携帯電話やメールが当たり前となった今、伝書鳩を飼い続ける人たちが寒川にいる。小野島一則さん(大蔵・63歳)は、千キロを超える鳩レースの世界に魅せられた町民の一人だ。コロナ終息後の大会に向け、今日も世話に没頭している。
鳩レースは遠く離れた場所から一斉に鳩を放ち、小屋までの到達スピードを競う競技だ。記者が一見したところ公園の鳩との違いが分からなかったが、小野島さんは「馬で言えばサラブレッドです」と苦笑い。
小学生の頃、伝書鳩を飼っていた父から4羽を譲ってもらい、小屋も作ってもらった。定刻の餌やりや練習など、毎日の世話を欠かさず、遊びたい盛りの青春時代も鳩中心の日々。そのころ出場したレースで一羽の鳩の行方が分からなくなった。伝書鳩は自分で餌を探せないうえに、空にはオオタカなどの猛禽類も狙っている。「増五郎」と名づけたその鳩が帰ってきたのは1ヵ月半後。どこで餌をもらっていたのか、再会の感動は今も忘れられない。今は父が長年かけて育てた血統「洋光系」での上位入賞を目指しており、北海道から飛ばす長距離レース(昨年)で1106羽中34位となった。17時間半をかけ寒川に帰ってきたことになる。数々のレースを通じて切磋琢磨する仲間に恵まれた。県内には競技組織も複数あり、交流も盛ん。昔は鳩レースを題材にした少年マンガもあったほどだが、愛好家の高齢化が著しい。「鳩を預かり、命の大切さや飼う責任を学ばせてもらった」。この醍醐味が伝えられたら――鳩舎の前で遊ぶ孫たちに目を細めた。
寒川版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
桜色に染まる週末4月12日 |
|
<PR>