都筑スポーツセンターに勤める岡本景虎さん(専大クラブ所属・23)が5月23日から26日まで、東京体育館で開催された「明治杯全日本選抜レスリング選手権大会」で、プレーオフの末、初めての世界選手権代表の座を射止めた。
世界選手権代表の座がかかる明治杯。昨年12月の天皇杯で優勝している岡本さんは、勝てば自動的に、負けても明治杯優勝者とのプレーオフで勝利すれば世界選手権の代表に選ばれる。
しかし男子グレコローマン55kg級の岡本さんは、いきなり1回戦で敗れてしまう。「相手に技を研究され、思うような展開に持ち込めなかった」(岡本さん)。さらに前半の途中で頸椎を捻挫するアクシデントに見舞われ、点を取り合う接戦の末、1ポイント差で敗れてしまった。
まさに全集中
まさかの1回戦負けで「気持ちが切り替えられなかった」という岡本さん。試合中は興奮していたことで動いていた首は、試合後全く動かなくなってしまう。岡本さんは以前にも首を傷めており、次に大けがをすると下半身不随、最悪「死」の恐怖もあり、棄権の選択も過(よぎ)ったという。
一方で、「1回戦負け」は、悪いことばかりではなかった。プレーオフまでに時間ができ、気持ちはもちろん疲労回復や治療に充てられるなどプラスの側面もあった。
岡本さんはコーチのアドバイスを受け、気持ちを切り替えるため、シャワーを浴び、会場を出て食事をし、友人や家族と会い、気持ちを高めていった。首は痛み止めを飲み、テーピングで「呼吸も満足にできないほど」ガチガチに固めた。
プレーオフ出場を決断したのは試合開始1時間前。「相手のことは考えずに、自分ができる事をやるだけ」と考えると逆に冷静になれたという。
相手はこの日の優勝者。手負いの体には厳しい相手だったが、「集中していて、ゾーンに入っていた」と話すように、息切れも疲労も痛みもなかったという。結果は7対0の圧勝。自らの力で世界選手権を勝ち取った。試合後は「出場を決めた喜びと勝てた安心感」で、喜びで顔をくしゃくしゃにした。
度肝抜きたい
世界選手権は10月28日からアルバニアで開催される。今年はパリ五輪があるため、非五輪階級のみの大会となる。「優勝しか目指していない」という岡本さん。同じ階級には、憧れの選手で、ともに世界選手権優勝経験者のエルダニズ・アジズリ選手(アゼルバイジャン)とヌグザリ・ツルツミア選手(ジョージア)がいる。「ようやく対戦できるところまできた。できる事なら1回戦で対戦して、勝って度肝を抜きたい」と不敵な笑みを浮かべた。
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