▼綾瀬市の橘川佳彦市長が、2日の市議会本会議で所信表明の演説に臨んだ。新人4人が出馬した市長選で勝利した橘川市長は、同市では最年少の54歳2カ月で市長に就任した。所信表明では、古塩政由前市長の政策について、「継承すべきところは継承し、充実させるべきところはさらに充実させる」と言及する一方、教育や公共交通など5つの領域を柱に据える姿勢をみせた。慎重な反面、独自策も示すバランス型の所信表明だった。
▼綾瀬市政では、子育て支援、高齢者福祉、地域活性化が主要課題となって久しい。こうした全国共通の課題に加え、前市政時代には脱炭素社会へ向けた環境対策や国際化、工業活性化、映画やドラマ撮影の誘致、貧困対策、基地活用など独自の政策も進められた。それらを担う中堅や若手の職員は意欲を発露させ、市長の温厚さも相まってか、市役所全体が「温室」のように見えることもあった。橘川市長が今後、職員に向けてどのようにタクトを振るかに注目したい。
▼市長の就任時に行われる「所信表明」とは、市長としてのビジョンや信念を議場で宣言する重要な演説だ。それと似た「施政方針」は、毎年の予算編成にあわせて発表され、総合計画に基づく継続性の中で、「この1年は」という部分に焦点を当て目玉事業を打ち出す。いずれの議会演説も市政運営の道しるべを議会や市民に示す機会で、ホームページなどで一読すると市政を今よりも身近に感じ、まちづくりの変遷も実感できる。
▼2日の所信表明では、用地の選定が難航する総合教育支援センターの早期整備や小中学校給食と教材の無償化、図書館の再編、広域連携を念頭に置く公共交通の再編など主要政策に言及した。他方、懸案の中心市街地の活性化では、県道沿いでの民間との沿道整備に期待感を示す一方、選挙戦の争点だった「道の駅」整備には触れずじまいだった。9月20日からは橘川市長にとって初の論戦となる一般質問が始まる。橘川市長の政治姿勢をどう引き出すか、議員の手腕も試される。
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