災害時に避難所へ無償で新しい畳を届ける、畳店によるプロジェクト「5日で5000枚の約束」が全国で広がり続けている。参加店数は304にまで増えた。神奈川県からは9店が協力。領家にある「森下和装工業株式会社」もその一つだ。
5年前に発生した東日本大震災がきっかけとなり、2013年の春に始まったこのプロジェクト。発起人は21年前、阪神・淡路大震災で被災した前田畳製作所(神戸市)の前田敏康代表らだ。地元の畳店に声をかけ、その賛同者がさらにまた別の店へ声をかけ――と、思いを同じくする畳店のネットワークは広まり、次第に全国へと広がっていった。
神奈川県内にもその声が届いた。プロジェクトのことを聞き、「とにかく二つ返事で引き受けた」と話すのは、森下和装工業(株)の森下正勝代表。その理由は至ってシンプルで「人助けは当たり前だから」と。1943年、戦前生まれの森下代表は「昔から困っている人がいたら周りの人が助ける。それをこの目で見てきたし、体験してきた。災害時に限らず、日々の小さな助け合いが大切だ」と熱を込めて語る。
自治体と協定も
災害が起きた場合は、事務局が被災自治体に連絡をとり、現地の状況に応じて必要な量を近隣地域の店へ製作・搬送を要請する仕組みとなっている。支援活動を円滑に進めるため、全国各地の自治体と防災協定を結び、防災訓練などにも参加しているという。
神奈川県内では今月16日に厚木市、続いて30日には平塚市との協定締結が決まっている。横浜市にも現在、打診中だという。
参加店によって協力できる畳の枚数は異なるが、今年2月末時点で全国の畳店の「約束」は6914枚と、すでに当初の目標を超えている。
森下和装工業(株)では大型機械2台を使い、1日で約80枚を製作可能。通常通り製作できる状況であれば、3日で体育館の半分ほどに敷ける枚数を用意し、自社トラックで避難所まで搬送できるという。
届ける畳はすべて新品と決まっている。厚みがあるため、体育館などの硬く冷たい床の上でも冬は暖かく、夏は涼しさを感じることができるのが長所。日本人が慣れ親しんだ畳の感触やイ草の香りは、被災者の心の癒しにもつながると期待されている。これまでにも豪雨や噴火により開設された避難所へ、近隣の参加店が畳を届けてきた。「いつなにが起こるかわからない。自分たちが動ける状況であれば、すぐに駆けつける」と森下代表は話す。
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