知的障害者の職業体験を3年前から受け入れ、現在までに7人を採用するなど昨年から積極的な障害者雇用にも乗り出した栄和産業(吉岡東4の15の5/伊藤正貴代表取締役)。障害のあるなしに関わらず誰もが働ける職場環境の構築を目指すとともに、障害者雇用の法定義務を満たさない企業に協力を呼びかけている。
「この仕事はとても自分に合っていると思う。できることが増え、難しい仕事を任されることで溶接の腕も上がる。自信につながりました」と話すのは、入社2年目の20歳の男性。養護学校時代に栄和産業での職業体験を経て、自ら希望し入社した。
栄和産業は、バスや重機などの金属パーツ加工を行っている。昔ながらの板金工法で手作りのものも多く、中には設計図のない特注のカスタムパーツ製造など熟練の職人技が必要となる仕事も少なくない。
こうした状況から当初、「障害者雇用は無理だという先入観があった」と伊藤社長は話す。チームワークを必要とするため、コミュニケーションへの不安も抱いていたためだった。
価値観が覆ったのは、2014年に参加した企業と学校の交流会。ここで養護学校の教諭と名刺交換をしたのを機に、職業体験の受け入れが始まった。
「いざ受け入れて仕事を教えたら、障害がない人たちとほぼ同じように仕事ができたんです。この時に知ったのが、障害がある人の製造工場での受け入れ先はあまりないという実情。企業側の課題だと感じました」と、伊藤社長は話す。
必要なのは企業の理解と努力
同社では現在、県央・湘南など6つの養護学校から実習生の受け入れを行っている。雇用に関しても、一般の社員と同様の作業ができる場合は正社員として採用し、重度判定の知的障害等で長時間勤務が難しい場合は時短契約など働き方を工夫。同社がイベント等で配布するポケットティッシュのチラシ差し込みなど軽作業を割り振ることで仕事を生み出している。
「障害がある方々も労働意欲があり、働いて納税者になりたいと思っている。企業側がどう計画し、事業計画までもっていくかが肝要だとやってみて初めてわかりました。この取り組みが他にも広がり、当たり前に働ける環境が整っていけば」と思いを語った。