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港北区 社会

公開日:2025.06.26

「横浜が見た戦争」演じる
生きている大切さ伝える

  • 「横浜ローザ」上演に向けて稽古する五大さん

 「横浜から発信を!」を掲げ、横浜を題材にした作品を演じる「横浜夢座」は、今年1年を通して「横浜夢座 戦後80年平和祈念三部作」を上演している。座長は港北区在住の五大路子さん。五大さんは、「戦争はいけないもの。生きていることの大切さを伝えたい」と力強く語る。

 第一弾は5月17日に行われた「奇跡の歌姫『渡辺はま子』」。昭和の歌手・渡辺はま子さんが「モンテンルパの夜は更けて」という曲を通して、戦後フィリピンに捕虜として取り残されたBC級戦犯108人を救う実話だ。五大さんは、生涯横浜で過ごした渡辺はま子さんのことを調べるうちに、戦争に行き着いた。舞台を作るため、モンテンルパ刑務所に収監された元日本兵の戦犯とその家族による「モンテンルパの会」に対面や文通で取材。五大さんは、「戦後、日本は繁栄に向かう一方、『お前がやったんだ』と指さされ、死刑宣告されて独房で待っている人たちがいたことに驚いた」と話す。戦犯死刑囚のひとりで、同曲の作詞を手掛けた代田銀太郎さんからの、「もうすぐ俺らはいなくなる。でもあなたは、横浜夢座は、このことを語り伝えてくれますよね」という言葉を胸に、演じ続けている。

 第二弾は7月4日(金)から8日(火)に上演される「横浜ローザ」。第二次世界大戦後、横浜の街角で娼婦として生きた”メリーさん”がモデルになっている。メリーさんが通ったであろう化粧品店やクリーニング店などを訪れて取材し、足跡を辿った。どんな生活を送ったのか、なぜ白塗りなのか等、謎を解いた先にあったのが”戦争”だったという。伊勢崎町に米軍の飛行場があり、米兵が出てくる場所に女性たちが立っていたことを知る。「死者数などの記録は残っているが、その後この街の人たちがどう生きたのかは、彼女と出会って調べるうちにわかった」と話す。「見えていなかったものが見えて身震いするようなものを感じた」。自分自身が見たもの、感じたことを舞台で表現している。

 第三弾は9月に予定している「真昼の夕焼け」。同作品は、15歳の時に横浜大空襲に遭った筧槇二さんの実話が元になっている。爆撃機から投下される焼夷弾から命懸けで逃げる少年らの様子を、言葉と音楽で描く朗読劇で、市内小中学校、高校でも演じられている。学校公演は鴨居中(緑区)で始まってから約10年となり、作品を鑑賞した子どもの人数は今秋あたりに1万人を達成するという。五大さんは、「戦争を知らない子どもたちだが、語ったことが心に残り広がっていく」と口にする。

 「横浜が体験した戦争を、そして、そこに生きた人々の命を、今を生きている人たちに発信していきたい」

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