足柄版 掲載号:2016年4月30日号

田中丘隅(きゅうぐ)の文命堤を訪ねて 文化

大口(おおくち)土手(東堤(とうてい))と岩流瀬(がらせ)土手(西堤(せいてい))を散策

【1】大口広場(文命堤)
【1】大口広場(文命堤)
 「大口の祭りには草競馬があった」「下(しも)の方から来る人には必ず石を持ってきてもらった。水を防ぐためだった」「大きな祭りといえば5月5日の大口のお祭、7月末の松田寒田神社のお祭、11月3日の山北の室生さんのお祭」-。いずれも開成町の民俗調査報告書『太郎君の百年』に記録された明治、大正生まれの住民の話だ―。

 290年前の1726(享保11)年5月、幕府奉行の田中丘隅らが酒匂川堤防の改修工事完成を記念して、大口土手と岩流瀬土手に中国の治水神「禹王」を祭る「文命社」を創建した。

 大口土手(南足柄市斑目)を「文命東堤」、岩流瀬土手(山北町岸)を「文命西堤」と名付け、儒学者・荻生徂徠が推敲した石碑を東西両堤に建立した。この年に始まった祭礼では石の持参を庶民に求め、土手上に石を埋めて踏み固め、残った石を積み上げて保管していた。この風習は昭和30年代まで続き、新大口橋近くにその名残がある。

 1726年に幕府は大口と岩流瀬に計120両を下賜し、禹王を敬い、土手を長く大切にするよう促した。こうして始まった祭礼は、明治維新や太平洋戦争でも途絶えることなく、今なお、大口と岩流瀬の地元地域で受け継がれている。

富士山の大噴火

 2007年に「足柄歴史新聞富士山と酒匂川」を刊行した足柄の歴史発見クラブの初代会長で禹王研究家でもある開成町の大脇良夫さん(75)の案内で南足柄と山北の境にある文命堤を歩いた。

 酒匂川の治水事業は、1609(慶長14)年に小田原藩主の大久保忠世(ただよ)・忠隣(ただちか)親子が2代にわたり完成させた治水工事が原型となっている。この治水で足柄平野の新田開発が進み川の流れも現在のものとなった。

 治水工事では上流からの流れを変えるため右岸に「春日森土手」を築き、左岸の岩「釜淵」で流れを受け止め、さらにその先に「岩流瀬土手」を築き右岸の千貫岩へ誘導し、右岸に「大口土手」を築いた。これにより福沢、金井島への水の浸入を防いだ。大脇さんはこの「2岩3堤の構造」を高く評価している。

 1707(宝永4)年12月に富士山が噴火すると火山灰で川底が押し上げられ洪水が多発。岩流瀬土手と大口土手が切れ15年ほど土手のない状態が続いた。

 この被災を受けて1725(享保10)年に幕府は田中丘隅に足柄平野の復興を託した。丘隅は翌年5月に上流の岩流瀬土手と大口土手を修復し、治水神の禹王をまつる文命社を創建、例祭を開催した。大脇さんは「雨季に入る前に禹王に手を合わせ、地域の結束を高めることで洪水への備えとしたのでは」と分析する。

散策コース

 小田原市富士道橋から南足柄市大口河川敷グラウンドまでの酒匂川右岸には約9キロの「酒匂川サイクリングコース」がある。グラウンドから新大口橋へ文命堤が伸び、大口広場として親しまれている。

 開成町の住民が証言した通り、班目の大口河川敷グラウンドはかつて競馬場で5月5日の競馬を地域全体が楽しみに農作業に励んでいた。こうしたかつての地域文化は文明の進化や交通網、水防技術の発展で見落とされがちだが、時折その息吹を感じて散策してみてはいかがだろうか。

5日(祝)に祭り

 5月5日(祝)には、福澤神社(山口冨男総代代表)で祭礼や子ども相撲、大口広場には草木などの露店が百店以上並び賑わいをみせる。文命西堤碑前でも岸連合会(石田進二会長)が神事を執り行う。いずれも午前10時から。

※参考文献/『足柄歴史新聞・富士山と酒匂川』、『昔を語る座談会・太郎君の百年』、※取材協力/大脇良夫氏、古民家ガーデン紋蔵・志沢晴彦氏―。

【2】文命東堤碑の碑文を解説する大脇さん =福澤神社
【2】文命東堤碑の碑文を解説する大脇さん =福澤神社

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