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伊勢原版 公開:2025年6月13日 エリアトップへ

吃音の神職、「高森まつり」開催 文化継承と多様性を期す

文化

公開:2025年6月13日

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吉田さんと杢代さん(左)(高森神社)
吉田さんと杢代さん(左)(高森神社)

 伊勢原市の高森神社で、「高森まつり」が6月29日(日)午前10時〜午後3時に初開催される。この祭りは、「文化の再会」をテーマに、子どもから大人まで地域住民が一体となって作り上げることを目指す。高森神社、(一社)伊勢原FCフォレスト、(一社)半原宮大工集団が共催。

 中心となるのは、高森神社の禰宜である吉田和平さん(51)だ。吉田さんは幼少期から吃音症に悩み、一時は神職の道を諦めたが、同じ境遇の仲間たちとの出会いを通じて、再びこの道を歩み始めた。現在は「NPO法人よこはま言友会」の副理事長も務め、啓発活動にも取り組んでいる。今回の「高森まつり」は、吉田さんにとって神職として初めて主催する大規模な祭りであり、自身の吃音について公の場で語る初めての挑戦となる。

 イベントを企画した杢代智宏さんは、吉田さんと同年齢。4年ほど前に紹介で知り合ったという。杢代さんはハウスメーカーの不動産部門に21年間勤務した経験を持ち、その中で神社に興味を持った。各地を巡る中で「神社がよくなれば、地域もよくなる」と仮説を立てた。退職後も神社、寺院と地域を絆で結ぶ「半原宮大工集団」の理事を務め、活動を続けてきた。吉田さんと交流が深まる中で、高森神社が祀る、髭が生える歳になっても言葉を発しなかったことから大器晩成とされる味須岐高彦根命(アジスキタカヒコネノミコト)と重ね、「吉田さんが吃音を受け入れ、自身の経験を公にすることで、人々に勇気を与えられる」と考えるように。また、住民の高齢化により、しめ縄作りや神輿渡御といった伝統行事の継承が危ぶまれている現状を感じていた。

仲間と龍神の後押し

 ある日、企業の災害備蓄品が廃棄される予定との話が舞い込み、神社に奉納したいと相談があった。吉田さんはこれを社会貢献として必要な場所に渡す意向を示し、杢代さんが神社の認知度向上を兼ねて祭りに組み込むことを提案した。

 高森神社では16年前に火事があり、龍の形をした木が現れ、「福神龍」と名付け祀った。龍神の霊験が高まる日として知られている己巳(つちのとみ)の日に合わせ、昨年初めて「福神龍祭」が開催され、今回の「高森まつり」はほぼ1周年となる己巳の日にあたる。吉田さんは、「非常に勇気が必要だったが杢代さんをはじめ、仲間たちと龍神様が後押ししてくれた」と吃音を語ることを決意した。

地域がつながる場に

 祭りは、地域のつながりを深め、防災意識や探求学習などが融合した学びと祈りの場として企画。文化体験として祝詞奏上などの神事、神楽奉納、真榊挿し木式、災害備蓄品贈呈式のほか、宮大工体験、吃音の認知と理解、災害備蓄食の試食会など交流体験も用意されている。

 杢代さんは「子どもたちも楽しめる体験型の企画を取り入れ、伝統文化に触れる機会を創出したい」と考え、吉田さんは「生きづらさがあっても、楽しく笑える未来があることを伝えたい」と願う。イベント情報は高森神社の公式SNSなどで発信していく。

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