特別講演会を行った横浜薬科大学学長 江崎 玲於奈さん ノーベル物理学賞受賞者 88歳
自分が運命を決める
○…米寿を記念し建てられた「LeoEsaki記念ホール」の竣工に伴い、行われた特別講演会。そうそうたる経歴を持ちながらも、気さくな笑顔とユーモアで時折会場を沸かせた。語られたのはこれまでの歩みと、「何をすべきか」を問う若者へのメッセージだ。
○…大阪府で生まれた。多感な青春期はまさに戦争一色。日中戦争、真珠湾攻撃、そして20歳で敗戦を経験。死と破壊が常に隣り合わせの環境の中で生きてきたからこそ「確実な根拠に基づくもの、人間の可能性を限りなく拡大してきたサイエンスにこそ価値があると思った」と振り返る。東京帝国大学を卒業後、神戸工業(株)(現・富士通テン)を経て、東京通信工業(株)(現・ソニー)で半導体の研究に没頭。1957年、個体におけるトンネル効果の観測に初めて成功。「エサキダイオード」を生み出し、73年にノーベル物理学賞を受賞した。「サプライズ」と表現する発見の裏には、「誰もやらなかったことをやろう」という強い信念に基づくひたむきな研究生活があった。
○…2000年には政府による教育改革国民会議の座長に就任。学校教育体制の再構築をはじめ、豊かな人間性を育てるための提言をまとめた。今必要なのは「世界的に活躍できるリーダー」だと強調する。「現代は決まったルールがない、いい時代。選択の自由があり、チャレンジができる」。言葉の背景には自身の青春期がある。「才能を最大限に生かすことは幸福感に満たされること。それは日本中がハッピーになることでもある。自分で運命を決めて、シナリオを作っていかなければ」。学生たちには「”平均寿命100歳”は21世紀中の挑戦。薬剤師として貢献してほしい」と期待を込める。
○…大の鉄道模型ファン。そこには幼少期の思い出や郷愁が込められている。「引っ越さないといけないくらい多い。数百種類あるかな」と笑う。世界の物理学者が少年に戻る瞬間だ。
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