都筑区 人物風土記
公開日:2025.10.23
真言宗豊山流の御詠歌の全国大会で2位になった
小野 喜代美さん
茅ケ崎南在住 66歳
縁に導かれて広がる世界
○…大会の結果は後日、指導者である住職から聞いた。「誤報かと思った」と恥ずかしそうに笑う。月に1度の写経会に参加した際、「やってみませんか」と勧められた御詠歌。まったく知らない世界に「恐れ多い」と及び腰だったが、歌だけでなく鈴や鉦を使った所作を見て「頭の体操にもなるかな」と体験。いざはじめて見ると「心がやすらぎ、集中できる」と写経と同様に日常になった。
○…茨城県の生まれ。その後家族で保土ケ谷区へ。結婚を機に35年前、開発が始まったばかりの港北ニュータウンで新築の集合住宅が当たり、都筑区へ越してきた。「周りは竹林ばかりで。線路はできていたが、地下鉄はまだ走っていなかった」と懐かしむ。転居後、かつて短大の夜学に車で通っていた道が、すぐ近くの丸子茅ケ崎線だったと知り、縁を感じた。
○…約30年前に夫が他界。木更津に建つ墓石を近所の寺へ移動させる際、同じ真言宗豊山流で最寄りの寺が大棚の龍福寺だった。檀家となり、月に1度の写経の席で薦められたのが御詠歌だった。仏教の教えや報恩感謝を唱える御詠歌について「追悼の曲などは心にグッとくる。夫のことを思うことも」としんみり。大会は住職や一緒に学ぶ仲間に背中を押され、「何でも経験」と参加に踏み切った。
○…これまで趣味と言えるような趣味もなかったという。御詠歌や写経も「趣味といえるかどうか」と謙遜するが、写経は短い時間でも毎日行っている。御詠歌は手元にあるテキスト3冊に掲載されているだけでも120首。難しい曲も多く「一つでも多く唱えることができたら」と向上心は高い。「六十の手習い」こそ若さの秘訣のようだ。
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