東日本大震災から1年、磯子区が取り組んできた防災対策について、坂本連・磯子区長に聞いた。(聞き手/本紙編集長・水戸浩一)
――3月11日の東日本大震災から1年になりますが、震災を受けて、これまで取り組んできたことについてお聞かせください。
「海の面する磯子区は、津波対策が重要です。まず、磯子小、杉田小、根岸小、森東小、根岸中、区役所と、民間の磯子奉斎殿を津波避難施設に指定しました。これらの建物は一定の強度と高さがあるので、戸建てに住んでいる方などはここに避難していただきます。
次に、津波警報を伝える屋外スピーカーを今年度中に、八幡橋付近に設置します。あとは、海抜表示を今年度末までに、海抜10m以下の場所に設置予定です」
――津波対策以外の取り組みは、いかがですか。
「3月11日の反省を踏まえ、区内に駅を持つ鉄道事業者のJR、京急と相互協力協定を結びました。震災時の帰宅困難者について、駅と区で連絡を密に取ることや、両者の役割分担を決めたもので、今のところ、市内でも磯子区だけです。
もう1つは、地域の医療救護拠点のうち3ヵ所で、地域防災拠点との合同訓練を実施しました。医師や看護師によるトリアージの説明や、備品の見学会などを行いました。また、防災拠点での訓練では、自治会町内会、学校に呼びかけて、多くの小中学生に参加してもらいました。会社員など大人は日中、地元にいないことも多いので、震災時には、中学生の役割が重要になると考えています。
最後に要援護者の支援体制作りです。区でも総務課、福祉保健課や高齢・障害支援課など5課合同で取り組んでいて、90自治会町内会で取り組みが始まってます」
――今後行っていく取り組みをお聞かせください。
「今、説明した取り組みは、来年度も行っていきます。あとは、平成14年度に作られた区防災計画と防災マップの改訂です」
地域の繋がり大切
――震災発生当日、区長はどちらにいましたか。
「区役所6階の区長室にいました。建物がすごく揺れて、怖かったです。ただ、庁舎管理担当者が、『このビルは安全で、この程度の揺れでは崩れません』と、館内放送をしていたんです。おかげで職員も来庁者の方も、安心していられました」
――その後の対応は。
「すぐに区の災害対策本部を立ち上げて、各連合町内会長さんを通じた地域状況収集や、保育園、小中学校に残っている子どもの人数確認など、各施設の状況把握に取り掛かりました」
――通信手段は大丈夫だったのでしょうか。
「区役所と各学校にはデジタル行政無線が設置されているのですが、つながりにくい状況でした。使い方に慣れていない人が多いうえに、少ない回線数に情報が殺到してしまったことなどが原因です。逆に、区のアマチュア無線非常通信協力会の方たちがすぐに本部に駆けつけて、各地と連絡を取ってくださったのが非常にありがたかったです。
各連合町内会の会長さんとの連絡は携帯電話を想定していましたが、当日は全くつながらず、職員たちが大渋滞のなか1、2時間かけて訪問し、情報を集めました。その反省から区では、電動アシスト付自転車を購入しました。そのほかにも、帰宅困難者対応など、多くの問題が分かりました」
――1年を振り返っての感想をお願いします。
「私自身、被災地を見てきて、防災対策の必要性を改めて感じました。また、被災者の方たちのお話を聞いて、地域の繋がりの大切さも感じています。磯子区でも自治会など地域ネットワークを強化し、共助の体制を高めていくことに取り組んで行きたいと思います」
磯子区版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|