人気選手の一挙手一投足が注目された甲子園が終わり、秋季県大会の予選も終了した高校野球。ここでは、夏の大会で珠玉の1勝をあげた寒川高校野球部にあらためて注目する。強豪私学と1回戦敗退が続く県立校では、同じ1勝でも意味が違う。生田東を17対4の6回コールドで下し、10年ぶりに初戦を突破した同校は、既に来夏に向けて走り出している。
まずはゲーム展開から。1回表に11点を先取するという一方的な幕開け。1死から四球と敵失をからめて6連打で一気に攻め立てた。明暗を分けたのは試合が動く前の1死満塁からのショートゴロ。これを相手がエラーしたところから猛攻が始まった。「併殺を取られていたら、逆にこちらがコールドで負けていたかもしれない。それくらい大きなポイントになった」と天野雄司監督。その後、チグハクな攻めで5回までゼロ行進が続く半面、生田東はコツコツと4点を返し、4回裏の時点で安打数が逆転される事態に。展開を憂慮した天野監督は5回裏終了時に選手を集め、『コールド勝利指令』を発令。すると6回表に出塁した走者をバントで送る固い作戦から6点を奪い、見事に試合を完結させた。
10年ぶりの感動
選手にとって悲願の夏の1勝。学校にとっては10年待った久々の1勝だ。校歌が大和スタジアムの空に響きをわたる。応援席では一般の生徒や教員も感動を共有した。校内では『初戦突破』のビラも配られたという。
強豪私立校ではありえない風景。しかし、1回戦敗退が続く県立高校では1勝の価値が違う。「校歌を聞いていて、こんなにいいものなのかと思った。選手が頑張って勝ち取ってくれた」と天野監督の感動も止まらない。
思えば、このチームがスタートした直後の昨秋県大会では、地区予選を3連勝して堂々の本選入り。2回戦でシード校に屈したものの、上々の始動となった。ところが春の大会では一転して地区予選3連敗。湘南地区の壁に跳ね返されたところから再スタートし、天野監督は選手の意識改革やポジションチェンジなどのカンフル剤を注入。今大会16強入りした山北、さらに横浜隼人をあわやというところまで追いつめた柏木学園との練習試合で善戦。徐々にチーム力を上げていった。
大会は2回戦で相洋に敗れたが、天野監督は「自信がないと言っていた選手が自信を持った。一生懸命やって良かったと言う選手も増えた。収穫は大きかった」と話す。監督就任3回目の夏。「毎年3年生が何かを残していってくれる。いつもありがたく思っている。今(夏休み期間中)も練習を手伝いに来てくれてますよ」。次の感動に向けて、さらに成長した姿を見せてくれそうな新チームは、すでに始動。秋季大会予選は厳しい戦いを強いられたが、来夏までには十分すぎる時間が残されている。
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