戸塚区・泉区
公開日:2023.07.20
第91話 戸塚十勝(じゅっしょう)その1
とつか歴史探訪
横浜市内に金沢八景があるように、全国に日本の八景は多く見られます。十勝(景)は珍しいのではと思われますが、江戸時代後期から明治に掛けて活躍した「内田永保(本名:保平)」は明治の頃の戸塚を"戸塚十勝"として歌に残しました。"永保"は、戸塚上宿に生まれ上倉田町の蔵田寺の和尚に和歌を学んだとされています。
「海蔵の晩鐘」"入相の かねのひゝきに いそくらむ やゝ暮れかゝる 野路の旅人"海蔵院の夕暮れ時の鐘の音に、旅路を急ぐ様子が伺えます、次の藤沢宿まで行くのでしょうか。
柏尾川の右岸、"和田"地域を詠んだと思われる3首。
「和田の落雁」"月きよみ つはさならふる かつさへも あらはれおつる 和田のかりかね" 月夜に、列をなした雁の群れが声を発し柏尾川に降りる様子、つばさの音も聞こえるようです。
「磯崎の夜雨」"磯崎の 松のあらしの おとふけて 田つらをめくる 夜半のむらさめ" 松に当たる風の音、時折田に雨が吹きつける情景、繰り返す雨に眠れぬ夜を過ごしているのでしょうか。
「清水山櫻松」"千代経とも つきぬ清水の 山櫻 松にやとりて 咲き似ほひつゝ" いつまでも尽きることのない清水山の清き水、松の綠を背景に咲く桜が映える様が目に浮かびます。
いずれの歌からも戸塚が、本当に風光に恵まれていた様子を窺い知れます。
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