連載【1】 検証・小田原の課題 Vol.1 財政
今年は市長選の年。現在小田原市が抱える課題について、各候補は自身の考える解決方法を提示してくれるはずだ。そこで本紙では、毎週課題のひとつにテーマを当て、現状や取り組み、これまでの経緯などに焦点を当てる。第1回目は小田原市の財政―
問われる「使い道」と「使い方」
▼現在、平成24年度の予算審議が行われている。昨年の東日本大震災の影響もあり、市税が4年連続で減少、地方交付税11・5億円、新規市債40・5億円に頼らざるを得ない厳しい予算案となっている。
▼右肩上がりだった小田原市の財政規模が大きく落ち込んだのは平成6年度。長引く不況による市税の減少に加え、前年33億円あった競輪事業の繰出金が19億円まで大幅減少したのが主な要因。当初予算が前年マイナスとなったのは36年ぶりのことだった。この年「人件費」に生活保護、医療費助成などの「扶助費」と借金返済のための「公債費」を加えた「義務的経費」は初めて4割を超えた。「必要経費」の色合いが強い「義務的経費」の増加は、予算の弾力性を失わせる。高齢化率の上昇と歩調を合わせるようにその割合は高まり、人口減少がさらに拍車をかける。今年度は56・4%まで膨れ上がった。新年度の当初予算も半分以上が「必要経費」に充てられる。
▼小田原市の「市債」いわゆる借金は、特別会計を含め約1123億円。平成6年をピークに毎年少しずつ返済が進み、9年間で約300億円の返済が完了した。「返す以上に借りない」を守っていければ、市債残高は確実に減少していく。しかし今後は高齢化・人口減少に加え、増税をはじめとする負担増の可能性が高い。税収の大幅増も期待が薄く、ここに大型起債の必要な大規模事業案件が、重くのしかかってくる。果たしてどうするか?
▼平成20・21年度に有識者と公募市民による「行財政改革検討委員会」が行われた。検討委員会は、決して見通しの良くない財政状況の中、健全で持続可能な行財政運営には「市民の参画」が必要と提言。市の事業について、民間委譲、市民意見募集(パブリックコメント)の制度化、外部評価導入など市民の目が入り、結果が反映される仕組みを作ることで、無駄のない予算の「使い道」と「使い方」に変わるはず、としている。これは誰がリーダーで、どんな財政状況でも必要な姿勢といえそうだ。
▼市長選後、新ホールや小田原駅地下街など大型案件は、具体的なステージへと移行する。建設費用の多寡はもちろんだが、その規模やまちづくり・活性化に対する役割、将来の維持管理費(ランニングコスト)など、改めて市民に明確に説明する必要が出てくる。それが市民にとって理解できるものなのか。問われるのは予算の「使い道」とその「使い方」だ。