黄金の稲穂が収穫されるこの時期、町内唯一の酒蔵である大矢孝酒造で新酒の仕込みが始まった。10月15日には、日本酒造りの第一歩である洗米が行われた。来年の3月末まで、職人たちの真剣勝負が続く。
大規模な水害をもたらした台風や記録的な猛暑など、異常な天候が続いた今年の夏。日本酒の材料である米にも大きく影響した。「高温で米の粒が硬くなったり、割れやすくなったりすることがあります。水の吸い込み加減も変わることが予想されます」と、8代目蔵元の大矢俊介さんは語る。
同酒蔵では、徳島県の山田錦、山形県の出羽燦々など9種類の米を使い分ける。玄米で1000俵、白米に換算すると約36000kgの米を使い、1升瓶5万本の酒を仕込む。水の吸わせ加減、蒸し方、麹の量など、全ては職人の技で決まる。「麹の調整は全体量の0・1%単位で増減させます。米をどう使うかが腕の見せ所ですよ」と大矢さん。自然を相手にする職人にとって「条件が毎年違う」のは、むしろ当然の事なのだろう。
仕込み初日は、酒造りの要となる麹の原料として40kgを洗米。愛川の誇りともいうべき良質な地下水を使用し、丁寧に洗い、水を吸わせた。沈む米粒の色合いからタイミングを見極め、次々と水から引き上げていった。ピークには1日500kgを洗うという。
蒸米、製麹、もろみと作業は続き、新酒の初しぼりは11月中旬。五穀豊穣に感謝する「新嘗祭」にあたる11月23日(金)に、新酒の販売が始まる。
郷土の酒として親しまれる同蔵の「残草蓬莱」。毎年変わらぬ美味さの陰には、職人たちの技と、良い酒への想いがある。
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