みかん栽培を中心とした市内沼代の農園「あきさわ園」(秋澤史隆代表)で、9月から加工場の新築工事が進められている。参加しているのは、地域住民や大学生、フリースクールに通う小中学生ら。作業を通じて目指すのは、小さな集落などで住民同士が互いに助け合う制度「結(ゆい)」の現代版だ。
収穫した果実でジャムなどを製造する加工場。市内には十分な施設がなく、これまでは地元で収穫した柑橘類も加工は県外に頼らざるを得なかった。こうした状況を受け、「せっかく小田原は地域資源が豊富なのに、10tトラックで遠くまで運搬するのは非効率的。排気ガスによる環境負荷も大きい」と、秋澤代表は5年程前から自前の加工場建設を検討してきた。
作業通じて仲間に
学生時代にアジアや南米などを巡り、各国の農業を視察した経験をもつ秋澤代表。日本らしさを見つめ直す機会ともなり、以来、互いに仲良くして調和する大切さを説いた「和を以って貴しとなす」との理念を大事にしてきた。
今回の工事もそう。思いを同じくする人をつなげようと、作業の参加者は一般公募。調湿性に優れ、みかんの貯蔵庫にも用いられる格子状に編んだ竹を下地とした土壁の伝統工法「竹小舞」に老若男女が取り組む。
設計を手掛けた建築士の日高保さんが、「いつの間にか仲間になるのがおもしろい」と語るように、作業を通じて見知らぬ同士の距離感が次第に縮まるのも醍醐味。昼時ともなれば、作業場には皆で肩を寄せ合い食事を楽しむ光景が広がる。こうした新たな人間関係の構築も、秋澤代表の狙いのひとつだ。
目的は農家の活性化
後継者不在で農地が荒れる状況を憂える秋澤代表は、「柑橘類など生産地としての小田原の魅力を継続するためにも、地域全体で盛り上がっていかないといけない」。来春完成予定の加工場は、商品開発のランドマーク的存在として地域の農家らとシェアする方針という。