これまで語られることの少なかった幕末から明治中葉の大山の姿が、菅原順子さん(伊勢原市大住台・67)がこのほど出版した『幕末明治の大山と外国人』(1870円)によって鮮やかに浮上した。横浜からほど近い風光明媚な行楽地として、欧米から多くの人々が大山を訪れていたという歴史の一端が、詳細な調査と考察によって明らかにされた。
著者の菅原さんは英語教師として教鞭を執った経験を持ち、全国通訳案内士の資格も持つ。本書執筆のきっかけは、2016年に「大山」が日本遺産に登録された際、文化財サイトの英語版に携わり、新たに文化財に登録された大山小学校にある「青い目の人形」に出会った。これが研究を深める契機となった。
コロナ禍による国会図書館閉鎖という予期せぬ出来事も研究を加速させた。自宅でのネットサーフィン中、インターネットアーカイブという膨大なデジタル資料の宝庫に巡り合い、大山に関する記述を掘り起こす作業に没頭。特に旅行記や新聞記事など、これまで日本語に翻訳されていなかった貴重な一次資料の発見があった。「見知らぬ地で知り合いに会ったような高揚感。多くの人に知ってもらいたい」と出版を思い立った。
5年の歳月をかけてまとめた本書では、外国人を珍しがり、宿の窓から覗き見たり、群衆が取り囲んだりする場面のほか、時代とともに単に山頂を目指すだけでなく、地元の人々との交流を深める様子も、当時を窺い知ることができる。さらに、当時の文献には「大山」や「宮ヶ瀬」といった地名も、書物や書き手によって表記が異なり、資料解読の難しさとともに、当時の地域の呼称が揺れ動いていた状況が浮かび上がる。雨岳ガイドの会など地元ボランティアガイドの協力を得ながら、実際の場所を訪れ調査を進めたという。
菅原さんは「大山の新たな魅力を知るきっかけになれば」と話している。同書は文教堂伊勢原店(いせはらcoma 4F)で販売されているほか、伊勢原市立図書館でも閲覧が可能だ。
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