港南区・栄区 社会
公開日:2023.02.16
吉備さん(港南区在住)に「感動大賞」
夫が受けた看護体験綴る
大岡3丁目の施設「看護小規模多機能 みのり大岡」で夫が看護を受けた港南区在住の吉備育子さんが綴ったエピソードがこのほど、県の「かながわ感動介護大賞」の最優秀賞を受賞した。障害によって意思表示ができず、施設へ通うことに後ろ向きだった夫が職員の献身的な看護で前向きになったことに感謝した内容。夫は他界したが、吉備さんは「良い施設、職員との出会いで私や家族が救われた」という。
同賞は、県が介護・看護現場の魅力を発信し、仕事の素晴らしさをアピールするために設けているもの。介護や看護を受けた高齢者や家族、携わる職員らから寄せられたエピソードを表彰している。今年度は73作品の応募があった。
脳梗塞で障害
吉備さんの夫・啓陽(ひろあき)さんは、2020年5月に突然、脳梗塞で倒れた。それまではプール通いを日課にするほどの健康体だったが、半年間の入院後は重度高次脳機能障害によって食事や意思表示ができなくなった。胃ろうの注入などが必要となる中、吉備さんらが施設を探し、「みのり大岡」を見つけ、同年12月末から通い始めた。
創意工夫で光
当初は施設へ行くのを嫌がる素振りを見せるなど苦労した。4カ月が過ぎると、施設の看護師・梅澤律子さんが啓陽さんの担当に。梅澤さんは啓陽さんが自宅で決められたいすに座って生活していることから、施設でも用意した専用のソファに座ってもらうようにした。ほかにも、ドライブへ連れていくなど、看護内容に変化を付けて、居心地の良い場所を作るようにした。吉備さんは「障害が過酷な中、梅澤さんたちに創意工夫してもらったことで、一筋の光が見えた」と振り返る。徐々に啓陽さんも「みのり」へ行くことが嬉しそうになって、家族にも笑顔が戻った。
週6日はみのりへ通い、月数日は宿泊をするまでになった。吉備さんは「夫は家の中でも昼夜を問わず歩き回るので目が離せなかった。だから、みのりへ行っている時間は心を落ち着かせることができた」と話す。
そんな中、啓陽さんは21年12月、胃ろうの交換で入院した際、体調が急変し、そのまま息を引き取った。87歳だった。予期せぬ突然の別れに吉備さんは大きなショックを受けた。梅澤さんは、これまでも身近な人の死別による悲しみから立ち直れるように支援する「グリーフケア」に取り組んでおり、吉備さんに介護大賞への応募を勧めた。梅澤さんは「吉備さんの体験を整理し、発表できる場を作ることが大事だと思った」という。
職員との「出会い」は宝物
吉備さんは「出会い」との題名を付けた応募作を「優しさ、思いやりの心に大切さを学ぶこと、多々ありました。何より皆さまとの出会いが宝物だと思います」と結んだ。「愛情がないと、介護の仕事はできない。私たちは梅澤さんやみのりと出会って救われた」とし、「お世話になる施設を選ぶ際は、中身をよく見て選んでほしい」と訴えた。吉備さんとともに自宅で介護にあたった娘の武田志織さんは「父がみのりへ行っている間は、やすらぎのありがたさを感じられた。この経験を通して人生の学びを得た」と話す。
梅澤さんは、月に数人の利用者との別れを経験する。その中で吉備さん一家との出会いは「私たちもどう対応するべきか勉強し、吉備さんと一緒に成長することができた」と施設としてかけがえのない経験だったという。吉備さんは「賞をもらえて夫に良い報告ができた」と啓陽さんの写真を眺め、笑顔を見せた。
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