宮前区 社会
公開日:2025.08.27
ウクライナの避難女性 宙と緑の科学館
プラネタリウムで支える
解説員の田中さんも伴走
プラネタリウムの仕事を通じ、ウクライナから東京都内に避難中のオレナ・ゼムリヤチェンコさんの生活を支えよう――。日本国内のプラネタリウム関係者の間で、そんな活動が続いている。その名も「One Sky for All」。発起人の一人である「かわさき宙と緑の科学館」(以下科学館、多摩区)職員の田中里佳さんも、プラネタリウム解説員の仲間としてオレナさんに伴走している。
今年7月19日、「科学館」で、オレナさんによるプラネタリウム特別投影「ウクライナの星空の下で」が開かれた。オレナさんが「科学館」で投影会を開くのは、昨年2月に続き2回目。来場者に向け、オレナさんはウクライナの夏至の行事「イワナ・クパラ」など故郷の文化に関する説明を交えながら、星たちの物語を解説。最後に客席にこう呼びかけた。「生きる場所や文化が異なる私たちにできることは、星空の下に集まること。またここでお会いしましょう」
「川崎にも」と声掛け
オレナさんはウクライナ北東部のハルキウに家族と暮らし、プラネタリウム解説員として働いていたが、2022年2月からロシアによる侵攻を受け、同年4月末に夫と日本へ避難。戦禍が収まらず、日本で仕事を得たいと、宇宙航空研究開発機構にプラネタリウム解説員の経歴をメールで送った。ここから首都圏のプラネタリウム関係者の間に情報が広がり、複数の施設がオレナさんを招待し始めた。
情報は「科学館」でプラネタリウム解説員を務める田中さんにも届き、22年の夏ごろ、都内でオレナさんと対面。田中さんが「ぜひ川崎にも来てください」と声をかけたところ、秋には夫婦で「科学館」へ。解説台へ案内すると、「オレナさんの表情が明るくなった」と田中さんは言う。
そして23年6月、岡山県で開催された「全国プラネタリウム大会」の場で、田中さんのほか東京、千葉などの解説員ら7人が発起人となり、全国の施設で協力してオレナさんの解説員としての活動を支える「One Sky for All」が始まった。すると各地から「うちもぜひ」という手が上がり、今年7月末の時点で、オレナさんは全国約25カ所の施設で計60回、ウクライナの星空について解説してきた。
田中さんは、長野県伊那市や長崎県佐世保市など地方での活動に同行し、施設案内や補助解説も務める。オレナさんは今では簡単な日本語を話すが、単独での地方出張は困難が多いからだ。
田中さんは「オレナさんの苦しみに寄り添う気持ちを言葉で伝えるのは難しいが、避難生活の中でも彼女らしく生きられるために、母国に戻る日まで支えたい」と語る。「科学館」の久保愼太郎館長も「星空に国境はないということを、オレナさんとの交流を通して改めて痛感した。ウクライナに平和が戻りオレナさんが帰国しても交流を続けたい」と話していた。
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