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港南区・栄区 人物風土記

公開日:2022.09.08

国の重要無形文化財保持者(人間国宝)にこのほど認定された能楽師の
大坪 喜美雄さん(本名:大坪近司)
港南区在住 75歳

初心忘れず 教えを伝承

 ○…日本の古典芸能、「能」の主役などを演じる「シテ方」。5つある流派の1つ「宝生流」の達人としてこのほど国の重要無形文化財保持者の認定を受けた。「大変光栄だが、重責も感じる」と身を引き締める。「師や先輩方から教わったことを伝承していかなければならない。それが使命だと思っている」

 ○…東京都出身。幼い頃に両親が離婚し転居を重ねた日々。12歳の時、能楽師の伯父が近所に住む、荻窪に移ったことが転機となり親族の誘いで能を始めた。「全くの門外漢だったけど特に抵抗はなかった。知らなくてかえって良かったかもね」と笑う。中・高と通学しつつ「何度もやめようと思った」という厳しい鍛錬の日々を送った。

 ○…第二の転機となったのは東京芸大への入学。同じ志を持ち他の芸術に打ち込む仲間との交流は「衝撃を受けることばかりだった。自分の甘さを再認識できた」。能楽の道を進むことへの迷いは消えた。

 ○…24歳で結婚。妻もまた能楽師だったが結婚を機に一線から退き、一昨年に亡くなるまで裏方として支え続けてきた。「ずっと二人三脚でやってきたから本当にショックだった。今でも感謝の気持ちは尽きない」。悲しみを和らげてくれるのが11歳の孫だ。能楽師を目指し稽古に励み、来年5月には初共演の予定も控えている。「晴れ姿を見るまであと10年くらいは頑張らなきゃね」

 ○…座右の銘は「初心忘るべからず」。能楽の大家・世阿弥の言葉だ。その思いを胸に、後進の育成・指導に精を出す。「伯父は厳しく寡黙だった。知らぬ間に受け継いでいるのかな」と顧みるも「先の長い道のりだけど続けることで必ず何かが見えてくる」。次世代にエールを送るまなざしに優しさが宿る。

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