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公開日:2025.07.25

大山先導師旅館
需要創出へ新たな挑戦
狙いは多拠点居住者

  • 築100年超の宿坊いわ江

 伊勢原市大山地区の先導師旅館(宿坊)、「宿坊いわ江」で、今新たな試みが始まっている。建物の老朽化やスタッフの高齢化、後継者問題など旅館が抱えている課題解決に向け、定額制の多拠点居住プラットホームを運営する(株)アドレス(本社/東京都)と連携し、同社に登録するノマドワーカー(時間や場所に縛られずに働く人)らを受け入れている。

 大山の麓には、同じ職種の職人同士の組織である「大山講」の名前が彫られた玉垣に囲まれた建物が、道沿いに多く建てられている。これらは、大山詣りの際に大山講中が宿泊した旅館。先導師はかつて御師と呼ばれ、徳川家康による大山山内改革によって追放された修験者たちが大山信仰の布教や講の世話を行った。宿坊は先導師旅館とも呼ばれ、一般的な宿と異なり、宿坊ごとに大山阿夫利神社を分霊した社が置かれていることが特徴だ。

 築100年以上の由緒ある宿坊いわ江は、建物の老朽化や後継者問題に加え、平日の宿泊客の稼働率を上げることに苦慮していた矢先、大山での同社のイベントを通じて活動に賛同。今年3月から、定員2人の個室一部屋を同社の利用者向けに提供し始めた。

 同社は地方自治体などと連携し、全国の空き家・空き室などを利活用している。空き家を管理する「家守」が必要で、地元に縁がない利用者に地方の暮らしを体験できる機会を提供。伊勢原ではいわ江が初の拠点となった。

 同館は講など団体客のほか、一人客向けに部屋を改築していたこともあり、参加することができた。また部屋の提供には、ノマドワーカー向けに、Wi―Fiの整備などパソコン環境の整備は必須で、個室の用意などさまざまな条件があるため「全ての宿坊で参加するのは難しい面もあるのでは」と同館。

後継者問題の解決に道筋

 大山の先導師旅館28軒と先導師12人が加入する先導師会旅館組合や同社、市観光協会らの協力で昨年度「2200年歴史ある大山詣り阿夫利神社門前町活性化」調査事業を実施。組合に加盟する宿坊らにアンケートを行った結果、課題のトップ3が「建物の老朽化」「後継者問題」「スタッフの高齢化」であったことなど、現在抱えている問題が明らかになった。さらに実態を把握するための調査では、旅行スタイルの変化に伴い、団体客の利用減や人出不足などさまざまな課題も浮き彫りになった。

 先導師会旅館組合の内海博文組合長は、多拠点居住について「高齢化や後継者問題などを抱える先導師旅館の新たな形の一つになるのでは。組合としてもできることは協力していきたい。ただ、防犯面や旅館の構造上など難しい面もある」と話す。同館によれば先導師旅館は、歴史的な建物や宗教色の強い雰囲気が評判で、これまで都内などから15組ほどが利用。50代を中心に30代の利用もあった。中には伊勢原市内在住者もいて「平日の稼働率が増えた。引き続き今のペースでやっていけたら」と期待を寄せる。

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