綾瀬市民俗芸能保存協会の会長として市民文化祭に参加している 小宮 量基(かずもと)さん 早川在住 74歳
生涯かけて守る
○…早川の五社神社に伝わる祭り囃子太鼓「かまくら」の文句を口ずさむ。「テンテテスクテン、スッテン、スケテンテン…」。地域の子どもに最初に教えるリズで、50年以上、ここから指導を始めている。10月5日に文化会館で行われる令和元年度市民文化祭、伝統芸能部門で発表を担う綾瀬市民俗芸能保存協会の会長を務め、伝統芸能の保存に日夜奔走する。いわば文化部の「いだてん」ともいえる存在だ。
○…74歳になった今も
電気工として現場に立つ。「頼まれれば行く程度。小遣い稼ぎだよ」と笑いながら、手元にある書類をゴソゴソとあさる。電気の話には気もそぞろで「これが子どもたちに渡してる紙。これは、かまくらで、これが、しちょうめ」そう笑いながらどこか控えめに差し出す。「テンテテ…」などとカタカタが並ぶ紙の束。これが囃子の教材という。
○…終戦直後、1945年9月に早川で生まれた「戦争っ子」。同級生はみんな、ひとくくりにそう言われて育った。中学を出ると電気工の専門学校へ通い始め、同時に芸能プロダクションの門をたたき俳優養成所がある新宿に足しげく通った。子どもの頃から演じることに興味があり「俳優になりたかった」。昨年で終演したものの「目久尻歌舞伎会」での活動も楽しみのひとつだった。
○…地元では「早川はやし連保存会」を率いて35年になる。月3回、2
時間の夜間練習を45年間続け、その時々にやってくる地域の子どもたちと接してきた。「初めのころの子はもう60近くなるんじゃないかな。お囃子は健全育成の場でもある」と自負している。屋敷にある6坪のプレハブ事務所が日中の居場所。「囃子連を絶やさないことが生涯の仕事。まだまだ頑張らないと親から笑われる」という。