神奈川区版 掲載号:2018年4月5日号
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ミスター高橋の 連 載 「貯筋」の心得 38転ばぬ先の杖

 前回掲載した『高齢者体力自慢の悲劇』を読んで、数人の方が「身に覚えがある」「無理は禁物」という電話を下さった。

 私事だが、悪夢に魘われる夜が時折ある。かつてベンチプレス重量級の日本選手権を獲ったことのある腕力はかなり強いほうだったと自負している。もちろん昔のこと、今は無理せぬゴムチューブでの筋トレのみ。なのに、バーベルに押しつぶされパニックに陥る夢を見る。なぜか薄暗く誰もいない道場。毎回難なく挙げていたはずの180kgに失敗し重圧がぐいぐいと胸にのしかかり、息も絶え絶え寝汗びっしょりで目を覚ます。

 元プロレスラーのキラー・カーンこと小澤正志氏(71)にこの話をしたら、いつもの柔和な声に「えっ!」と驚愕をもらし「俺も似たような夢を見る」とのこと。プロレスファンなら誰もが知る195cm145kgの巨漢。リングのコーナー最上段から舞い降りるWニードロップの豪快な必殺技でニューヨークMSGを超満員にした男である。疾うに引退し現在新大久保で居酒屋を営む往年の勇者は「夢とは言え、俺も体力が落ちたよ」と苦笑した。聞くと、勝利を決定的にせんとコーナーに登り、倒れている相手の胸元に狙いを定めたものの足腰が硬直。エンディングの見せ場に踏み出せず狼狽するそうだ。

 私と似かよった悪夢は、心奥に潜む懐古と、体力減退を意識する現実との葛藤か―。体力全盛期は誰も懐かしい。でも古今混同することなく、若き日の誇負はそっと隠し持っていた方が無難ですね。
 

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