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泉区 社会

公開日:2023.07.20

亡き妻の名が出て信じた
特殊詐欺被害者に聞く

 区内在住の60歳代の男性Yさん。たまたま休みだった平日の午後、年金関連の政府機関から自宅固定電話に連絡があった。「奥さんの年金の件で」と切り出された。亡くなった妻の名前が出て、すっかり信じ込んでしまった―――。

 詳細はこうだ。6月22日の午後3時30分ごろ、Yさんは年金を管理する政府の者を騙る男から「奥さんの年金累積分があり、払い戻しがある」と連絡を受けた。その後、横浜銀行本店営業部を騙る男から「ATMをお客様専用端末に変更するから近くのATMに行って、そこから連絡してほしい」と指示を受けた。Yさんは指示通りにATMを操作し被疑者指定の口座に現金を振り込んでしまった。

 Yさんは「妻が亡くなった時、年金で納得できないことがあってね。やっぱりと思って信じてしまった。欲がでてしまったんだ」と悔やむ。

巧妙な誘導

 ATM操作では、まず『認証コード』を教えられた。男性は「今考えれば、その数字が被害額そのもの」と話す。認証コードを入力する際、ATM画面には『入金金額』と表示されていた。「おかしいなと思って聞いたら、『お客様専用端末だから大丈夫です。次に口座番号の入力して―」と矢継ぎ早に指示され、考える暇もなく入力を繰り返してしまった。

 操作が終わると「あなたのカードの磁気が壊れている。確認をするので、残高確認やネットバンクを使用しないで。また明細書はすぐに破棄して」と言われ、男性は「これはおかしい」と、ネットで残高を確認すると引き出されていて、詐欺だと気付いた。すぐに銀行や警察に連絡したが被疑者の口座に現金は残っていなかった。

 騙されてしまった理由を男性は「かかってきた電話番号は050のネット回線のもの。本店からなら市外局番の045が当たり前のはず。また途中で気になって『本店営業部はどこにあるの』と聞いたら、横須賀と答えるし、今考えれば不自然なことばかり」と振り返りながら、「欲なのかな」とポツリ。

もう忘れたい

 男性は事件後、体調を崩し、医師からは「うつの症状がある」と診断され、現在は薬を服用している。今回、取材を受けた理由を「人に話して、すべてを忘れたい。もうこれで終わりにしたい」と何度も話した。

 騙されないために必要なことは――。Yさんは「まさか俺がと思っていたが、騙されてしまった。後から考えれば詐欺だと分かるが、信じてしまうと考えは覆らない。一呼吸置くと良いと言われるが、無理な気がする。電話に出ないことが一番かも」。そして「今回は4時過ぎにATM操作をさせたのは銀行窓口が閉まっていたから。3時以降の入金は翌日に振り込まれるようにすれば被害は減るはず」と提言。

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