座間の語り伝え第11集 先人たちの関東大震災 57人の記録、克明に
「防災の日」は地震・津波・台風の災害について認識を深め、それらに対処する心構えを準備するため、1960年に制定された。9月1日という日は、1923年の同日に発生し、10万人以上の死者と行方不明者を出した「関東大震災」に由来する。91年前に起きた大震災の体験者が少なくなった今、当時の記憶を生々しく伝える資料が、市教育委員会が発行する「座間の語り伝え=外編2・関東大震災=」だ。
2カ月間で聞き取り調査
「座間の語り伝え」は信仰、芸能など特定のテーマについて、編集委員が市民から聞き取り調査した内容をまとめた冊子。第11集の関東大震災編は、1984年に初版が発行された。発行当時の市長・星野勝司氏は「平素とかく忘れがちな震災についての心構えを、この大地震を体験された先輩たちの貴重な話から汲み取って、新たにしていただきたい」と、企画の意図を冊子中で述べている。聞き取り調査は、市史編さん専門編集員の故・鈴木芳夫さんを中心に、1982年5月から7月にかけて行われ、その対象者は市内・市外合わせて、50人以上にのぼった。
冊子(約190頁)の半分以上を占めるのが第2章「古老が語る関東大震災の思い出」だ。市内で被災した46人の体験を地域別に紹介しているほか、海老名や横浜など市外にいた人々の声を盛り込んでいる。
地割れの間から泥水ボコボコ
「南の方角で『ドロドロドー』」というような音がしたかと思うと、いきなり揺れ始めました。(中略)庭には何本も子どもなら落ちてしまうような地割れができ、その間から泥水が『ボコボコ』と噴き出すので驚きました」(四ツ谷/川島撥一さん)、「固い地面がブワブワになり、水が噴き出してくるのです」(四ツ谷/川島良太郎さん)――。相模川沿いの地域に住んでいた人々の聞き取りからは、発災後間もなく、液状化現象が起きた様子が伝わる。
竹藪に避難した様子も多く散見される。「竹藪は根が張っていて、地割れの危険はないとうことを、昔の人から聞いていた」(川島撥一さん)、「『地震の時は竹藪に逃げ込め』ということを聞いていた」(新田宿/大矢儀三郎さん)。当時の人々が、先人の言い伝えを信じ、行動した様子がうかがえる。
「朝鮮人襲来」の流言により、道路に検問所が設けられ、武装した住民が警備にあたった事も数多く証言されている。9月2日や3日には噂が誰ともなく広がり、自警団が結成されていった。小学校の校庭に投下された新聞で、騒動が流言だったことを知った人もいたそうだ。
大地震への備えの一助
「横浜や東京に比べて座間の被害は少なかったが、都市化が進んだいま、関東大震災規模の地震が起きれば、どれだけの被害になるのか…」。そう話すのは、冊子の編さんに携わった鈴木義範さん(65)。市職員として、古文書や写真といった資料収集に奔走した。聞き取りだけでなく、文献を活用することで調査の精度を高めたそうだ。
将来起こりうる大地震を憂慮するからこそ、冊子を読んで欲しい想いがある。「流言に惑わされずに冷静に対応することや、先人たちの言い伝えを理解することの大切さを学んでもらえれば」と願っている。
冊子は、680円(税込)。市役所1階入口近くの市民情報コーナーで販売している。
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