日本テレビ「24時間マラソン」の伴走者 坂本 雄次さん 箱根・旧湯本中学校出身 65歳
ひた走る―道を作るために
○…日本テレビの24時間マラソンの中継で見た人もいるかもしれない。ランナーの隣を走る黄色いバンダナのおじさんだ。この企画では20年前からタレントの指導や運営を担当しており、「ある種自分の支えになっている」。時に100キロ超ともなる距離を完走するため、ランナーには足腰への衝撃が少ない走法を指導している。数え切れないほどの段差、信号。そして強烈な排気ガス。そんな中ぴったり選手に付き添う姿からは想像できないが、この10年は逆風だった。十代の頃に痛めた足腰が五十代を過ぎた頃から痛み始め、人工股関節やボルトを埋め込むなど数度の手術を経験することに。それでもくじけそうになったことは「一切ない」ときっぱり。
○…父が塔ノ沢や山崎の発電所で働いていたため中学1年まで箱根で過ごした。欲しいものは自分で作るしかない時代。父が畑を耕して育てた野菜が食卓に並び、そのテーブルもまた父の手作りだった。まぶたの裏には温泉街の懐かしい風景が広がっている。一緒に湯本で遊んだ少年たちはいま飲食店の代表や町議員。愛着のある箱根はマラソンの特訓場所でもある。タレントの間寛平さんと一緒に真夜中の長尾峠や明神ヶ岳を走ったことも。昨年、同窓会で旧友と再会し、それを機に箱根に家を建てることに決めた。町民に戻る日が待ち遠しい様子。
○…東電で働いていた頃は陸上チームの監督に就任し、素人集団を鍛え上げてフルマラソン選手たちを輩出。19年前に大会運営などを手掛ける会社を設立し、2万人以上が参加する湘南国際マラソンの立ち上げなどに携わってきた。今力を注いでいるのが箱根ジオパークを舞台とした長距離マラソンの構想だ。「実現すれば参加者の連泊につながり、観光振興になるはず」。誰かの伴走をする日もあれば、無かった道を作るため、先頭を行って頭を下げる日々。目線の先には父の背中があるのかもしれない。
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