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公開日:2025.12.19

白旗在住高島さん
自転車の旅で5大陸走破
地球駆け抜けた72歳の「鉄人」

  • オーストラリアの広大な大地で見つけた木陰で手作りのサンドイッチを頬ばる高島さん(本人提供)

 できないことはない――。その言葉を体現したのが、白旗在住の高島実さん(72)。定年退職後に本格的に始めた海外を巡る自転車の旅は今月6日、オーストラリア大陸の縦断をもって世界5大陸走破を果たした。52カ国を駆け抜けた総走行距離は約5万3千Km。金字塔を打ち立てた高島さんは「一日一日少しずつ、とうとうやり遂げた」と達成感に満ちた表情で語る。

荒野のサバイバル

 旅の集大成となったのが、同国北部のケアンズを出発し、南部のメルボルンへと到着する3635Kmの挑戦だった。

 実際に走ってみると、都市間の距離は長く、人の気配が途絶える「孤独の道」。小麦やサトウキビ畑、ユーカリの木、牛、羊など単調で変化のない大地が続く。100Kmの区間、ペダルをひたすら漕ぎ続けたこともあった。

 朝晩の気温差が激しく、日中は灼熱の熱風に肌を焼かれ、夜は寒さに震えた。強烈な日差しに肌はガサガサに荒れ、時には胃腸炎に見舞われながらも前へ進んだ。

 追い打ちをかけたのが同国特有の猛威だった。空からは「マグパイ」と呼ばれる鳥が体をつつき、顔の周りには大量のハエがまとわりつき、ネットを被っての走行を余儀なくされた。キャンプ場ではアリの大群に手足を噛まれるなど、自然の厳しさと正面から向き合うサバイバルだった。

人情がつなぐ道

 過酷な旅路で、高島さんの心身を支えたのは、現地の人たちが差し伸べる温かい手だった。

 物価の高い同国では、毎日テント泊と自炊で旅費を切り詰めていた。ただ、行く先々で出会う人は高島さんの偉大な挑戦に興味津々なようで、惜しみないホスピタリティーも提供した。見知らぬ人から掛けられる応援の声、時には宿泊先の部屋を提供してくれたり、温かい食事をご馳走してくれたり、ビールや果物を差し入れてくれたり。異国の地で出会った人の心遣いが孤独な旅の疲れた心を癒やし、再び立ち上がる力となった。

やればできる

 元外資系企業の社員として海外を訪れる機会も多く、異文化に関心のあった高島さん。ジョギングや登山の経験もあったが、「もっとスピード感を味わいたい」と自転車の旅を選んだ。還暦を迎えた誕生日の翌日に、ユーラシア大陸へ。26カ国、1万9706Kmの横断に成功した。

 これで自信がつき、その後も南米、アフリカ、北米、そしてオーストラリアを走破した。

 昨年の暮れ、高島さんは孫の学童野球に付き添っていた際、土手で足を滑らせて右肘と右足を骨折した。それでも「体が動く限り旅がしたい」とジムでの筋力トレーニングやウォーキングなど70歳を超えた体に鞭を打ち続け、オーストラリア縦断という計画を現実のものとした。

 高島さんが初めて自転車の旅に挑んだ時は、世界5大陸走破は夢だった。しかし10年以上の歳月をかけ、地球一周を優に超える距離を自らの脚力のみで走り抜いた。

次なる挑戦

 偉業を成し遂げた高島さんは「年齢と共にもう体も弱ってきている」と言いつつも、「意外と日本を回っていない。灯台下暗し。今度はバイクで行きたい」と早速、中古のバイクを購入した。

 世界を駆け抜いた「鉄人」の冒険は、原点回帰のごとく故郷へと目を向け、気ままに、自由にこれからも続いていく。

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