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多摩区・麻生区 社会

公開日:2025.10.29

視覚障がい者目線で歩く 
川崎は「バリアー」だらけ
協会の要望、実現に壁

  • JR武蔵小杉駅から中原区役所への経路の交差点

  • 線路と国道が斜めに交差する大師第一踏切

 川崎市視覚障害者福祉協会では毎年、川崎市長に要望書を提出している。その内容は交通機関の安全確保や高齢者問題など多岐にわたるが、大半が実現に至っていない。だが要望の「現場」を訪ねると、川崎の街は決してバリアフリーではないことが実感される。

 JR武蔵小杉駅から中原区役所に向かうルートを歩くと、頻繁に人と車が行きかう交差点にぶつかる。協会ではこの交差点に「音響式信号」を設置するよう、数年前から要望してきた。だが協会関係者によれば、「行政から『近隣住民に許可を得る必要があり、難しい』と聞いた」という。

 音響式信号の設置の可否を決めるのは神奈川県警だ。要望の扱いを記者が尋ねたところ、「今回の要望を受け、中原警察と共有の上、現場の交通実態を把握して整備に向けた作業を進める方針」と答えた。この県警の回答に、協会副会長の舩橋光俊さんは「予算の都合などで難しいものも多いことは承知している。実現してもらえるならありがたい」と語った。

画一的な線引き

 要望の中でも協会が「通りにくい」との印象を持つのが、鉄道各社への要望だ。今回の要望では、視覚障がい者が頻繁に利用する「川崎市視覚障害者情報文化センター」の最寄り駅であるJR八丁畷駅と、同駅に向かう乗り換え地点であるJR南武線浜川崎支線尻手駅の「3番線」のホームドア設置も求めた。

 この要望は、川崎市から神奈川県の「鉄道輸送力増強促進会議」を経由して鉄道事業者に伝えられる。JR東日本横浜支社に問い合わせたところ、「ホームドア設置に関しては、乗降者数10万人以上の駅等を優先している。2031年度末までの整備目標である330駅の中に、南武線浜川崎支線は含まれていない」とのことだった。

 舩橋さんは「乗降者数など画一的なデータで線引きされては、両駅の設置は絶望的。視覚障がい者が多く乗降している特性も踏まえて欲しい」と悔しそうだ。

踏切は特に「怖い」

 要望の内容以外にも、障がい当事者が「怖い」と声を上げる場所は、市内各所にある。川崎区の京急大師線と国道409号線が斜めに交差する「大師第一踏切」がその典型だ。歩道の幅が広いこともあり、視覚障がい者がカーブに気づかず車道にはみ出たり、直進して線路に落ちたりするトラブルが後を絶たないという。舩橋さんは「踏切から出られずに電車にひかれてしまったら、一発で命を落としてしまう。点字ブロックを整備するなど、対策を講じて欲しい」と訴えている。

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