「半原水源地の今後を考える会」の発起人代表を務める 井上 愛司さん 愛川町半原在住 86歳
水源地に思い馳せて
○…近代水道の歴史を伝える「横須賀水道半原水源地」。旧海軍の軍港に使われていたことから、終戦後は横須賀市に引き継がれた。現在は役目を終え、昨年2月に用途廃止された。この水源地を「愛川町のものに」と、5人の有志が集い「半原水源地の今後を考える会」を発足させた。「できれば無償での返還をお願いしたい。交渉のなかで費用などの条件が出てくるかも知れないが、まずは話合いをスタートさせることが第一歩」と、言葉に力を込める。
○…町民を交えて初開催した会合では、貴重な歴史資料として保存する声や、観光地として活用する案など活発な意見があがった。2月22日には「無償返還」と「資源としての活用」を求める要望書を小野澤豊町長へ提出した。今後は水源地の存在を知ってもらうための周知活動などにも取り組む予定だ。「旧飛行場が今では内陸工業団地になるなど、先例はある。のんびりしていては進まないし、焦ってもいけない」と、着実に歩みを進める。
○…自宅と水源地は指呼の間。水源地の工事には地元の住民も協力し、石工だった父も尽力したという。亡き父の面影を感じるだけでなく、子どもの頃は水源地が遊び場でもあった。「よく近所の先輩たちと水源地の池で泳いだよ。楽しかった」と目を細める。やがて水道法が制定され立ち入りができなくなったが、自身の幼い頃の思い出は、今もはっきりと心に残っている。父は農家でもあり、母と姉は繊維業と、一家総出で働いた。「今のように豊かな時代じゃなかったからね」と、当時の苦労話も快活に笑い飛ばす。
○…夫人との2人暮らしだが、毎月娘夫婦と孫が遊びに来るのが楽しみの一つ。孫は3月に大学を卒業し、大学院への進学が決まっている。「お祝いをしなくちゃね」と満面の笑み。「小さいけれど」と謙遜するが、畑仕事で体を動かすのが健康の秘訣だ。