21世紀国際書展でグランプリを受賞した 加藤 香誓さん(本名 佐知子) 小倉在住 69歳
「書は心の糧です」
○…「思いがけずいただいた、ありがたい賞。長く続けてきてよかった」――。そういって目尻を下げ、微笑んだ。書芸と国際交流の発展、次世代の書家の育成を目指す「第28回 21世紀国際書展」で最高位にあたるグランプリをこのほど受賞した。これまで同展では文部科学大臣賞、神奈川県民書道展で準大賞などを獲得。いずれも思い出深いものばかりだというが、今年は、古希の節目年でもあり、嬉しさは格別だという。
○…受賞作は、唐代中期の文人・韓愈(かんゆ)の綴った詩を2×8尺サイズに書いた。朝廷のために、良かれと思って行動したことが、違うように受け止められ、左遷の憂き目にあった口惜しさが詠まれている。作者の心情を汲み取るには「紙の中に字が食い込むよう書かねばならない」という。韓愈の心の揺れ動く様を筆の動きの中で表現し、約40分かけて書き上げたという。
○…東京・蒲田で生まれた。書道歴は藤沢に移り住んだ小学校5年生まで遡り、高校2年生まで続けたという。就職、結婚。小倉には45年ほど前から在住し、民生委員などを務めていた。「書道の良い先生がいる。やってみませんか」。40代半ばの頃、近所の年配者と何気ない会話から書家の斎藤香坡氏が主宰する國藝書道院を紹介された。子育てもひと段落した頃。再び筆をとってみようと通い始めた。「書に向き合う姿勢は、熱心。顔には出さないが、負けず嫌いな性格」とは斎藤氏の評だ。やがて、会内でも頭角を現しはじめた。
○…96年からは教室を任されるようになった。師匠にならい「書と人間性」を重視した指導を行っている。体調が悪くないか、気持ちが落ち込んでいないか、生徒たちの書く文字を見ながら気を使う。現在は幼稚園児からお年寄りまで90人が通う教室にまで膨らんだ。自身にとって書とは「心の糧」ときっぱり。「これからも細く、長く続けていければ」と語った。
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