横浜市は8月19日、今年度の「横浜マイスター」に型枠大工の高橋豊さん(株式会社トヨテック・中田北)、洋服裁縫師の田中利明さん(タナカテーラー・中田東)の2人を選定したと発表した。
「横浜マイスター」は、市が市民の生活・文化に寄与するような優れた技能職者に授与する称号のこと。1996年度に始まったこの取り組みは、単に技量を証明したり顕彰したりするものではない。授与者には、活動を通して技能職を広く社会に伝え、その振興を図ることが期待されている。
8月26日に市長公舎(西区)で行われた称号授与式には、関係者のほか、現役のマイスターらが出席。2人の仲間入りを祝福した。式典でプレゼンターを務めた柏崎誠副市長は「磨き抜かれた人の技術、熟練の技は生活を豊かにしてくれる。手仕事やものづくりの素晴らしさを伝承するとともに、普及にご尽力いただきたい」と挨拶。2人に授与証などを手渡した。
相手を理解するそれが全て
「今回の授与はこれまで一緒に仕事をしてきた仲間や支えてくれた家族のおかげ。力の及ぶ限り、後進の育成や社会活動への貢献にまい進したい」と挨拶した
高橋豊さん(60)。一級型枠施工技能士、登録型枠基幹技能者として建設現場を支える縁の下の力持ちだ。様ざまな型枠工事に精通し、特に大手建設企業の工期短縮工法の施工には優れた手腕を発揮している。
現場では予期せぬトラブルも日常茶飯事。安全確実に工事を完了させることに頭を巡らせてきた。手に職をつければ全国どこにいても大丈夫だろうと飛び込んだ世界。自身が最も大切にしてきたのは、相手の気持ちを考え、理解すること。チームプレーの現場では、意思統一がモノを言う。言葉一つひとつに愛情を込めて伝えることがポリシー。職業訓練法人の講師として後進の育成にも熱心に取り組む。
初心忘れず生涯勉強
自ら仕立てたおしゃれなジャケットで夫人とともに出席した田中利明さん(74)。「身の引き締まる思い。子どもたちに裁縫師の仕事に興味を持ってもらえるように頑張って活動したい」とにこやかに挨拶した。
職人歴58年の大ベテランでありながら、今でも毎月一度は東京へ足を運び、業界の情報や技術向上のための勉強に励むなど、生涯勉強がモットー。価格も品質も様ざまな紳士服が世にあふれている中で、徹底した手仕事へのこだわりが誇り。手作りした芯で、特に襟の「ハ刺し」工程は湾曲に細かく仕上げていく丁寧な縫製。長年着ても型崩れしないとして信頼も絶大だ。注文者が完成した一着に袖を通し、満足そうな表情を浮かべる姿を見ることが職人として何よりの喜び。長年の顧客の「もし、ここがなくなったらどこへいけばいい」との問いが、自身を奮い立たせているという。
横浜マイスターは、推薦(自薦・他薦)の後、調査員による実地調査が行われ、その後、選考委員会を経て、市が選定する。
選定にあたっては、これまでの功績だけではなく、将来の活動への期待も大きな要素。そのため、マイスターとしてふさわしい人格や事業管理能力、5年以上の活動が見込まれることなども要件に含まれている。
新たに2人を迎え、これまでに選定された横浜マイスターは56人(逝去者含)となった。区内ではほかに、染織の山村助成さん、美容師の新田景子さんがいる。
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