愛川ウインドオーケストラの指揮を務める 須藤 憲夫さん 厚木市下荻野在住
調和の喜びを皆に
○…3月に行われる定期演奏会を目前に控え、練習にも一層熱がこもる。今回は星や宇宙を感じる曲がテーマだが、一番聞いてほしい曲はフィリップスパークの難曲。最初は奏者たちから「こんな曲はできない」と言われたほどだが、徐々に努力を積み重ね、完成度も上がってきた。「本番を楽しみにしていてください」と、笑顔に自信が漲る。
○…愛川ウインドオーケストラには創設当初から携わってきた。最初はトランペット奏者として加わったが、クラシックやジャズ、ポップスにも明るく、指導役を買って出るうちに自然と皆の前でタクトを振るうようになったという。「いつの間にか」で始めたが、指揮役は既に20年を超える。オーケストラの歩みを見つめ続け、「本当にレベルアップしてきた。ポップスの曲は凄くノリが良い」と目を細める。
○…生まれは新潟県。中学2年で吹奏楽を始め、3年の時にトランペットと運命の出会い。皆で一つの曲を創る調和の喜びに魅せられ、吹奏楽部のレベルが高いことで知られる神奈川大学に入学した。卒業後はトランぺッターとして、横浜を中心にナイトクラブなどで観客を震わせた。当時の横浜には音楽の需要が溢れ、多くのプロが集った。乾いた砂が水を吸うように、洗練された音楽を学び、吸収した。「あの時の経験が今の指導に活きている」と振り返る。生活の安定を求めて会社員になり、愛川町に移り住んで半原に長く暮らした。「オーケストラの練習があるからあまり離れるわけにもいかない」と、下荻野に今の自宅を構えた。二階には専用の音楽室があり、週末は練習に励む。「教える側にも、演奏できる自信がないとね」と笑う。
○…2人の娘は嫁ぎ、自宅では夫人と二人暮らし。長女は音大を卒業し、今はピアノ教室を開いて音楽の楽しさを子どもたちに伝える。2人の孫もピアノを習っており、旋律を愛する心は脈々と受け継がれる。