも人を雇う余裕はない。一澤さんは収入面の不安から周囲でも兼業農家として働く若手が増えていると話し、「専業では収入が安定せず、副収入に頼らざるを得ない状況が続くようならば後継者不足が心配」ともらす。



行政もバックアップ



 減少し続ける農家に歯止めをかけようと、行政による取り組みも盛んだ。市環境創造局は身近な緑の保全・創造を行う「横浜みどりアップ計画」の項目に農地の保全を盛り込み、水田の保全対策などに尽力。



 また、区もふるさと意識の醸成や自然環境保全を目的にすすめる「みんなでつくるふるさと港南事業」の一環として、野庭農業専用地区で区内の保育園児に農耕作体験をしてもらうなど、農地の魅力向上に励む。また、地産地消を推進しようと、広報よこはま港南区版には5月より区内の農家と旬な農産物を紹介するコーナーを設置。毎回、その反響は大きいという。区担当者は「農家の方の生産意欲向上にもつながれば」と、今後の活動にも意欲的だ。

 

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