公園として整備された二ツ池
駒岡と獅子ケ谷にまたがる二ツ池では、公園化が進められており、現在その一部がオープンしています。以前、道路計画がありましたが、池を残したいという住民の声により公園化することに。公園愛護会は、主に清掃や草木の管理、生物の調査・観察を他団体と協力して行っています。昨年6月、二ツ池こどもエコクラブが発足。活動の輪が広がっています。希少生物が生息しているため、生態系を崩さずにどれだけ人の手を入れるか、常に手探りの活動だそう。
公園愛護会の今井幸子さんは、「鶴見の人々にとって心のふるさとになってほしい。周知と保護の両立を図りたい」といいます。
「二ツ池の竜」伝説
二ツ池では竜にまつわる伝説が受け継がれています。駒岡村では、竜が落下し、その胴体で沼が二分されたというもの。獅子ケ谷村では、竜と熊が戦い、竜の体が堤となって池が二つに分かれたというもの。両村で違いはありますが、竜の胴体で池が二つに分かれたという点は共通しています。
江戸時代、駒岡にしか水が流れず農業用水を巡る水争いが起こっていましたが、
あまり知られていません。なぜ水争いについて伝えなかったのか。鶴見歴史の会の齋藤美枝さんは「それは共存共栄の気持ちがあったからではないか。池を分けることで仲良くしていこうとしたのでは」と話します。
今も見守る五郎兵衛
二ツ池のほど近く、みその公園「横溝屋敷」があります。今から約500年前に横溝家がこの地に居を構え、代々名主を務めてきました。明治になり養蚕のため、武家屋敷だった建物を2階建てに。繭はシルクセンターに運び、絹糸にしてフランスへ輸出していたそうです。1987年、第17代当主横溝和子さんが横浜市に寄贈。翌年市指定有形文化財第一号に認定されました。屋敷への理解促進のため、昔からの伝統行事を行っています。横溝屋敷館長の新田弘子さんは、「一番大切なのは維持管理。きれいにしてこの建物を次世代へ繋げたい」と話します。
初代当主五郎兵衛は、水争いを治めるため、二ツ池の治水整備を行いました。池は中で繋がっているため水位が同じになり、平等になっているのだそう。
名主とは今の区長に匹敵するもの。作物を平等に分け与え、誰かが貧乏にならないようにしていました。屋敷の一番上から全体を見下ろし、異変を感じたら直接足を運んでいたそうです。
横溝屋敷を見上げれば、変わりゆく二ツ池を見守る五郎兵衛の姿が見える気がしました。