ふるさと応援納税を紹介する伊勢原市発想クルリン課の酒井健司課長
伊勢原市は、旅行先の宿泊施設や飲食店などでその場で寄付を行い、直ちに返礼品として電子クーポンを受け取って利用できる新たなふるさと納税の仕組み「ふるさと応援納税(R)」を8月1日(金)より導入することがわかった。発想クルリン課が担当課となり、伊勢原市を訪れる観光客の利便性向上と地域経済のさらなる活性化を目指す。
「ふるさと応援納税」は、応援したい自治体に寄付を行い、翌年の税金から控除される「ふるさと納税」のメリットはそのままに、従来の返礼品配送型とは一線を画す「現地決済型」のサービスだ。具体的には、市内の加盟店(宿泊施設、飲食店、土産物店など)を訪れた際、その場でスマートフォンなどから寄付手続きを行う。寄付後すぐに電子クーポンが発行され、店舗での支払いに充てることができる。クーポンは1円単位で利用可能で、使い勝手の良さが特徴だ。神奈川県内では横浜市、川崎市、藤沢市などで導入されている。
伊勢原市は、大山をはじめとする豊かな自然や歴史的観光資源を有しており、年間を通じて多くの観光客が訪れる。今回の「ふるさと応援納税」の導入は、観光客が地域に直接貢献できる新たな機会を提供するとともに、市内の事業者にとっては、寄付を通じた誘客と売上向上につながるものと期待されている。
加盟店登録呼び掛け
市では、7月1日(火)から加盟店登録の電子受付を開始するにあたり、商工会、商店会、飲食店組合などと連携し、店舗に向け説明会を実施中で、100件以上の加盟を目標としている。市発想クルリン課は、「伊勢原を訪れる皆様に、より手軽に、そして楽しく地域貢献いただける仕組み。ぜひ、この新しいふるさと納税を活用し、伊勢原の魅力を満喫してほしい」と期待を寄せている。
流出超過続く
全国のふるさと納税の受入額は、2023年度に1兆1175億円を記録し、制度開始の8年度(81億4000万円)と比較すると驚異的な伸びを示している。
一方で、伊勢原市では16年度から制度を開始。ふるさと納税の受入額は、17年の1億7300万円をピークに、19年度から大幅に減少。20年度に4100万円、21年度3900万円、22年度2800万円と減少が続き、23度には3500万円、24年度は3600万円と微増しているものの、ピーク時と比べると低水準にとどまる。
また、伊勢原市からのふるさと納税による個人住民税の流出額は増加傾向にあり、24年度には3億3500万円と過去最高を更新。これにより、ふるさと納税による伊勢原市の差し引き流出額は、24年度に2億9900万円に上り、財政への影響が懸念されている。
こうした現状を踏まえ市では、今年度新たに発想クルリン課を創設。「発想を転換して、ふるさと納税やネーミングライツ、クラウドファンディングなどで歳入を増やすこと」を狙いとし、その一環として今回の現地決済型ふるさと納税の導入をはじめ、掲載サイトの拡充など、積極的な施策でふるさと納税の受入額増加に取り組んでいくという。