シリーズ 不育症を考える 「産むことを諦めたくない」
不育症は、妊娠はするが流産や死産を2回以上繰り返して生児を得られない状態をいう。妊娠した女性の2~5%程度が不育症ともいわれ、以前は原因不明とされていたが近年新たなリスク因子が発見され解明されつつある。原因にもよるが治療すれば約80%以上の人が出産できるということがわかってきた。ただ治療費や検査費用が多額で多くの自治体に助成制度がない。そのため出産をあきらめる人も多いという。川崎市も助成制度がない市の一つだ。最近になり女性議員が中心となり、公的資金導入を求める声が高まっている。不育症の現状について探った。
第1章 体験記
幸区に住む女性(28)はわずか7週間で終わってしまった最初の妊娠生活を乗り越え2010年の春、2回目の妊娠をした。
はじめての流産のとき医師から「流産は妊婦の10人に1人いう高い確率で起こり、その殆どが赤ちゃん側の染色体の異常です」との説明を受けた。「今回は運が悪かっただけ」そう自分に言い聞かせ辛い気持ちを抑え乗り越えた。
2度目の妊娠。妊娠8週目の検診では小さくとも一生懸命動いている心臓に喜びを感じた。しかし通常8週目の赤ちゃんの体長は18ミリほどなのに対し、6・6ミリと少し小さな赤ちゃんに一抹の不安を感じていたが医師の「問題ない」との言葉を信じ帰宅した。
それから3日後、赤ちゃんはおなかの中で亡くなった。2度目の流産。約1ヵ月後、下腹部の突然の痛みに見舞われトイレの中で出産。透明な袋に包まれた赤ちゃんを素手で取り上げタオルにくるんだ。氷水のように冷たくなった赤ちゃんに「ごめんね、ごめんね」と泣きながら産んであげられなかった事を謝った。その後夫に連れられ病院にいき赤ちゃんを病理に出し、お別れをした。2度目の光景。帰りにマタニティーマークをカバンから外したときの虚しさ、悔しさそして夫や初孫を心待ちにしている両親に申し訳ない気持ちに心が苦しくなった。しばらくは特定の人と以外は会えなくなった。
その後も妊娠はするものの流産を繰り返す。ある時、先生から不育症の可能性があることを告げられた。
「ふいくしょう…?」
どんな検査をしてどんな治療をしているのかさえ知らなかった。しかし検査をすれば今までの流産の原因がわかるかもしれないと検査を依頼。そこで先生から意外な言葉が返ってきた。
「ここではちゃんとした検査ができないので専門の病院を紹介します」。女性が通っていたのはかなり大きな総合病院で不妊治療もおこなっているが不育症の治療はおこなっていない。不育症の治療を専門的に受けられるのは県内では1つしかないという。
検査費用は数万円。多額だが原因が知りたいと検査し、第XII因子欠乏症という原因がわかった。アスペリンとヘパリンを使えば約95%の確率で出産できるという。治療費は高額だが命には代えられないと次に妊娠時には治療を受けると決めた。女性は「産むことを諦めたくない」。そう話す。
女性は現在、市民団体不育症そだてねっとに加入し、同じ病気で苦しむ女性の為、不育症の認知と公的資金導入に向け、広く活動をしている。
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次回は、不育症の現状や問題点などを探る。
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10月11日
10月4日