横浜国立大学大学院の教育学研究科で美術を学ぶ轟颯馬さん(22)が学部の卒業制作で作ったゴリラの彫刻作品「憧れ」を、「ゴリラ先生」の愛称で知られる渡邉眞一さんが園長を務める初音丘幼稚園に寄贈した。
教員を目指す夢を抱き、香川県から同大学教育人間科学部に進学した轟さんは、3年生の時に訪れた上野動物園で目にしたゴリラの群れに強い魅力を感じた。「ゴリラの群れには独特の温かさと安堵を感じさせる空気感があった。その空気を作り出しているのはボスとして群れを束ねる雄ゴリラの存在感ではないか」と考え、「ボスゴリラの持つ強く優しい存在感を表現することを通して、自分自身そのような存在感を持った人間になりたい」と、卒業制作のテーマに選定したという。
粘土を使いさまざまな形を作りポーズを思案する中、温厚な性格を表現しようと、重厚な手を差し伸べる「握手を求めるポーズ」を作品にすることを決定。模型や書籍で骨格や生態などを研究したほか、動物園に直接連絡し体高などについても調査を進めたという。
材料は校内の楠
材料となる木材を求め製材店などを訪れていた昨年2月、常盤台の同大キャンパス内の楠が伐採されるという情報を耳にすると、その木の前で業者を待った。伐採した木の処分には費用が必要なことを知っていた轟さんは業者にこの木の譲渡を直談判し、大木を手に入れた。
重さ約200kg
当初は丸太を削り出していく手法での作品制作を思い描いたが、木の乾燥に時間がかかることなどから方針を変更。丸太を角材に製材し、組み合わせた大きな塊を削り作品にしていく手法に切り替えた。
塊をチェーンソーで荒く削りフォルムを生み出し、内部をくり抜く作業を進めた後、ノミを使い表情や質感を出した作品は1月末に完成。重量は約200kgと、実物とほぼ同等の重量となった。
「ゴリラ」が縁で急展開
2月末の卒業制作展の最中から「悩みの種」だったのが作品の引き取り手の問題だ。作品展の来場者に協力を呼びかけ続けたが、色よい返事は得られなかった。「そこまで考えていなかった自分が悪い。作りっ放しは一番よくない。最悪の場合は処分しなければならない」と考えていた矢先、作品展の来場者を通じ「ゴリラ先生」の愛称で知られる渡邉園長を紹介された。
自身も同大の教壇に立つ渡邉園長は轟さんの作品の引き取りを快諾。轟さんは「とても嬉しかった。目の前が開けた感じ」と話す。
大人6人がかり
今月16日、都内での公募展を終え、作品を積んだトラックが同園に到着し、大人6人がかりで200kgの「ゴリラ」を運び出す作業が始まると園内は騒然。30分ほどかけて園内に「ゴリラ」が鎮座した。
園にやって来たゴリラは翌日からすぐに園児たちの人気者になり、重厚な手と握手する姿が見られるようになった。轟さんは「作品に触れて子どもたちに木の温もりなども感じてもらえたらうれしい。作者として責任を持って定期的にメンテナンスにも訪れたい」と話した。処分寸前だった作品を引き取った渡邉園長は「『ゴリラ』が縁になってやって来た作品。大切にしていきたい」と話した。
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